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※このページの内容は土木学会誌2006年8月号に掲載されたものを一部修正したものです。執筆者の肩書きは執筆時のものです。
デザイン賞選考小委員会委員長 天野光一


 景観・デザイン委員会主催のデザイン賞も2005年を持って丸5年が経過した。この5年で、最優秀賞15件、優秀賞39件、特別賞2件の計56件のデザインに賞を授与してきた。まだそれほど多い数ともいえないが、デザイン賞が徐々に定着しつつあることを感じる。デザイン賞の授賞式、その後の懇親会でも、賞を受賞した作品に関わる議論を超えて、土木デザインに関わる活発な議論が行われるようになってきている。
 さて、デザイン賞の意味を小生なりに考えると、第一はいうまでもなく優れた土木デザインを景観・デザイン委員会として顕彰することである。第二は、その以前の段階ともいえるが、賞を存続させることによって土木構造物や公共空間などが“デザイン”の対象であることを強調することであろう。第三は、その土木デザインを達成させた人々を顕彰し、その労をたたえることであると考える。土木の世界ではデザインに真摯に関わった人々が、名誉的にも、金銭的にも報われない場合がある。やはり、人間は何らかの見返りがあったほうがうれしい、例え金銭的な部分に結びつかずとも表彰することによって、その本人にとってもその表彰を見た他の人にとっても、デザイン賞の存在は“やる気”の醸成に一役買うことができると考えている。第四は、デザイン賞の授賞を通して、デザイン賞選考小委員会の考える“土木デザイン”のあり方を世に問うということであろう。もちろん応募作品の内容にもより、また選考委員の考えもあるが、デザイン賞の受賞作品をみる人々は、その受賞作品群から“土木デザイン”の方向性を感じずにはいられない。第一点はあまりに基本であるから除くとして、第二点、第三点は、デザイン賞を継続させることによってじゅうぶん満足させうる意味であろう。第四点についても、受賞作品を眺めると小生の見るところわずか5年で若干の変化があったように思う。当初の3年間は、受賞作品の概ね半数が橋梁関係のデザイン作品であった。誤解を恐れずにいえば、比較的“もの”のデザインとして分かりやすいものの受賞が多かったように思う。しかしここ2年間は、住民参加による公園等の空間作りや、“もの”によらない風景づくりの土木デザインの受賞が目立つようになった。受賞しやすそうなデザイン作品から、デザイン賞創設に当たっての、「朝夕接して飽きることなく、いつしか人々の血肉となる渋いデザインこそ至高のデザイン」という中村良夫氏の言葉や、「丁寧に心を込めて、むしろひっそりと在る作品」という篠原修氏の言葉にあった受賞作品が増加し始めているといってよかろう。
 さて、土木デザインとは何かということについて、先輩諸氏の失笑を恐れずに小生なりの考えを述べてみよう。デザインは、広辞苑によれば、「生活に必要な製品を製作するに当たり、その材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画」とある。“もの”を対象にした行為であること、ある制約条件はあるものの“デザイナー”の思うままに行われる行為であることが前提になっているように思われる。我々が目指す土木デザインにおいても、ある場合(特徴的な橋梁など)では、共通点もあるが、多くの場合異なる。土木デザインは、中村、篠原両氏の言葉の意味するところも同様であると考えるが、まさに風景を創造することであり、単なる“もの”のデザインではない。例え設計対象が具体的土木構造物であっても、周辺の景観が存在し、そこに挿入される土木構造物が存在し、それらを総合した風景こそが土木デザインの対象であり、風景デザインこそが土木デザインであると考えている。そのように丁寧につくりあげられた風景こそがデザインに関わった人々を含めた我々にとっての後世にも残しうる財産であり、そのような風景は、消費してもその価値が現ずることのない耐久財であると考えられる。その耐久財の増加に向けて、デザイン賞も貢献すべきであると考えている。
 このように考えると、様々な分野から多数の応募があってこそ、デザイン賞の十分の効果が得られると考える。そのため、今年度からいくつかの改革を行う予定である。第一は、様々な分野の応募を励起するため応募者を土木学会会員に限らないことにすること、第二は事業との連動を考え先行応募(竣工と同時の応募、審査は2年経過後となる)を認めること、第三はそのデザインに関わらない人からの推薦を随時受け付けにすることである。読者諸兄もご自身の応募、推薦に留まらず周辺の方々へ是非声をかけて頂きたい。様々な分野からの、多数の応募を期待しています。 

デザイン賞選考小委員会事務局

本賞は,「土木学会景観・デザイン委員会デザイン賞(略称:土木学会デザイン賞)」として2001 年度に創設され,これまでに,56 作品を表彰しています。

本賞の特色
 本賞は,(社)土木学会田中賞,(社)日本建築学会,(社)日本造園学会等の設計関連の諸賞の長所を取り入れながら,
独自の選考方式を採用しています。すなわち,公募対象を公共的な空間や構造物に広く求めるとともに,新たに創出
された空間・構造物はもとより,計画・制度の活用や組織等の活動などに創意工夫がなされたことで景観の創造や保
全が実現した作品も含まれます。特に,作品自体を表彰するというよりも,当該作品に貢献した人物・組織(本賞で
は「主な関係者」と称する)に対し賞を授与するものです。したがって,褒賞の対象者は,建設部門に属する方に限
定せず,計画・制度の立案者をはじめ,積極的に貢献した行政担当者,NPO やNGO等の団体組織などさまざまです。

公募と褒賞の対象について
 本賞の対象には,道路・街路・広場・公園・駅舎・河川・海岸・港湾・空港等の公共空間をはじめ,橋梁・堰堤・水
門・閘門・堤防・護岸等の構造物などが含まれます。こうした公共空間や構造物等において,特にその周囲との景観的・空間的関連の持たせ方や,当該の空間・構造物の機能的要請などに対して,美的にどう解決したかという観点に照らして優れた作品を公募しています。公募にあたっては,当該作品に従事した方々(主な関係者)からの応募とともに,広く一般の方からの推薦作品も受付けます。

応募要件
 竣工後2年以上経過(今回は2004 年8月31日以前に竣工)していること。

選考の流れ
 選考にあたっては,8 名の選考委員で組織された「デザイン賞選考小委員会」が次の流れで実施します。
 選考委員の紹介と選考のポイントはこちらをご覧ください。
1)規定審査:応募作品の書類形式・応募条件等の審査。
2)一次選考会
 書類での審査。本賞の趣旨や各選考委員の選考ポイントに照らし,応募作品が一定の水準に達しているかを審議。
3)二次選考会
 選考委員による応募作品現地評価に基づいて,最優秀賞と優秀賞を選考。現地評価では,応募書類に示された内容と現状とを照合するほか,スケール感や周囲との関係性などを調査。なお,応募作品の中で,すでに社会的に高い評価が定まっている秀逸な作品には「特別賞」を授与する。

応募手続きとスケジュール
 応募手続に必要な募集要項、応募書類書式、応募方法、選考方法などの詳細は、景観・デザイン委員会のWEBサイト(http://www.jsce.or.jp/committee/lsd/prize/)をご参照ください。
◆全体の流れ
1)一般からの推薦作品募集(期間:2006年7月1日〜7月31日)
2)エントリー(期間:2006年7月1日〜9月8日
 上記のWEBサイトを通じてエントリーを実施。
3)応募書類送付(受付期間2006年9月1〜29日/消印有効)
 応募にあたり「主な関係者」の選定や事業者・設計者・施工者等の関係者間の調整に多くの時間を要するので、早めの調整を薦めます(これが理由で応募断念の例もある)。
4)選考の実施(期間:2006年9月〜2007年1月)
5)選考結果公表:2007年2月上旬頃にWEBサイト上にて公開。
6)授賞式および受賞者プレゼンテーションの開催
 2007年5月下旬予定。

2006年度土木学会デザイン賞の主な変更点
1)皆様からの推薦を、随時受け付けます。詳しくは作品推薦制度のページをご覧ください。
2)竣工後2年未満の作品の先行応募を受け付けます。詳しくは先行応募制度のページをご覧ください。
3)応募要件のうち「主な関係者の少なくとも一人が土木学会員であること」という要件をなくしました。詳しくは募集要項をご覧ください。

皆様に作品の推薦についてご協力のお願い
上述したように、本賞では応募に相応しい作品を一般の方から広く募っておりますので、積極的にご推薦くださるようお願いいたします(詳細はhttp://www.jsce.or.jp/committee/lsd/prize/recommend.htmlを参照)。推薦対象作品は、当該作品の関係者に応募依頼書を送付いたします。

本賞に関する問い合わせ先
デザイン賞選考小委員会事務局宛にお願いします。

● 2005年度デザイン賞選考小委員会事務局・運営幹事会
主査:星野裕司(熊本大学)/幹事:岡田智秀(日本大学)、江本智一((株)長大)、岸上明子(日本大学)、中村泰広((株)鹿島)、八馬 智(千葉大学)、福井恒明(国土技術政策総合研究所)

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