私が専門としている河川の分野では，ここ数年の間に大きな技術・思想の変化があった．1990年に始まる多自然型川づくりの流れを汲んでいるので，その潮流はもう20年前から始まっているのであるが，やっと技術化がなされたといってよい．従来の河川技術と大きく異なるのは，水をゆっくり流すこと，川の営みによって河道の微地形が変化することを前提としていること，生物も主役であること，環境改変の最小化に努めることなどである．

このような技術思想の変化は当然，最終的な土木構造物の姿にも大きな影響を与える．ゆっくり流すためには川を浅くしないといけないし，形態の変化を許容するためには川岸を固めてはいけない．生き物が住むためには人間が侵入できない空間も必要である．このように技術思想の変化は，景観に根本的な影響を与える．それと同時に，その技術にかかわっている人たちの美意識にも影響を及ぼすように思う．四季によって移り変わり，自然の営みによって変化し，たくさんの生き物が暮らす風景を美しいと思うようになってくる．

地球環境問題が現実の問題として迫っており，わが国土も自然との共生を目指して再生・改造していくことになろう．その時にどのような美意識を私たちは持てばよいのだろうか．果たして普遍の価値観が存在するのだろうか？

デザイン賞は作品に貢献した人物や組織に賞を授与するものであるが，審査の対象は応募された作品であり，応募される作品とそれを評価する審査員のなかに時代性が反映されていく．選考するという過程のなかで，普遍性と時代性が交錯しながら選考されていく．デザイン賞が設立されて9年，受賞作品も変化してきているように思う．特に近年，市民を含んだ幅広い参加のプロセスも重要な評価対象となってきている．

本賞の特色
　本賞は，公募対象を公共的な空間や構造物に広く求めるとともに，新たに創出された空間・構造物はもとより，計画・制度の活用や組織等の活動などに創意工夫がなされたことで景観の創造や保全が実現した作品も含まれます。特に，作品自体を表彰するというよりも，当該作品に貢献した人物・組織（本賞では「主な関係者」と称する）に対し賞を授与するものです。したがって，褒賞の対象者は，建設部門に属する方に限定せず，計画・制度の立案者をはじめ，積極的に貢献した行政担当者，NPOやNGO等の団体組織などさまざまです。

審査要件
　竣工後2年以上経過（今回は2007年6月30日以前に竣工）していること。

デザイン賞選考小委員会の構成と審査の流れ
　委員長：島谷幸宏（九州大学）
　委員：猪熊康夫（中日本高速道路），桑子敏雄（東京工業大学），小出和郎（都市環境研究所），
　　　　田中一雄（GKデザイン機構），宮城俊作（奈良女子大学），吉村伸一（吉村伸一流域計画室）
選考にあたっては，以上7名の選考委員で組織された「デザイン賞選考小委員会」が，規定審査，書類審査，現地審査，最終審査の流れで実施します。
　選考委員の紹介と選考のポイントはこちらをご覧ください。

応募手続きとスケジュール
　応募手続に必要な募集要項、応募書類書式、応募方法、選考方法などの詳細は、景観・デザイン委員会のWEBサイト（http://www.jsce.or.jp/committee/lsd/）をご参照ください。
◆全体の流れ
1)一般からの推薦作品募集
2)エントリー（期間：2009年5月1日〜6月10日）
3)応募書類送付（受付期間2009年6月1日〜29日／消印有効）
　「主な関係者」の選定や事業者・設計者・施工者等の関係者間の調整に多くの時間を要するので、早めの調整を薦めます（調整未了で応募断念の例もある）。
4)選考の実施（期間：2009年7月〜2009年9月）
5)選考結果公表：2009年11月中旬に本サイトにて公開予定。
6)授賞式：2010年1月下旬開催予定。

主催
主催：土木学会景観・デザイン委員会

● 2009年度デザイン賞選考小委員会事務局・運営幹事会
主査：二井昭佳（国士舘大）／幹事：池田大樹（大日本コンサルタント）、真田純子（徳島大学）、出村嘉史（京都大学）、星野裕司（熊本大学）、山田謙弌（大林組）、横山公一（日本大学）