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※このページの内容は土木学会誌2007年7月号に掲載されたものを一部修正したものです。執筆者の肩書きは執筆時のものです。
デザイン賞選考小委員会委員長 天野光一


 様々な分野での「賞」はその分野の発展や質の向上に大きな役割を占めている。例えば文学の分野では、新人を対象とした賞からベテランまでも含めた賞まで様々な賞があり、良い作品を仕上げれば何らかの賞を受賞できる可能性がある。受賞し社会的に褒められればうれしいことは間違いなく、受賞を目指して切磋琢磨するという行動も生じる。建築の分野も同様様々な賞が建築分野の発展に寄与していることは間違いない。いずれも受賞作品がどのようなものであるかはその分野のその時代の方向性を指しており、受賞作品について選者などが述べる受賞理由などがその評価を概説しているといってよい。しかしながら、小生はこの二つの分野に若干の差があるような気がする。文学の分野では賞とかかわりなく様々な形で批評が行なわれていると感じる。むろんその世界で重鎮といわれる人の作品にも十分な批評ができているかどうか危ぶむところもあるが、質の低い作品に対してはそれなりの批評が与えられることが多いといって良いと思う。作品についての批評が文学を育てるための重要な要因であるといわれている。それに比べると建築の世界では批評はあるものの比較的プラス評価の場合のみ取り上げられているのではないだろうか。

 土木デザインの分野は建築の分野に近い。あえていえば、作品の批評という観点ではまだまだ建築の分野に及んでいないといってよい。賞以外の部分での土木デザイン作品の批評が十分になされることを望みたい。このような意図もあって、昨年度から受賞に至らなかったすべての応募作品に対して、以前は要求があった場合のみにお知らせしていた選外理由を通知させていただくこととした。選外になった作品も惜しいものもあり、その作品の改善または新たなデザインの際に参考にしていただければと考えている。土木デザインの分野でこのようにすべきことはまだまだあるが、だからといって土木デザイン賞の意義が下がるわけではない。例としてあげた、文学、建築の分野と同様授賞とその授賞理由の開示は土木デザインのある程度の方向性を示すことができていると考えている。授賞理由については本サイトの「ギャラリー」から参照できる。また過去の受賞作品については土木学会誌での紹介の連載を始めている。ただし、総評については作品選集を手に入れていただかないと参照できない。2006年の選考にあたって小生が選外作品について総評で述べているのでここに要約して引用しておきたい。極めて風景を重視したある作品では、風景として眺めたときの評価は低いものではなかったが、細部の意匠的な配慮が「きず」としてかえって評価を下げた。また、景観配慮上の定石をきちんと守ったような作品もあったが、その努力は十分に賞賛されてしかるべきであるが、「デザイン賞」ではないという結論に至った。また、今回デザイン時の責任ではなくその後の補修で落選した作品があった。補修時に景観的な配慮がなかったゆえに、設計としては十分に優秀ではあるものの、現実に目にできる景観として「きず」が大きすぎたのである。

 前述したように設計者が十分に配慮したとしても思わぬところで選外になってしまうこともある。選外になれば悔しいし、それが故応募に躊躇されることもあるかと思う。しかし、様々な分野(過去の受賞作品をみてもいわゆる土木にこだわらないものも受賞している)から、より多くの応募があればそれだけ賞の価値も上がると考える。読者諸兄もご自身の応募、推薦に留まらず周辺の方々へ是非声をかけて頂きたい。様々な分野からの、多数の応募を期待しています。

 

デザイン賞選考小委員会事務局

本賞は,「土木学会景観・デザイン委員会デザイン賞(略称:土木学会デザイン賞)」として2001 年度に創設され,これまでに,64 作品を表彰しています。

本賞の特色
 本賞は,公募対象を公共的な空間や構造物に広く求めるとともに,新たに創出された空間・構造物はもとより,計画・制度の活用や組織等の活動などに創意工夫がなされたことで景観の創造や保全が実現した作品も含まれます。特に,作品自体を表彰するというよりも,当該作品に貢献した人物・組織(本賞では「主な関係者」と称する)に対し賞を授与するものです。したがって,褒賞の対象者は,建設部門に属する方に限定せず,計画・制度の立案者をはじめ,積極的に貢献した行政担当者,NPOやNGO等の団体組織などさまざまです。

審査要件
 竣工後2年以上経過(今回は2005年7月31日以前に竣工)していること。

デザイン賞選考小委員会の構成と審査の流れ
 委員長:天野光一(日本大学)
 委員:江川直樹(関西大学),小野寺康(小野寺康都市設計事務所),佐々木政雄(アトリエ74),
    島谷幸宏(九州大学),田中一雄(GK設計),西川和廣(国土技術政策総合研究所)
選考にあたっては,以上7名の選考委員で組織された「デザイン賞選考小委員会」が,規定審査,書類審査,現地審査,最終審査の流れで実施します。
 選考委員の紹介と選考のポイントはこちらをご覧ください。

応募手続きとスケジュール
 応募手続に必要な募集要項、応募書類書式、応募方法、選考方法などの詳細は、景観・デザイン委員会のWEBサイト(http://www.jsce.or.jp/committee/lsd/prize/)をご参照ください。
◆全体の流れ
1)一般からの推薦作品募集
2)エントリー(期間:2007年7月1日〜7月31日8月10日<延長しました>)
3)応募書類送付(受付期間2007年8月1日〜24日/消印有効)
 「主な関係者」の選定や事業者・設計者・施工者等の関係者間の調整に多くの時間を要するので、早めの調整を薦めます(調整未了で応募断念の例もある)。
4)選考の実施(期間:2007年9月〜2007年12月)
5)選考結果公表:2008年1月中旬に本サイトにて公開予定。
6)授賞式:2008年4月下旬開催予定。

主催・協賛
主催:土木学会景観・デザイン委員会


協賛:(財)国土技術研究センター
   (財)都市づくりパブリックデザインセンター
   (財)リバーフロント整備センター
   (財)道路環境研究所
   (財)港湾空間高度化環境研究センター

   (社)日本土木工業協会
   (社)建設コンサルタンツ協会
   (社)日本橋梁建設協会
   (社)プレストレスト・コンクリート建設業協会

本賞に関する問い合わせ先
 
デザイン賞選考小委員会事務局

● 2007年度デザイン賞選考小委員会事務局・運営幹事会
主査:星野裕司(熊本大学)/幹事:岡田智秀(日本大学)、岸上明子(日本大学)、中村泰広((株)鹿島)、二井昭佳(国士舘大)、八馬 智(千葉大学)、福井恒明(国土技術政策総合研究所)、山田謙弌(八千代エンジニヤリング(株))

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