木の香りが息づく梼原の街なみ景観

所在地:高知県高岡郡梼原町梼原 地図
事業者:梼原町役場 環境推進課

 

受賞者

氏名
所属(当時)
役割
岩本直也 梼原町役場 環境整備課長 ・関係機関調整
西川豊正 たくみの会 会長 ・デザインアイデア提案
高知県 須崎土木事務所 道路建設課 ・提案されたデザインを忠実に再現し、施工
梼原町 ・事業主体

 

講評
 国道440号の改良に合わせて行われた住民主体の沿道空間整備、街並み整備は、非常に伸びやかですっきりとしてモダンでここちよい。広い沿道の正面に四国山脈がそびえ、竜馬脱藩の町であることを印象付ける。庁舎からはじまった、地元の木材を使った町づくりは3つの木橋、町の駅ゆすはらの完成などより定着した感がある。一つの建物、一つの橋梁でさえ木を使うことには困難が伴うが木を用いた町づくりを続ける努力には敬服する。電線の地中化や景観協定などにより統一された街並み、広々とした沿道空間、木をふんだんに使った町づくりが達成されている。私は梼原にみられる、開放的でモダンな街並みのデザインはそこで育つ子供たちの誇りになっていくにちがいない。中山間地デザインの一つの方向性であろうと思っている。(島谷)

 

 雨に濡れた屋根付き橋は、木材が退色したこともあって、以前写真でみた竣工当時よりずっと情緒的に見えた。橋を渡り、三嶋神社へ向かうと御幸橋境内から笛や太鼓の音が聞こえてくる。近づいてみるとちょうど津野山神楽を舞っていて結構人だかりだ。この地の伝統芸能で国の重要無形民俗文化財である。思わず時間を忘れ見とれてしまった。何だか得をした気持ちになる。隣地区から移築した檮原座もその建築のレベルの高さと、この地域の文化度の高さを伝える素晴らしいもので感動した。山間とはいえ、こういった文化に支えてきた誇りがひとつの原動力になっているのであろう。その思想を未来に引き継ごうと木橋や市庁舎など、核となる公共施設をつくりながら、道路は地中化し、無理のない緩やか景観協定でまちなみに統一感を持たせている。
 脱藩の像が置かれている小高い丘から、梼原川を手前に、背後に山々に囲まれた檮原のまちが一望できる。夕暮れ時、家々に明かりが付き始めたその集落の姿はひっそりと静かに佇んでいる。しかし内側にぐっとエネルギーを蓄え、頑張っている姿を同時に感じた。(南雲)