土木学会誌1月号モニター回答

次世代の設計技術

 次世代の設計技術と聞いて、私はより精度の高い計算を行なうことが可能になりつつあるので、安全の余裕を確保しつつ、よりスリムな無駄のない設計技術が求められているものだと思っていた。 しかしながら、特別公演で紹介された技術は、想像をはるかに越えるものであった。コンクリート打設後の時間的変化の様子をすべて予測するといった、すべてを想定する技術が、すでに構築されようとしていることに、驚かされた。現在の技術では、(NATMのように)刻々と変化する状況を予測し、予測と実測とを比較修正をして要求性能を満たすための対策を考えることがベストだと思っていたが、技術は確実に次の段階へと進んでいる。現在のISOなどの国際標準の設計技術では、まだまだ設計技術者がより良いものを安く造るための状況を充分に提供できていない。限界状態を設定し、信頼性設計の概念を、係数の部分で取り込んでいるに過ぎない。
現在、世界中に、ISOなどの国際標準では、良いものを作るためには、良い方法が大切であり、良い方法で作られたものは、当然良いものに違いないとする考えが、広がっている。でも、このままでは、技術者は良いものを造るための手段を模索することを、忘れてしまう。私は、これからの時代は、性能照査型という武器を持った土木技術者の時代であると思う。性能照査型の基準が完成されれば、土木技術者として、最も重要とされる項目は、良いものとはなにか、安いとはどういうことなのかという、機能、費用、その他様々な要因に関する要求性能をきちんと認識することとなるであろう。そのためには、何が世のため人のためになるのか、土木倫理観を強く持っている人たちの育成が不可欠であろう。
(鳥取大学 里田晴穂)

 「安くて良いものを造る」ための技術が正当に評価されることを目的とした性能照査型の設計基準に対する、土木学会の取り組みが良く理解できました。中でも、コンクリート分野における、任意の環境作用下においてのコンクリートの形成から劣化までを追跡する数値解析技術の開発は興味深く感じました。
((株)熊谷組 坂部光彦)

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