土木学会海洋開発委員会 本文へジャンプ


特別セッション(1) 海洋エネルギーの現状と課題

オーガナイザー: 経塚雄策(九州大学)
コーデネーター:木村克俊(室蘭工業大学),関本恒浩(五洋建設),森屋陽一(沿岸センター),大塚夏彦(北日本港湾コンサルタント),水谷法美(名古屋大学)

 海洋基本法が制定され,海洋基本計画が閣議決定されました.その中でも海洋エネルギーは一つの重要な位置づけがされています.環境問題への高い関心や原油価格の高騰などの社会的背景から自然エネルギーへの関心は高く,海洋エネルギーの実用化への期待は大きくなっています.そこで,今回の特別セッションでは,海洋エネルギーに着目し,その現状と課題,将来展望などについて議論したいと考えています.
 第1回目の本年度は,以下の課題について報告を頂いた後,今後の有効利用に向けて総合討議を行う予定です.

@洋上風況の観測結果と洋上風力発電システムの研究開発状況について

報告者:福本幸成(東京電力株式会社)

 洋上の風は陸上より強く乱れも小さいなど風力発電にとっては好条件とされています.本報告では,風況観測結果や,欧州で実用化されている着底式洋上風力発電と,日本沿岸の大水深でも適用可能な浮体式洋上風力発電の技術的な成立性を確認した結果を述べ,日本における今後の洋上風力発電の開発の展望について考察します.

A波エネルギー利用への再挑戦

報告者:高橋重雄((独法)港湾空港技術研究所)

 波エネルギーの利用に関する本格的な研究開発を再開する場合の資料とするために,これまでの研究開発を見直し,特に,実用化に至らなかった問題点を明らかにすることを目的に,これまでの我が国を中心とした研究を振り返り,実用化に向けて問題点を検討し,さらに最近の新しい動きについて概観します.

B生月大橋の橋脚を利用した潮流発電について

報告者:経塚雄策(九州大学)

 潮汐は規則的で将来にわたって予測可能であることなど他の自然エネルギーに比べて利点が多いとされています.この潮流を利用した潮流発電に関する国内外の研究の現状をまず紹介し,次に2004 年から長崎県平戸市の生月大橋の橋脚を利用した潮流発電の研究を紹介します.最後に,今後の課題について示します.

C新しい海洋温度差発電の現状と展望 −持続可能なエネルギーと水資源を目指して−

報告者:池上康之(佐賀大学)

 海洋の表層と深層の温度差を利用して発電する海洋温度差発電は、原理的に火力・原子力と比較して利用できる温度差が小さいが、ポテンシャルの大きな海洋エネルギーの一つとして注目されています。特に、海水淡水化、漁場造成、海洋資源回収、水素製造などとの複合利用が期待されています。近年、アンモニア/水を作動流体として用いて高性能化を目指す新しいサイクルについても理論的実験的研究が行われています。そこで、海洋温度差発電の現状と展望について,佐賀大学の30kW発電システムの最新の研究成果を含めて概説します.
(口頭発表)

D漁業協調型 Offshore Wind Farm の実現に向けて

報告者:中原裕幸・塩原泰((社)海洋産業研究会)

 わが国で大規模な洋上ウインドファームが実現していない要因のひとつとして,海面の利用に関する漁業関係者との調整の困難さがあげられます.しかし,洋上風車の基礎構造物は魚礁や魚介類の蓄養所など漁業施設としての活用が可能です.このような活用方法を提案しつつ,構想段階から漁業者を組み込こんでいくことが早期実現の鍵に
なると考えられます.ここでは,海洋産業研究会が取り組んでいる漁業協調型Offshore Wind Farm事業について,紹介するとともに,今後の展望や課題について議論します.
(口頭発表)


特別セッション(2) 大水深海域の水産利用

オーガナイザー: 明田定満(水産工学研究センター)
コーデネーター: 木村克俊(室蘭工大)・五明美智男(東亜建設工業)

 我が国水産業を取り巻く環境は,たいへん厳しい状況にあります.水産基本計画(平成19年3月)では,「低位水準にとどまっている水産資源の回復・管理の推進」を図るため,「我が国の排他的経済水域における資源管理」を重点施策に位置付けています.国土面積の約12倍に相当する約450万km2に及ぶ排他的経済水域においては,水産資源の回復,水産資源の管理が強く要請されています.
 昨年度(平成19年度)長崎で開催された本シンポジウムの特別セッションでは,沖合大水深海域における漁場造成の現状を分析するとともに,具体的な取組として「人工マウンド礁」にスポットを当て,その現状と課題について議論しました.
 今年度は,以下の特別講演3題で構成し,その後沖合大水深域での漁場造成に必要となる技術開発について総合討論を行うことを予定しています.

@陸棚域の漁場造成における技術の現状と課題

報告者:中山哲嚴(独立行政法人水産総合研究センター)

 陸棚域(沖合大水深域)の漁場造成には,陸棚域の流況や生物分布等の各種環境情報の定期的長期的広域的な取得が重要であること,陸棚域は水産基盤整備が対応してきた概ね100m以浅の海域とは全く異なる場であることから,陸棚域の漁場造成や環境把握に必要な技術開発の必要性について話題提供する.

Aズワイガニ保護礁の機能と効果

報告者:伊藤靖(財団法人漁港漁場漁村技術研究所)

 日本海西部海域におけるズワイガニ資源は,漁期や漁獲サイズの制限,漁期前後の混獲抑制措置(底曳漁業の規制)といった漁獲管理とともに,稚ガニの保護を目的とした保護育成礁が設置され,良好な資源回復効果が確認されている.
 保護礁設置が直轄事業として新たな展開を迎えるのを機に、昭和60年代以降,石川県,福井県,兵庫県,鳥取県において実施された既往の保護礁設置事業を紹介し,その機能や効果について話題提供する.

Bマウンド礁の機能と効果

報告者:渡邊浩二(社団法人水産土木建設技術センター)

 新たな沖合大水深域の漁場造成手法として期待されているマウンド礁については,昨年度,吉塚靖浩氏(長崎県)より,現地におけるマウンド礁の造成の手順に沿って留意点の報告があった.次いで,間木道政氏(地球環境産業技術研究機構)より,地球温暖化が危惧される近未来において地球環境に優しい構造物として期待されている湧昇マウンド礁の二酸化炭素吸収量の評価法について報告があった.
 今年度は湧昇効果の確認のために実施したモニタリング調査結果を踏まえて,鉛直混合の促進,有光層への栄養塩類の増大,蝟集効果等,湧昇マウンド礁の基本的機能と効果について報告する.