土木学会誌11月号モニター回答

技術最前線
天然骨材を全く使用しないコンクリート


 限りある資源を有効利用しようというリサイクルの考え方は,現在,土木分野のみなら ず,ありとあらゆる分野で検討されている事項であると思う.本記事は,フライアッシュ と製鋼スラグを細骨材として用いたFSコンクリートについての解説であった.このFS コンクリートは,天然材料を使用しないため自然環境へ与える影響が少なく,産業副産物 の再利用の観点からも有用性が高いということである.こういったリサイクルのような環 境への配慮を念頭に置いた技術開発は,これから先,ますます必然的なものとなっていく と推測されるが,経済性といかに折り合いをつけていくかが課題となるのではないかと考 える.今後のさらなる技術開発の成果を期待したい.
(運輸省港湾技術研究所 米山治男)


 地球環境問題に対する社会の関心の高まりや当社が技術開発により取組んでいることから、非常に興味を持って読みました。今後も環境問題にかかわらず、様々な技術を取り上げて頂きたいと思います。
(大林組 上垣義明)


 産業廃棄物の減容化・有効利用は、環境問題において建設部門が取り組むべき重要な課題である。記事で紹介があった製鋼スラグや石炭灰も典型的な産業副産物(「産業廃棄物」という言葉自体も適切でない)であるが、見方を変えれば、再利用可能で貴重な産業資源であると認識すべきである。副産物の性質を把握し、その特性に見合った活用方法を精力的に開発していくことが今後の課題である。建設副産物としては、建設発生土・建設汚泥・アスファルト塊・コンクリート塊などがあり、各建設現場においてできる限り再利用率を高めていくよう工夫を続けていくことにより、副産物の再利用が定着・高度化していくことと思う。
(中部電力 仲村治朗)


 土木技術は、新しいコンクリート材料の開発とともに発展してきたと言ってもよいのではないでしょうか。建設のニーズに呼応して、超早強、低発熱、高強度など様々なコンクリートが開発され、多くのプロジェクトが可能になってきたものと思います。私自身、高流動コンクリートを初めて打設したときは、それまでコンクリートに抱いていたイメージがガラリと変わるのを感じました。人が締固めることが不可能な過密鉄筋の中に、まるで生き物のように入り込んでいくコンクリートは、もはやコンクリートではないとまで思いました。
 環境の時代、リサイクルの時代といわれる現在、天然骨材を全く使用しないコンクリートを開発することは、今後の土木に大きく影響を与えることと思います。一般構造物への適用を期待します。
(鹿島建設 高村 尚)


 天然骨材を全く使用せず産業廃棄物を積極的に利用しようとしていることに大変共感を持ちました。原石の採取には、多少なりとも土地改変が余儀なくされますが、全て産業廃棄物でまかなうことができれば、環境保全の面から見ても素晴らしい技術開発だと思います。
 FSコンクリートの概要では、フライアッシュを用いて如何に膨張を抑えるかが重要な課題としてあげられていましたが、あまり強度を必要としない人工的な地山や充填材などへの利用も考えてみてはどうかと思いました。
(清水建設 藤野 晃)


 リサイクル資源を利用したコンクリートの場合の多くは製品の安定供給が問題となる。その多くはリサイクルされる物質の性状が、均一でないため、均一な骨材を利用する場合に比べその管理が難しいからである。また、リサイクルされる物質の生産量が少ない場合も量的な面で安定供給を困難にする。そういった面に対しては、非常によく書かれていた。
 しかし、土木分野でのコストダウンが叫ばれている現状では、経済性の見込めない新製品・新技術の採用は困難であるのだから、副産物(フライアッシュ)の処理費等も考慮して、その点についてもう少し述べて欲しかった。
(鉄道建設公団  倉川哲志)


 「再生資源の利用の促進に関する法律(リサイクル法)」、「建設副産物適正処理推進要綱」等が制定されているように、建設副産物の発生抑制を進めるとともに、他産業のリサイクル製品を建設産業で利用することで省資源・資源循環型社会の構築の先導的役割も果たすものと感ずる。
 ただ、奇しくも西日本JRのコンクリート剥離落下問題を頭に浮かべてしまうのが辛いところである。一部コメントもされていたが、現段階では、さして事故につながらない海洋関係の無筋コンクリートに限られているというのは何とも皮肉にも聞こえる。本来では、よく考えられ慎重に研究が進められていると印象を持つはずなのに・・・・・・。
 「これからの課題としては・・・」に述べられている通り、剥離落下事故を教訓に研究を重ねることはもちろんのこと、モデル工事の実施、事後調査・開発結果の公表を迅速にされることを望んでやまない。
(アジア航測株式会社 野手幸洋)


 FSコンクリートに関する記事でしたが、興味深く読ませていただいた。リサイクルが効果的に行われている分野と思います。品質の向上、経済性の確保が、今後の研究開発の方向のように感じました。ぜひ、耐久性(耐用年数)、環境への影響、次のリサイクル化などについても検討が必要ではないかと思います(もう実施されているのかもしれません。またぜひ経過の報告を期待します)。
(建設省土木研究所基礎研究室 西谷雅弘)


 これまでコンクリートにはフライアッシュや高炉スラグ等のごく限られたものが再生資源として活用されてきたが、あくまでも“混和材”としての位置づけであることが多く、骨材として用いられることは多くなかったように見受けられる。これは、軽量骨材に見られるように再生骨材が天然骨材に対して品質に劣る傾向があったためと考えられるが、将来的には良質な骨材資源が枯渇する可能性が高いため、再生資源を活用したコンクリートの開発は急務である。
 その点製鋼スラグとフライアッシュを組み合わせて再生骨材としたFSコンクリートは天然骨材の使用が皆無であるということであり、産業廃棄物処理と環境対策の両面から画期的なコンクリートであるといえる。すなわち、“混和材”から“骨材”に位置づけられたことによりその使用量は著しく増大する。これによって、この量に相当する廃棄物処分(埋立)と天然骨材採掘の双方が不要になるのである。
 ただ、フライアッシュや製鋼スラグは発生源や発生時期により、その性状が異なるのが普通であるため、入荷ロット毎に品質試験を行って配合を修正する必要が避けられない。この点を忌み嫌う向きもあるだろうが、環境対策に必要なコストとして割り切って行きたい。
 フライアッシュや製鋼スラグは従来セメント混和材として用いられていたように、ポゾランとして潜在自硬性を持っている。FSコンクリートでは“骨材”としてのみの位置づけであるようだが、強度面での評価が可能でになればセメント量の削減も可能であろう。これは発熱量の低減に直結し、温度ひび割れ対策としてもその普及促進が期待できる。特に発熱対策の重要なマスコンクリートへの適用が期待できるのではないだろうか。
(東日本旅客鉄道梶@太田正彦)

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