土木学会誌8号モニター回答
アファール、アビジニアに水を求めて

 学生時代1年間大学を休学してアフリカ諸国を遊学していた頃のことを思い出しました.その年(91年)は大干魃に見舞われ旅行した先々で水の確保が問題になっていました.バスがこなくとも,お金がなくとも魅力的な笑顔を絶やさずに話していた人々が水のこととなると大きな目をうるまして悲しげな顔をするのが心にしみました.当時のエチオピアはまだ内戦中でケニアの北部はスーダン,エチオピア,ソマリアからの難民とゲリラが多く,治安が相当悪い状態でした.
 その当時の情景を思い浮かべると,干魃に加えて内戦で疲弊した国でのご苦労をお察しいたします.土木工学で培ってきた経験を伝え,新たな知恵を吸収する場に挑戦されている方々に拍手を送りたいと思います.
(大阪大学 松村暢彦)

 毎回楽しく読まさせてもらってます。まった日本とく文化の違うエチオピアでの業務ほんとにご苦労だったと思います。私も数年前、ナイジェリアで仕事をしていた時のことを思い出しました。記事の中で苦労した点や現地人との間でのトラブルなど少し載っていましたが、その他にたくさんあったかと思いますので、その点をもう少し掲載すると、色々回りの状況が目に浮かんでくるような気がします。
(千代田化工建設 空間設計2部 野本均)

 昨今、土木業界においても国際的活動の多様化が進んでいる。無償援助、円借款によるODAの拡大に伴い、事業も世界各国に広まっているようだ。地理的要因から国際化と言えば、ともすればアジアにのみ眼が行きがちである。日本から見ると、アフリカ各国とはなじみが薄い印象を受けるが、こういった活動を通じて相互理解が深まればと思う。
(東京大学 糸山豊)

 水は,当然のことながら人間の生命維持に必須なものである。この水を求め,毎日数キロの道のりを往復するエチオピアの人々の姿を想像するとき,中学生のときに福岡市で経験した「断水」を思い出した。このとき水道が使えない地域では,毎日給水車が地域を回って給水していた。エチオピアに比べれば,給水車が家の近くまできてくれるのだから,その大変さは比べ物にならないが,容器に入れた水を家に持ち帰る間に,同級生の親が足を滑らしたことが原因で亡くなったときには,その状況を恨んだ。日ごろ当たり前のように使っていた水が自由に使えなくなくなったとき,水の安定供給の重要さに気づいた。
 水の安定供給は,人々の生活を,経済的にも精神的にも豊かにする。土木事業によって,エチオピアの人々の生活が豊かになったかと考えると,土木に携わる者として,嬉しく思う。
(鹿島建設 新保裕美)

 エチオピアでの給水プロジェクト。一日の多くの時間を生きていくための水くみに費やすという土地の様子が、多くの写真を掲載でたいへん興味深く読みました。工事のなかで技術的なこと以外でもその文化の違いや、工事管理など想像を絶する難しさなのであろう。水を吸って膨張量が100%になるというブラックコットンソイルについても紹介があったが、そのような興味深い技術的な工事内容をもっと見てみたいと思いました。
(大成建設 古池章紀)

    アフリカの特定の国(今回はエチオピア)の水資源事情を読んだのは初めてでした。アフリカ大陸東部の水資源開発というとアスワン・ハイダム程度の知識しかなかったため、飲料水を地下水に依存しているのは意外でした。地形、地質条件の厳しさや施工管理等現地での苦労を垣間みることができ、大変興味深かったです。
(水資源開発公団 大島伸介)

 まずは写真に強く惹きつけられた。雄大な大地や渓谷の風景、水を運ぶための大きなポリ容器を持った女性たち。彼女たちの様子が文中で「生活のための水なのか水のための生活なのかわからないほど、水の確保に1日の時間の多くを費やしている」と表現されているが、満タンにした時の重みだけでも私にとっては想像を絶する世界だ。
 水を渇望する人たち。しかしそのための工事に携わることには不向きな人たち。そのような状況でプロジェクトを進行させる苦労と充実感はどれほどのものか。今まで全く意識に上らなかったエチオピアという国に対して、思わず興味をかき立てられるようなおもしろいリポートだった。
(京都精華大学 角野有香)

 エチオピアの紹介、アファール猿人ルーシーの話も含め、エチオピア北部での給水プロジェクトについてのリポートであり、とても面白く読ませていただいた。最近、日本では公共事業についての風当たりが強く、中海の干拓中止の方針の決定など、公共事業計画の抜本的な見直しが議論されている。そんな中で、運悪く水が出なかったために、水を出すまではリグ(井戸用掘削機)の移動を認めないなどと、住民に取り囲まれるという話は、本当に必要な社会資本を作っていると感じられるエピソードであり、羨ましく思う。
(運輸省港湾技術研究所 森屋陽一)
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