土木学会誌2月号モニター回答

アメリカ合衆国の橋梁維持管理の現状と課題

 80年代の後半から90年代の前半頃、アメリカのインフラストラクチャーが老朽化して、どうにもならなくなるということが言われていたが、その後、アメリカが好景気サイクルに入ったこともあるかもしれないが、ある意味で順調に解決されているという印象をこの記事により受けた。先達の経験を生かして、日本ではよりスムーズに解決してゆけたらと思われる。その中で、アメリカの問題のステージが疲労から腐食に移ったという意見は興味深い。
(新日鐵 冨永知徳)

 橋梁を含めた土木構造物の維持管理は、今後日本にとっても大きな課題である。日本とアメリカの橋梁への取り組みにおいて、大きな違いは二つ考えられる。一つは言わずと知れた高度経済成長時代の産物である標準設計である。あえて極端な表現をすれば、ミニマムコストで誰にでも同じ構造物が設計できる。その結果、日本全国金太郎アメ的な土木構造物がつくられ、独創性や地域性の反映、設計者のこだわり、そういったものが失われてしまい、必然的に地域住民にとってもつくり手にとっても愛着の持てない、貴重な財産と感じられない構造物となってしまったのだろう。記事にあるブルックリン橋を私が訪れた時、橋上でファッション紙の撮影会を行っていた。流行の最先端を走るファッション紙が撮影現場として選ぶほど、ブルックリン橋は美しく存在感がある構造物なのである。
 二つ目は、今日まで地震以外で大きな土木構造物の破壊事故が起こらなかったことである(トンネル以外)。これは国内ではまだまだ若い土木構造物が多いから、維持管理の必要性の認識が低いのではないか。
 この二つの違いを踏まえて、アメリカを振り返った時に、スクラップアンドビルド思想の先端を走るアメリカが、実は文化資源に対してはそうではなく、非常に愛着心を持っていることに気づく。橋梁の維持管理・マネジメントシステムを日本に導入すると平行に、土木構造物の文化的価値を高める努力を行っていかなければ、本当の意味での維持管理思想は成育しないのではないか。土木技術者は今後、技術論と共にもっと率先して文化論を語るべきである。稚拙な表現ではあるが、“綺麗だ”とか“カッコイイ”等と人々が思える構造物を創り出すことが構造物への愛着心を高める第一歩だと考える。
((株)大林組 後藤嘉夫)

 「公認点検員資格」は、非常に有効であり、日本においてもそのような制度をつくるべきであると思う。というのも、資格をもった人間による土木建築構造物の点検・診断と、その結果に対する的確な判断が、人々に対してある種の安心感・信用を与えるのは事実だからである。
 日本の土木建築構造物に対する世間の不信感をつのらせている一つの要因には、そのような資格が整備されていないことが挙げられるのではないか?現在の日本では、例えばコンクリート構造物の点検・診断については各企業、個人によってそのやり方は千差万別であり、その点検・診断結果に対する判断も個人の主観に頼っていることが多いと思う。点検・診断方法については、多種多様で良いと思うが、診断結果に対する判断は、資格を持った人間が責任をもってする制度をつくるべきである。
(大成建設 松葉保孝)

←戻る