建設コンサルタント委員会

第10回 建設コンサルタント シンポジウム

時;1996年12月9日(月)
場;土木学会図書館講堂


テーマ;「エンジニアリング・サービスの創造価値−著作権をめぐって−」


基調講演  「著作権とエンジニアリング・サービスにおける現状等について」 

             高石 弁護士

研究報告  「著作権に関するアンケート調査等結果報告」

             建設コンサルタント委員会 第3小委員会


パネルディスカッション

座 長 :     橋本     セントラルコンサルタント(株)

パネラー:     木下 誠也   建設省

          黒川  洸    東京工業大学

          大島 一哉  (株)建設技術研究所

          P.L Kopff    セテック社

          宇野  求    千葉大学

 

パネルディスカッションの要旨

 国際化、情報化の潮流の中で、わが国の建設生産システムも急速な変貌を遂げようとしている。

 その中で、主としてソフト分野の生産を分担する建設コンサルタントにおいても、高度な技術や創造性を要求される業務が急速に増えている。一方、平成75月に策定された「公共土木設計業務等の標準契約約款」では、著作者人格権は建設コンサルタントにあるとされているが、財産権については無償で発注者に譲渡することになっている

 本シンポジウムでは、著作権に関わる問題点、今後の動向、ならびに海外における実態などの把握を目的に、話題提供者を各界(学識経験者,建設省,民間)から招き、建設コンサルタント業務における成果の著作物性、著作権の解釈、あるいはその運用のあり方研究の必要性などについて討論した。


木下 誠也 :「建設コンサルタント業務の著作権」

○公共土木設計業務における著作権の対象にはつぎの3種類がある。

@成果物: 報告書、設計図、パース、写真

Aプログラム: コンサルタントが保有する開発プログラム、業務の効率的遂行のために開発したプログラム、成果品としてのプログラム。

Bデータベース: コンサルタントが保有するデータベース、業務の効率的な遂行のために作成したデータベース、成果としてのデータベース。

 

○「公共土木設計業務標準委託契約約款」の策定   −著作権に対する考え

・建設コンサルタントの著作権(財産権)は、発注者に譲渡する。

・発注者は、成果物を自由に公表できる。

・成果物が著作物に該当する場合、コンサルタントに承認を得れば、表示氏名を変更できる。

・コンサルタントが独自に開発したプログラムを発注者が利用する際は、別途に使用料等を支払う。

・発注者が承諾した場合、コンサルタントは成果物を使用、複製、公表することが出来る。

 

○建設コンサルタントへの期待

・今後、著作権に対する考え方、対応等、ますます欧米並みにシビアになると考えられる。 

・このような時代には一人一人が、意識を持って対応することが大切であり、以下のことを期待する

・技術力の確保、経営基盤の確立、国際化への備え、企業戦略、品質の確保、責任の認識

 

黒川 洸:「著作権との関わり」

○学術論文と著作権

 大学研究者の生産活動の成果は、論文集または、国際的なジャーナルに掲載される。わが国の場合、掲載された論文については、著作権は著者に、編集出版権は学会に帰属している。アメリカの場合、他からの引用が多く、引用(文、図、表)した著者に対する許可の問題が発生するため、出版社へ著作権を提供するケースが多くなってきている。

 学会における研究であっても、実務の中のシーズに密着している面が多い。そのため、これまでは他人の研究論文を無断引用することが多かった。若い人の中には、これらを保護すべきとの意見も多くなり、制度等も整備されてきた。

○コンサルタント活動と著作権

 計画分野では、コンサルタントと一緒にプロジェクトを遂行したことがあるが、甲と乙の関係、調査結果の帰属の問題があって、良い結果を出すことができなかった。アメリカでは、著作権は多くはコンサルタントに帰属し、コンサルタントと議論ができている。わが国でも、徐々にその方向に向かいつつある。

○プロポーザル方式

築の場合は、コンペ形式でのプロポーザル方式がとられており、土木の世界より整備されている。学ぶ点が多い。

 

大島 一哉:「建設コンサルタント業務の著作権」

○建設コンサルタント業務の著作権の背景

 特許権ではカバーできない知的創造物の増大および、大量複製化、模倣化に対する保護等の動きは社会的な潮流である。発注者指導型からコンサルタント主体型へと業務遂行形態が変化するにつれて創造的な業務も増えている。また、国際的にも、著作権を保護するとともに、開放市場における著作権の明確化が要請されている。

○公共土木設計業務等標準委託契約約款について

 著作権の対象は、発注者へ引き渡す成果物として、報告書、設計図、パース、写真、プログラム、データベースなどがある。著作者人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権等、また財産権には、出版権、放送権、上演・演奏権等がある。

○実際上の課題

・約款では、著作権法に規定する著作物を対象にしているが、建築、情報処理産業など他の業界と摩擦が生じ易い。

プログラム、データベース等、利用権をめぐってトラブルになり易い。

・高度情報化の進展に伴い、それを利用するうえで、ルールならびにチェックについて、発注者、受注者の合意の上で徹底させる。

 

Pierre Kopff:「フランスにおける著作権の実態と問題点」

 フランスでは、「成果物は発注者、成果物までのプロセスは著作者の所有である。」と定義されている。この芸術著作権の法律が生きており、全てのコンサルタントに通用されるため、土木コンサルタントの社会的位置づけが明確である。

 ヨーロッパでは、1992年にフランス版をベースとしたコンサルタント著作権が制定された。

 

宇野 求

 都市設計ないし生活環境設計を創造的に行うようなワークについては、設計者自身に「コピーライト(著作権)」を認めることが理にかなっているし、社会的にもメリットが大きい。建築設計界では、そのように受け取られている。

 建築と土木が融合する機会が増えているが、著作権に対する認識は、カルチャーの違いと制度化された技術体系への対処の仕方(規準)に左右される。設計技術、思想、方法がかなり異なっているが、徐々にクリアーになりつつある。今後、設計力の競争を導入してその向上を目指すことが大切で、そのための仕組づくりにも力を入れなければいけない。


以上、 第10回 建設コンサルタント シンポジウム報告

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