*** 第8 16回環境問題研究小委員会議事録 ***

 

  時:20031024() 13301600

  所:土木学会 F会議室

出席者:荒岡邦明、有馬総三、石川一、泉浩二、大谷正太、篠文明、真鍋章良、柳沢満夫、恒屋冬彦

 

1.一般議題

当委員会の研究テーマは「循環型社会を目指した社会資本整備」であり、交通部門はEST、都市・地域部門は自然再生、産業部門はゼロエミッションの視点で調査していることを平成15年度第2回コンサルタント委員会(115日開催予定)において説明する。

 

2.研究報告:緑の総合計画

報告者:潟gーニチコンサルタント 恒屋冬彦

1)調査目的

 緑地の減少は、都市におけるヒートアイランド現象や都市型洪水の増加等をもたらす。本調査は、これらの問題を防止するために策定される緑の総合計画を検討する上で必要な基礎資料の収集・整理・解析を目的とするものであり、@緑の将来像、A緑の指標、B緑被率、C緑被面積、D住民参加のしくみについて調査研究を行った。

2)緑の将来像

 人工林の将来予測として将来のスギ・ヒノキ人工林の量と質の変化、それらに起因する土壌流出・水源涵養・CO2吸収に対する機能の変化について予測する。農地面積の将来予測として将来の市街化区域内農地(生産緑地・宅地化農地)、市街化調整区域内農地及び無指定地域農地について予測し、これらを集計して都市全域の農地面積を予測する。水と緑の効用として@大気浄化機能(CO2吸収)、A都市型気象の緩和機能、B洪水及び渇水緩和機能、C土壌浸食・土砂崩壊防止機能、Dアメニテイ保全機能、E生物相・生物保全機能、F防災機能について検討する。また、将来の水と緑の望ましいイメージとして@都市全体、A都心部、B市民農園、C周辺区、D谷戸の将来鳥瞰イメージ図を作成した。

3)緑の指標

 量的目標として緑被率、質的目標としては接道緑被率・巨樹保存率・身近な公園の整備率・親水空間保有率等を検討した。また、新しい緑被率の算定方法を提案した。

4)住民参加のしくみ

ボランティア団体は増加傾向にある。市民活動の内容は緑地整備型・環境保全型・緑化活動型・森林管理型に分類され、行政との係わりは行政主導型・パートナーシップ型・行政サポート型に分類される。行政とボランティアの係わりにおいて情報提供のしくみ・リーダー養成・協働の開始段階等が重要である。

 


 

*** 第8 17回環境問題研究小委員会議事録 ***

 

  時:20031121() 13301530

  所:土木学会 F会議室

出席者:泉浩二、篠文明、松尾幸徳、真鍋章良、柳沢満夫、山根啓典

 

1.一般議題

平成15年度第2回コンサルタント委員会(115日)において、前回小委員会(1024日)で合意された内容について報告したが、質問や意見はなかった。なお、当委員会は継続の意向を表明したが、他の小委員会も含め最終結論は次回委員会(165月開催予定)において決定する。

 

2.研究報告:物流の環境問題

報告者:復建調査設計梶@山根啓典

1)物流の現状と環境問題

 国内貨物輸送の機関別分担はトラックが最大であり、トンベース91%及びトンキロベース54%である。トラック輸送における効率は営業用トラック約50%、自家用トラック約30%であるが、両者共に経年的に効率が低下している。運輸部門の二酸化炭素排出量(2000年)は、全部門合計の20.7%(256百万d)である。このうち、自家用乗用車(58%)・営業用貨物車(16%)・自家用貨物車(11%)の排出量が多い。輸送距離500q以上の貨物輸送量(雑貨)に占める海運・鉄道輸送量の割合で示されるモーダルシフト化率は、2010年に50%達成を目標としているが、現状は40%以下である。

2)社会的課題に対応した物流システム

 地球温暖化・大気汚染・循環型社会の実現に対応した物流システムを構築しなければならない。地球温暖化対応では輸送機関単体の対策に加えて社会資本整備・モーダルシフトの推進など、大気汚染対応では輸送の効率化に加えて単体の排出削減・都市内交通の円滑化・拠点整備や船舶・鉄道の活用が行わなければならない。また、循環型社会の実現に対しては静脈物流システムの構築が必要である。

3)近年の物流対策の動き

 近畿圏を中心に@鉄道モーダルシフトの推進、A電気貨物自動車の共同利用システム、Bグリーン配送、C交通公害低減システム、Dアイドリング禁止条例及びアイドリングストップ運動の推進、E幹線貨物の共同輸送、F同業種型共同配送、G環境ロードプライシング、H求荷求車システム、I路上駐車施設などを利用した物流効率化、J平日30分未満無料開放、K迷惑駐車追放モデル事業所制度、L静脈物流の鉄道貨物輸送、Mリサイクルポート、N安全運転管理システムなどが実施されている。

4)今後の課題

物流拠点へのアクセス道路等のインフラ整備、ハード・ソフトを組み合わせた総合的な物流施策の推進、関係者を交えた物流施策推進の仕組みづくり、行政支援策等の広報活動、早期に取り組める施策の広域的展開が必要である。

 

 


*** 第8 18回環境問題研究小委員会議事録 ***

 

  時:20031219() 13301530

  所:土木学会 E会議室

出席者:荒岡邦明、石川一、泉浩二、柳沢満夫、今野敏之

 

1.一般議題

地球環境委員会(129日開催)から、第12回地球環境シンポジウムは名古屋大学において200482日(月)〜3日(火)に開催されること、「途上国の環境変動研究の文献調査と開発の進展を時間軸とした比較」研究小委員会が発足したこと等が報告された。

 

 

2.研究報告:循環型社会の概念とプロジェクトのあり方

報告者:三井共同建設コンサルタント梶@泉浩二

1)循環型社会の概念

循環型社会の概念は「循環型社会」自体が最終目的ではなく、「持続可能社会」に至る手段であり要素である。ここでは、循環型社会を廃棄物・リサイクル対策の観点からの狭義の意味でなく、資源・環境制約のもと、地球環境、地域環境の保全、世代間・地域間の公正、自然との共生等を含む概念として「環境面の持続可能社会」または「環境保全型社会」を表現する広義の意味で用いる。さらに、持続可能社会は人間の基本的生存権(BHN)として、@環境容量、A社会公正、B経済効率の側面からも持続可能なものでなくてはならない。この3者のトレードオフ関係を克服することにより持続可能社会が実現可能となる。

2)循環型社会の成立要件

多数の循環型社会に係わる成立要件が発表されているが、日本では資源枯渇・環境破壊の観点に基づくハーマン・デーリーの3条件、さらに資源配分の公平性を加えた観点に基づくナチュラル・ステップの4条件のほか、脱物質化(資源生産性の向上)の観点に基づく山本の主張が良く知られている。   

3)建設コンサルタントのあり方

建設プロジェクトを推進する際にコンサルタントは、サービス水準を維持しつつ資源投入量と不要物発生量を削減し、生産費用を削減することを意味する共益状態を実現するための設計を行わなければならない。設計には本来目的(便益)と負の影響(費用)に関する2側面への対応が求められている。負の影響に対して、従来からの環境政策の原理である汚染者支払い原則(PPP)の観点から、経済活動のより上流側に位置する「拡大生産者責任、設計者責任」へ移行しつつある。

4)建設コンサルタント技術者の役割

社会基盤施設の設計に当っての意志決定過程における各主体として@意志決定者A合意形成参加者B技術者がそれぞれの役割を担っている。技術者は、意志決定プロセスにおいて、その専門的な知識を生かして意志決定者、合意形成参加者をサポートする行司役、アドバイザーとしての役目が期待されている。

 

 


*** 第8 19回環境問題研究小委員会議事録 ***

 

  時:2004114() 13301530

  所:土木学会 F会議室

出席者:荒岡邦明、大谷正太、篠文明、松尾幸徳、真鍋章良、柳沢満夫、黒木浩則、岡本憲一

 

1.一般議題

環境システム委員会から、北九州市で1024日〜25日に開催された環境システム研究論文発表会の概要及び松尾委員が司会を務めた4編の論文について概要が紹介された。

 

2.研究報告:環境に配慮した道路整備プロジェクト

報告者:日本技術開発梶@黒木浩則

1)プロジェクトの概要

本プロジェクトは、動物の生息密度世界一といわれる湖のある国立公園を通過し、世界自然遺産に指定される自然保護区に至るアクセス道路(幅員10m、延長77km)を対象としている。

事業の主目的は通年交通の確保・旅行時間の短縮・輸送費用の低減と沿道環境の改善であるが、この他、農業生産の増加・価格維持と観光関連産業の活性化が間接的効果として期待されている。道路は地形と自然環境から平原(野生動物の回廊)・崖地・緩傾斜地に大別できる。途中の村落は2個所のみである。

本プロジェクトの内容は、道路舗装等の改修の設計・施工と並行的に環境保全対策を検討・実施するもので、事業実施に伴う環境影響をモニタリングしながら進めている。現時点では事業の約50%が完了している。

本プロジェクトにおける環境担当の役割は次のとおりである。

・当該国政府との共同による現地調査の実施

・道路設計に反映すべき環境保全対策の提案

・環境保全目標設定と環境モニタリング計画立案

2)環境保全対策

プロジェクト実施前に世界銀行によるEIA(環境影響評価)が終了しており、それによると直接的影響として周辺の湖における水収支と沿道の野生動物に対する負の環境影響が指摘されている。また、間接的影響として沿道における都市化の拡大が野生生物に及ぼす負の環境影響が指摘されている。これらの負の環境影響を低減するため、工事段階・供用段階に分けて環境保全対策を講じた。@工事中は、野生動物や沿道住民へ配慮した工事時間の固定化、オイルなどの適切な保管・処理、伐採樹木の最小化、散水、土取り場を活用した野生動物や家畜の水飲み場の創出、A供用時として、野生生物の横断が容易な低盛土構造の採用、ロードキル防止を目途としたスピード抑制のための標識・ドリフトの設置、水収支に変化を及ぼさないよう道路横断方向の排水施設の設置などが実施された。

3)環境モニタリング

 環境への影響が少ないことを検証する目的から、供用前〜工事中〜供用開始後3年間の環境モニタリングを行う計画である。工事中は年4回中央政府と施行管理者によって測定が行われ、結果は中央政府とコンサルタントにより評価される。モニタリング項目は、大気質・騒音・水質・隣接する湖の水位・動植物及び環境保全対策実施の確認である。一部供用された区間において供用前・後の比較を行うと道路騒音と沿道の粉塵は大幅に改善されている。なお、当該国では環境基準や規制基準が定められていないことや安易な他国の基準の引用は、環境悪化を許容する結果となりかねないため、目標は「現況非悪化」とした。現時点の環境モニタリング結果によれば、騒音・大気・水質と自然環境は環境保全目標を満足しており、EIAが指摘した負の環境影響は発生していない。

4)今後の課題

 沿道利用及び市街地拡大の抑制、人流増加に伴うHIV /AIDSの蔓延抑制及び交通ルール遵守が課題と考えられる。特に不法占拠建造物に対する監視と撤去の実施が緊急の課題である。

なお、本事業は、当該国における環境モニタリングの初事例であり、政府はこれを手本として他事業にも転用する計画である。さらに、各国ドナーや周辺諸国から視察団が訪れるなど、高い評価が得られている。今後は、継続的な環境モニタリングを実施するための人材の育成と組織体制の構築、環境基準設定に資する定量的データの確保が重要である。

 


*** 第8 20回環境問題研究小委員会議事録 ***

 

  時:2004220() 13301600

  所:土木学会 E会議室

出席者:荒岡邦明、石川一、泉浩二、松尾幸徳、真鍋章良、柳沢満夫、黒木浩則

 

< 記  録 >

 平成15年度の最終小委員会なので、過去2年間の調査研究成果と今後のまとめ方について総合討論を行った。各小委員の発言を総体的に整理し以下に示す。

 

1.報告書の形式と進行状況

@ 最終報告書を作成するためのバックデータとして内部用の「研究報告総集編」を編集した。

A 事例集及び最終報告書は作成中である。

B 最終報告書は印刷製本とする。

 

2.今後の調査研究方針

@ 成果物の内容は、これまで進めてきた方向とする。

A 報告書をJICAJBIC、世銀、ADBに提出し、諸機関の環境ガイドライン等に反映させることが望ましい。

B 研究計画では「このような背景に基づき、建設コンサルタント技術者として循環型社会を構築するために実行または貢献可能な対象・内容・方法等を明確にすることを調査研究の目的とした」と記載されているが、現段階では明確に出来た部分と出来なかった部分がある。

C 交通部門は多数の事例を収集出来たが、都市・地域部門と産業部門の事例は不足している。従って、都市・地域部門と産業部門は来期(第9期)に継続することが望ましい。

D 事例に基づき一般的に欠落している部分を見出すことが「実行または貢献可能な内容と方法」を明確にすることになる。

E 明確にされた「実行または貢献可能な内容と方法」は評価して政策と関連付けることが望ましい。

F 第7期(前期)は建設プロジェクトの環境配慮ガイドラインにおいて「要素技術」について調査研究を行い、第8期(今期)の循環型社会では「プロジェクト」について調査研究した。来期はこれらを実行するための方法や政策に踏み込むことにより調査研究の一連の流れが完結する。

G 個々の環境要素に関することだけではなく、循環型社会の概念についても勉強してきたので、最終的には、事業そのものについて循環型社会の観点から整理することが望ましい。

以 上