土木学会誌2月号モニター回答

社会基盤の長寿命化に向けた維持管理技術の動向

 トンネルや橋梁のコンクリート剥落などコンクリート構造物の劣化と維持管理の問題がクローズアップされている時であり、タイムリーな特集として興味深く拝見した。
 膨大な土木構造物を抱えるようになった今、まさに維持管理技術の確立は重要な課題であることは土木技術者は皆認識していることであろう。これに加え必要となってくるのはまさに文中に述べられている「インフォームドコンセント」であると感じた。既に公共事業のアカウンタビリティ(説明責任)向上として様々な取り組みが始められていると思うが、これから必要となる莫大な維持管理費と一時的なサービス停止又はサービスダウンの理解を得る努力を始めなければならないであろう。
 また、初期投資と維持管理コストによるライフサイクルコストを考慮する考えはすでに定着したものとなっているが、補修補強工事等によるサービス停止やレベル低下による社会的経済的影響度、その復旧やグレードアップに対する便益評価をライフサイクルコストに取り込むという考えは、事業評価に費用対効果分析が取り入れられつつある現在、非常に興味ある観点である。健全度評価の技術確立、橋のインテリジェント化等も含め今後の研究に期待したい。
(日本道路公団 大築正明)

 興味をかねがね持っている問題であり、大変参考になりました。30年で掛け替える橋がそれが寿命というものではない、それは初期トラブルと見るべきであると、いう意見は傾聴に値すると思いました。
(新日鐵  冨永知徳)

 私の尊敬する先生の言葉で、「土木技術者は、コンクリートの医者である必要がある。」ということばを思い出す。(言葉が、一字一句正確ではないが、そんな内容であったと思う。)いまだにこの言葉の意味が、私にはわからない部分が多い。しかしながら、今回の記事を読んでいて、なんとなくわかったような気がする部分があった。
 それは、「構造物が現在どの程度健全であるかの評価法は、確立されているようで、実はされていないのが現状であり、設計で用いた手法を用いても、正しいようで正しくない。」と、書かれている部分である。私が個人的に抱いている、現在の示方書を満たせばとりあえず安全性を満たした設計することができることや、現在もてはやされているISOなどにおける設計手順を重視する方向が、すべてではないことを指摘しているように感じた。
 今回、構造物がいまどういう状態であるのか知る技術、構造物のインフォームドコンセント、維持管理点検部門の技術者の養成など、イメージ的に地味(個人的には非常に魅力のある仕事であると思うが)な部分に焦点を当て、考える機会を与えられた。やはりこれからは、構造物が現在持っている性能を見極め、それに応じて多様な手段から最も適切と思われる方法を選択すること が土木技術者に求められるように思う。
 土木技術者は、Civilの技術者である。Civilとは何なのだろうかを、まだまだ未熟な私は常に考えていく必要があり、先生の言葉はこのことを促していた。将来にむけて、これまでまったく考えていなかった社会基盤の長寿命化と、維持管理技術が、より一層大切であると感じた。
(鳥取大学 里田晴穂)

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