新四万十川橋

所在地:高知県四万十市不破~坂本 地図
事業者:国土交通省 四国地方整備局中村河川国道工事事務所

 

受賞者

氏名
所属(当時)
役割
松井 幹雄 大日本コンサルタント株式会社 景観デザイン室 室長 ・デザイン統括
・橋梁デザイン
鹿島 昭治 大日本コンサルタント株式会社 景観デザイン室 ・合意形成コーディネート
黒島 直一 大日本コンサルタント株式会社 景観デザイン室 ・色彩計画
堀田 毅 大日本コンサルタント株式会社 東京支社構造技術一部構造計画担当次長 ・橋梁予備設計
高田 壮進 大日本コンサルタント株式会社 東京支社構造技術一部構造計画室 ・橋梁詳細設計(上部工)
戸田 俊彦 大日本コンサルタント株式会社 東京支社構造技術一部構造計画室 ・橋梁詳細設計(下部工)
野口邦生 大日本コンサルタント株式会社 東京支社構造技術一部部長代理 ・橋梁詳細設計管理
国土交通省 四国地方整備局 中村河川国道事務所 ・橋梁形式の選択、切土構造からトンネル構造への変更等、一貫した事業リーダーシップの発揮
新四万十川橋( 仮称) 景観検討委員会 ・デザインコンセプトの確立
・関係機関の合意形成
大日本コンサルタント株式会社 ・橋梁計画から詳細設計までの一貫した橋梁デザイン、設計
・景観検討、橋梁予備設計、橋梁詳細設計
株式会社ウエスコ ・橋梁詳細設計

 

講評
 デザインコンセプトは、「四万十川の自然風景を生かすシンプルな橋」とのこと。応募書類には「普通の橋」の実現とも書かれている。これがいかに困難なことか。道路としての機能、河川条件、公共構造物としての経済性など様々な制約条件の下、道路線形、A2橋台とトンネルとの取り合い、主構造の合理性、橋脚柱形状など、入念に考えられた橋であることが伺える。設計者と事業者、景観検討委員会が丁寧に議論した結果であろう。
 自動車専用道路特有の付属物の存在は、景観上マイナス要素であるが、設置位置と構造細部に配慮することで、最小限に止めていることは評価できる。A1橋台と主桁の収め方、および主桁と橋脚の剛結部は、更なる配慮が欲しかった。また、現場塗装箇所に色むらがあるのは、施工上避けられないことであろうか。なお、今の色彩がベストの選択であるのかは、選定委員会でも議論になった。再塗装時にあらためて考えてほしい課題である。(椛木)

 総評でも書いたが、普通を問い直し、より進化した普通へと昇華させる思考を実践している作品だと思う。広がりのある穏やかな四万十川の風景の中で突出せず、溶け込んでいくような姿を持つ美しい橋だ。プロポーションも実にいい。日本のほとんどの橋が、今なお「標準設計」に基づいて作られている中で、特殊なことをせずともここまでの洗練されたデザインが可能であることを示してくれる好例である。橋上の標準的な付属物に対する否定的な意見もあったが、僕はそんな些細なことで価値を失う作品ではないと思っている。
 ただし、構造的な理由はどうであれ、コンクリートの橋脚とスチールの桁の、あまりにも“ノーディテール”の納まりは、少々やりすぎではないか?異種の素材が取り合うところに、全くリアリティが感じられない表現は、まるで模型のように見えて、人々の営みや近辺の古い橋梁群に感じられる濃厚なリアリティとの共存が難しいように感じてしまった。(西村)