夕張炭坑遺産サミット(主催:産業遺産を活かす地域活性化実行委員会)

 岡田 昌彰(近畿大学)

去る11月5日に北海道夕張市において「炭鉱遺産サミット2005」が開催された。明治12年の幌内炭鉱開鉱以来、北海道空知地域は昭和30年代まで日本を代表する産炭地域として知られてきたが、その後の合理化によって現在は9鉱の小規模な露天掘が現存するのみとなっている。近年、空知支庁は炭鉱関連施設やそこに根づいた文化の活用を目指しており、国内における旧基幹産業の遺産を核とした地域づくりの先端的事例として注目に値する。

今回のサミットでは、ドイツ・ルールのIBAエムシャーパーク構想の中核をなすゲルゼンキルヒェン市にてアートプログラム顧問を務めるChristoph Brockhaus氏(デュイスブルグ市ヴィルヘルム・レームブルック美術館館長)を迎え、空知地域8市町村の市長・町長による「国際円卓会議」、学生による夕張市炭鉱計画コンペ、市民によるワークショップが開催されたほか、地元の写真家・五島健太郎氏による炭鉱写真の展示も行われた。本プロジェクトの中心的存在である吉岡宏高氏(札幌国際大学観光学部講師)をはじめ、当日参加した250名以上の一般市民や自治体関係者が首長とともに炭鉱遺産の可能性を議論しその価値を共有できたことの意義はたいへん大きい。国内の産業遺産利活用における先導的な事業として、今後の継続的な展開を期待したい。

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