丸の内仲通り

所在地:東京都多摩市鶴牧二丁目二十二番地 MAP
事業者:住宅・都市整備公団 (現・UR 都市機構)

 

受賞者

氏名
所属
役割
遠藤 泰人 (株)空間スタジオ ・全体デザイン
・詳細デザイン
高重 裕幸 (株)旭技建(当時)
(株)K-テクニカルエキスパーツ(現在)
・全体計画・コンセプト形成
・基本計画の立案
工藤 雅則 (株)旭技建(当時)
(株)K-テクニカルエキスパーツ(現在)
・全体計画・コンセプト形成
・基本計画の立案
小島 祥孝 (株)旭技建(当時)
(株)K-テクニカルエキスパーツ(現在)
・橋梁の計画
・構造計算
野村 敏彦 住宅・都市整備公団南多摩開局 ・基本計画の立案,全体調整
住宅・都市整備公団南多摩開発局(現:独立行政法人UR都市機構) ・事業の推進

 

講評
 本橋の竣工は1990年7月である。実に24年の時を経た橋梁の応募というのは、本賞の歴史の中でも例を見ないのではないか。四半世紀を経過した本作品の状態がいかなるものか、期待をもって実見に赴いた。
 コンクリート製の桁や支柱は美しく維持され、周辺の緑の成長になじんでいる。特に支柱と斜面の接合部が簡素に収まっており、夾雑感がないのが秀逸である。階段の曲線部から眺める遠景が、歩き進むごとに変化する効果もすばらしい。高欄はアルミ鋳物で、進行方向の視線が抜けるよう丁寧なディテールで工夫され透過性が高い。
 全体として非常に良い経年変化の味わいを感じる作品であった。エイジングという価値を改めて評価をすることができたという意味で、とても意義のある議論を行なえたことを応募いただいた関係者に感謝したい。(須田委員)

 巨大な団地の小さな橋を目指して車を走らせると、緩やかな登り坂の先にその歩道橋があった。完成後すでに24年が経過していて、さすがに橋面には経年劣化が見られるが、端正な佇まいをしっかり残している。車道から正面に見たときのスレンダーな姿が特に秀逸であるのは、主桁の断面の先端部が細く絞られているのと、高欄のバラスターの上端も細められていて笠木が支持無しで水平に浮いているように見えるからだ。
 このバラスターは中間に穴を穿ってあるので、なめらかで優雅な螺旋階段を上がり、橋の進行方向を見ても高欄の視線の透過性が極めて高い。装飾的な効果もさることながら死角を作らない優れたデザインでもある。8月の昼下がり、老婦人がゆっくり渡って行ったのも、安心出来る人に優しい橋だからだろう。
 小さな橋であるが、全体のバランスとディテールや素材に配慮が行き届き、望遠でも近景でも接写でもフォーカスが合っているのは、賞賛に値する。(武田委員)