土木学会誌12月号モニター回答

「世界最速で路線」をはかる

 線路の狂いを管理することは、鉄道を安全に走らせる上で非常に重要です。その管理を時速210km/hという高速で行うことができる、というのが、まず驚きでした。記事の中には難しい部分もありましたが、この技術が図も含めて丁寧に解説されており、全体的にわかりやすく、興味深い記事だったと思います。
 私は現在、整備新幹線建設の業務に従事していますが、色々な場面で、維持管理も含めたトータルコストの視点でものをつくる事が必要だ、と耳にします。「メンテナンスフリー」という言葉も聞きますが、現実に全くメンテナンスを必要としないことはあり得ないと感じます。一方で、最近のコンクリート剥離問題を見ても、維持管理技術の確立が社会的な要請となっていることがわかります。これらの事を考えれば、今後は建設に従事する技術者も、維持管理に関わる技術の習得は必要不可欠なのかもしれません。
(日本鉄道建設公団 岡田良平)

 同じ鉄道員として興味深く拝読させていただいた。鉄道(特に高速鉄道)においては線路(軌道)の整備状態は列車の乗り心地はもとより運転の安全に直結する重要な要素であり、その適切な管理のためにいついかなる時も努力を怠ることができないものである。このため、定期的な軌道検測は欠かすことができない。
 旧来からの検測作業は、主に保線区員が線路を巡回して測定具を当てて計測するというものであった。最近は本稿のドクターイエローなどに代表される検測車輌の整備が進みある程度の自動化は進んでいるが、現代に至っても、鉄道において最も危険である線路内作業はまだ多く残っている。
 その一方で、少子化の進行やいわゆる3K職場を敬遠する動きからこれらの作業に従事する人員は確保が日増しに難しくなり、また高齢化が進んでいる。このため、これまでのベテラン職員からの技術継承が充分に行われなくなる可能性も否定できず、安全性・効率性の観点からも自動計測技術の開発を強力に推し進める必要がある。
 そして、鉄道会社にとって列車は商品であり、その商品価値を落とす(=営業列車に影響を与える)ことは極力避けたいものである。本稿で出てくる新型ドクターイエローもその一環であると考えられ、「のぞみ」号の邪魔にならない検測車輌をめざし、同じ270km/hという最高速度での検測をめざしているのであろう。
 新幹線の最高速度で確立された検測技術は当然在来線への転用が期待される。日本では在来線は新幹線よりも大幅に長い路線を持ち、設備も新幹線に比べれば貧弱である。結果としてその保守に従事する人員が非常に多くなるわけであるが、前述のように高齢化や人材難に困惑している。従来型の検測・整備体制では根本的な改善は困難であるように見受けられ、ますます新技術の確立による体制変革が必要とされている。
 新しい検測技術の確立により、より安全で効率的な検測体制を整備し、安全かつ快適な鉄道旅行が提供されるよう、切に願うものである。
(東日本旅客鉄道梶@太田正彦)

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