土木学会 コンサルタント委員会
「設計役割」研究小委員会の設立について

平成14年9月19日 小委員会委員長 椛木洋子

 わが国の公共調達における設計・施工分離の原則は、旧くから意識されルールとしても通達されてきた。但し事実として、 道路系の公団において詳細〜実施設計を施工側で実施する慣習が永年続けられてきたことに加えて、ルールとしても、その製作や施 工に係わる技術がコンサルタントにないとみなされる特定の工種については、設計付工事契約が許容されてきている。

 近年、この設計・施工分離の原則に必ずしも拠らない発注方式が広まりつつある。すなわち、工事における業者選定において、 価格以外にその保有する技術を評価して選定しようとするものであり、いくつかある方式のうち、いわゆる「設計・施工一括方式」も その一つとして挙げられる。同方式は欧米で実施されている幾つかのいわゆるDB(デザイン・ビルド)方式のいずれにも相当しない、 わが国独自の方式といえるが、何れにしても上述の設計・施工分離の原則からは外れるものとして認識される。

 その背景には、一部にはコンサルタントにおける設計が実態的に製作・施工業者に担われているという歪んだ状況や、 コンサルタントによる設計が現実の施工から遊離した計画にもとづいているケースがママあることなどがあると考えられるが、 一方で、現実に実施されている同方式には、提案された計画の妥当性検証等の面で数多くの問題を抱えていることも指摘されて いるところである。

 一方翻ってみると、現実にコンサルタントが実施している設計では、本来コンサルタントが必ずしも担わなくてもよい 範囲まで成果を作成しているのではないかとの指摘もある。すなわち、鉄筋コンクリート構造物における加工図も含めた配筋詳細 図あるいは鋼構造物における詳細溶接表示等である。これらの成果は、一面でコンサルタントの業務報酬を下支えしていること、 あるいは「設計は細部(詳細)にあり」との論などから、これらの部分はやはりコンサルタントとして担うべきであるとの考えもある。 一体、コンサルタント−現状の一つの業態を形成している、いわゆる建設コンサルタントではなく、本来の、エンジニアリングに係わ るコンサルティング・サービスを提供するコンサルタント−が設計、特に施設・構造物等の設計においてどのような役割を果たせば よいのか。その判断基準は真の顧客である国民・納税者からみて最大の、効率も含めた達成を獲得できるのは如何なるシステムである のか、ということであろうが、この視点に立ってとりあえず提供側の関係者が寄り集い、この課題に答えるべく調査研究を実施する ものである。

 なお、国土交通省においては国島東大教授を委員長とする 「設計・施工一括方式導入検討委員会」 を設け、既に平成13年3月に初弾の報告を提出されているが、本委員会ではより拡がりのある視点で、かつ地に足が密着した調査・ 研究を実施することで考えている。前者については公共土木設計において「設計者」は必要なのかどうか、必要であるとすれば誰なのか、 またその著作権はどのように考えるべきなのか等も検討の視野に入るものと想定している。