水工学論文集査読要領内規

1. 査読の目的
投稿原稿が、水工学論文集に掲載される原稿として、ふさわしいものであるかどうか
を判定するための資料を提供することを目的とする。この場合、査読に伴って見出さ
れた疑義や不明な事項について修正を求める意見があれば述べるものとする。

2.査読にあたっての注意
(1)  査読員は、当該原稿が公表前の研究・技術成果あるいは報告書等であることを
十分留意し、原稿の内容について秘密を守り、投稿者の権利を確実に保護しなければ
ならない。したがって、査読は、査読員が個人として行うものであり、他人に当該原
稿を見せたり、あるいは原稿内容を話して意見を聞くようなことをしてはならない。
(2)  原稿の査読は登載の可否を判定するための資料を提供するもので、その改善を
図るのが目的ではない。原稿の内容に対する責任は本来著者が負うべきものであり、
その価値は一般読者が判断すべきものである。査読員の主観や好みを押しつけたり、
原稿の体裁や書き方の完璧を期待する余り、将来の発展が大いに期待される原稿や実
際に役立つ原稿を逃すことのないよう配慮して頂きたい。

3.査読の方法
3.1  評価
査読にあたり、投稿原稿がその分野においていかなる位置づけにあるか、研究、技術
成果の貢献度が大きいか等の点について、以下の項目に照らして客観的に評価する。
(1) 新規性:内容が公知・既発表または既知のことから容易には導き得るものでない
こと。たとえば以下に示すような事項に該当する場合は新規性があると評価する。
  a) 主題、内容、手法に独創性がある。
  b) 学界、社会に問題を提起している。
  c) 現象の解明に貢献している。
  d) 創意工夫に満ちた計画、設計、工事等について技術的検討、経験が提示されて
     いる。
  e) 困難な研究・技術的検討をなしとげた成果が盛られている。
  f) 時宜を得た主題について、新しい知見と見解を示している。
(2) 有用性:内容が工学上、工業上、その他実用上何らかの意味で価値があること。
たとえば、以下に示すような事項に該当する場合は有用性があると評価する。
  a) 主題、内容が時宜を得て有用である。
  b) 研究・技術の応用性、有用性、発展性が認められる。
  c) 研究・技術の成果が有用な情報を与えている。
  d) 実験、実測のデータで研究、工事などの参考として寄与する。
  e) 新しい数表、図表で応用に便利である。
  f) 当該分野での研究・技術の体系化をはかり、将来への展望を図っている。
  g) 研究。技術の成果は実務に取り入れられる価値を持っている。
  h) 本原稿を掲載することは会員および読者に益するところが大きい。
  i) 今後の実験、調査、計画、設計、工事に取り入れる価値がある。
  j) 問題の提起、試論またはそれに対する意見として有用である。
(3) 速報性:内容の完成度や緻密さよりもむしろ、早期に発表することに何らかの価
値があること。たとえば、以下に示すような事項に該当する場合は速報性があると評
価する。
  a) 緊急の災害・事故に関する調査結果を報告している。
  b) 開始目前もしくは進行中のプロジェクトについて、重要な問題を提起している。
  c) 極めて重大な学術的・技術的成果を含んでおり、その発表を早めることが学界、
     社会に大きく貢献すると判断されるもの。
  d) 時宜を得た主題について、早急に必要とされる新しい知見と見解を示している。
  e) 学界、社会に緊急に解決すべき問題を提起している。
  f) 学界、社会が緊急に必要とする情報を提供している。
(4) 完成度:内容が簡潔、明瞭に記述されていること。本論の展開が読者に理解でき
るように記述されているか評価する。ただし、著しい厳密さ、正確さ、完璧さ、格調
の高さ等は必要としない。次のような点についても留意して評価する。
  a) 全体の構成が適切である。
  b) 目的と結果が明確である。
  c) 既往の研究・技術との関連性は明確である。
  d) 文章表現は適切である。
  e) 図・表はわかり易く作られている。
  f) 全体的に冗長になっていない。
  g) 図・表等の数は適切である。
(5) 信頼度:内容に重大な誤りが無く、また読者から見ても信用の置けるものである
こと。次のような点についても留意する。
  a) 重要な文献が落ちなく引用され、公平に評価されている。
  b) 従来からの技術や研究成果との比較や評価がなされ、適正な結論が導かれている。
  c) 実験や解析の条件が明確に記述されている。
3.2  判定
各査読員は3.1での各項の評価と、現在までの水工学論文集および土木学会論文集に
掲載された論文、報告およびノートを参考にして、水準以上であれば、掲載「可」と
し、掲載するほどの内容を含まないと考える場合、および掲載すべきでない場合「否」
とする。
ただし、3.1での各項の評価のうち、1つでも問題がありと評価されても「否」と判
定されるものではない。多少の疑義、疑問な点があっても学術や技術の発
展に寄与する内容があるものは掲載されるように配慮する。特に、速報性について
ヘ十分な配慮と示唆が必要とされる。
以下に示す諸項目は委員会が「否」と判断する基準である。
I.誤り
  a) 理論または考えのプロセスに客観的。本質的な誤りがある。
  b) 計算・データ整理に誤りがある。
  c) 現象の解析にあたり、明らかに不相応な理論を当てはめて論文が構成されている。
  d) 都合のよいデータ・文献のみを利用して議論が進められ、明らかに公正でない記述
     により論文が構成されてる。
  e) 修正を要する根本的な指摘事項をあまりにも多く含んでいる。
II.既発表
  f) 明らかに既発表とみなされる。
  g) 連載形式で論文が構成されており独立した論文、報告と認めがたい。
  h) 他人の研究・技術成果をあたかも本人の成果のごとく記述して論文の基本が構成さ
     れている。
III.レベルが低い
  i) 通説が述べられているだけで新しい知見がまったくない。
  j) 多少の有用な資料は含んでいても論文、報告にするほどの価値は全く見られない。
  k) 論文、報告にするには明らかに研究・技術的検討等がある段階まで進展していない。
  l) 着想が悪く、当然の結果しか得られていない。
  m) 研究・技術内容が単に他の分野で行われている方法の模倣で、全く意義を持たない。
IV.内容全体・方針
  n) 政策的な意図、あるいは宜伝の意図がきわめて強い。
  o) きわめて片寄った先入観にとらわれ原稿全体が独断的に記述されている。
  p) 理論的または実証的な論文、あるいは事実に基づいた報告でなく、単なる主観が述
     べられているに過ぎない。
  q) 私的な興味による色彩がきわめて強く、論文集に掲載するには問題が多い。
  h) 学会としての本来の方針、目的に一致していない。
3.3  登載の条件
登載可否の判定は、3名の査読結果に基づいて委員会で行う。(査読員2名以上が「可」
であれば、原則としてこの投稿原稿は登載可とする。)その際、査読員からの修
正意見があれば、修正依頼を行う。修正意見に対して著者が十分な回答を行ったかど
うかは、委員会で判断する。回答が十分でないと判断した場合は、登載を取り消す。
3.4  著者照会
査読を行う上で必要な事項については、小委員会から著者に問合わせることができる。
3.5  修正意見
査読員は論文の内容にかかわる修正意見を述べることができる。原稿の内容について
の責任はすべて著者がもつものであることを念頭におき、修正意見を述べるものとす
る。
3.6  修正意見についての注意
  (1) 新たな計算や実験を追加させることは極力避けるものとする。
  (2) 査読員の主観的な意見や好みを主張して原稿の構成を大幅に変えることを要求し
      たり、投稿者が査読員と見解を異にする点について修正を要求することは避ける
      ものとする。
  (3) 査読は、投稿者に対し研究を指導する立場にないことを留意すべきである。ただ
      し、明らかに査読員の意見、指摘によって原稿の内容が向上すると思われる場合
      には、その点を述べてもよい。

4. 査読の範囲
査読員は次の事柄については考慮しなくてもよい。
  (1) 簡単に分からない数式、計算の内容
  (2) 用いた資料の良否
  (3) 個々の誤字の修正(ただし、気付いたものはご指摘頂きたい)

付則:
1.この内規は1997年(平成9年)7月10日より実施する。
2. この内規の変更は編集小委員会で立案し、水理委員会にはかるものとする。