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*       土木学会 環境システム委員会ニュースレター        *
*      Vol.13、No.1  2000.6.16発行      *
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−−− 目 次 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

1.平成12年度年頭にあたって 委員長 森杉 壽芳

2.土木学会環境システムシンポジウム2000「自然を利用した都市づくり」開催案内

3.第28回環境システム研究論文発表会の準備状況と論文集の体裁変更について

4.委員会だより 幹事長 原沢 英夫

環境システム委員会の平成11年度活動報告と平成12年度活動予定

5.小委員会だより 自己評価委員会の活動状況 産業医科大学 二渡 了

6.[連載] 研究室・研究所めぐり【第1回】

テレメトリーシステムの開発 土木研究所環境部 皆川 朋子

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平成12年度年頭にあたって

環境システム委員会委員長 森杉 壽芳

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 環境システム研究委員会が発足して12年が経過しました。この間、「環境システム研

究」には、総計816編の論文が掲載されました。現在、環境システム研究委員会自己評

価小委員会(二渡了委員長(産業医科大学))においては、そのレビューを行い、その成

果を今年度の研究発表会で企画セッションとして討論に付す予定との連絡をいただいてい

ます。

 いうまでもなく、本研究委員会のキーワードは、環境とシステムです。前者は、主に自

然環境であり、大気、水、土壌、生態系、物質循環、地球環境に分類することができるよ

うに思います。後者は、主に環境と人間社会との間にある相互作用を示し、理念、健康、

技術、経済、法制度、政治、市民活動、文化、文明、教育との関係に焦点が当てられてい

ます。

 本研究委員会では、上記の二渡小委員会の他に、環境評価(盛岡通委員長(大阪大学))

とHDP(human dimensions program)研究小委員会(原沢英夫委員長(国立環境研))が

活動中です。盛岡小委員会は、環境の全ての側面を対象として人間社会の全ての側面から

みた場合の環境の価値、尺度、指標を作ることを目指しています。原沢小委員会は、地球

温暖化問題に限定していますが、やはり、人間社会の全ての側面からみた影響、対策とそ

の効果、制度設計の提案を目指しています。

 自然科学の分野では、物理学、化学、最近では生物学が理論的基礎となり、他の分野に

対して大きな貢献をしています。しかし、生態系に代表される自然環境そのものが非常に

複雑であり、厳密な理論体系を築くのは至難の業で有り、ヒューリスティックな研究を含

む多面的かつ学際的な接近法が必要です。社会科学の分野では、経済学が最も体系的な理

論を有しています。したがって、上記2委員会においても、経済理論を使うことができる

環境の経済学的価値の統一的な定義および計測方法の提案、経済的インセンティブを利用

した制度設計は、かなりの研究成果がありますので整理ができるのですが、他の分野から

のアプローチは、未だに混沌としていると思います。

 このような混沌とした状況にある分野こそ、共同研究、シンポジウム、企画セッション

の開催が望まれます。また、土木工学が、本来有している学際的側面への大きな貢献にな

るものと思っています。その成果として、すでに、公害対策事業、環境影響評価、LCA、

IA、環境勘定、環境関連公共事業評価などがあります。本ニュースレターシステムが、そ

のインフラストラクチャーになることを期待します。

 

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土木学会環境システムシンポジウム2000 「自然を利用した都市づくり」 ご案内

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 土木学会環境システム委員会・環境工学委員会では、省エネ・省資源を徹底した循環型

社会の実現に向けて、要素技術やシステム技術の調査、研究を進めております。最近では

自然エネルギーによる温暖化対策が再び脚光を浴びていますが、こうした自然を利用した

要素技術を用いた都市づくりをテーマにシンポジウムを開催いたします。

 本シンポジウムでは、「自然を活用した要素技術」について第一線の研究者に最新の研

究成果をご講演頂き、それをもとに「自然を利用した都市づくり」の可能性と今後の研究

課題について討論したいと考えております。近未来都市づくりに関心のある方は是非ご参

加ください。

   日時: 平成12年6月30日(金) 14:30〜17:30

   場所: 土木学会図書館講堂 (JR四谷駅徒歩3分)

   主催: 土木学会 環境システム委員会・環境工学委員会

   定員: 80名

   参加費:無料

 参加希望者は氏名、所属、連絡先を明記のうえ、「環境システムシンポジ

ウム2000」参加希望と書いて、FAXまたは電子メールで下記までお知ら

せください。

   参加希望の連絡先: 土木学会 環境システム委員会

             TEL:03-3355-3559 FAX: 03-5379-0125

             E-mail: maruhata@jsce.or.jp

プログラム

       【司会 福島武彦(広島大学、環境工学委員会・環境システム委員会)】

 14:30 挨拶・趣旨説明 原沢英夫(国立環境研究所、環境システム委員会幹事長)

講演:「自然を活用した都市づくりの要素技術」

 14:40−  バイオテクノロジーの視点から  大崎 満(北海道大学)

 15:00−  建築材料の視点から       浅枝 隆(埼玉大学)

          討議             萩原運弘(清水建設)

 15:20−  生態工学の視点から       中村圭吾(土木研究所)

          討議             西村 修(東北大学)

 15:40−  −−−− 休憩 −−−−−

 15:50−  都市水循環の視点から      尾崎正明(都市基盤整備公団)

          討議             小尻利治(京都大学)

 16:10−  エネルギーの視点から      濱田靖弘(北海道大学)

          討議             守田 優(芝浦工大)

 16:30−  環境システムの視点から     一ノ瀬俊明(国立環境研)

パネル討論:「自然を活用した都市づくり」の展望

 16:50−  司会:楠田哲也(九州大学、環境システム委員会顧問)

 17:30−  閉会

 終了後、本シンポジウムの成果を受けて、土木学会として大型研究予算の提案に向けて

の取り組みを具体化するためのオープンフォーラムを開催いたします。ご関心のある方は

引き続きご参加ください。同じ会場で17:30−19:00を予定しています。

 

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第28回環境システム研究論文発表会の準備状況と論文集の体裁変更について

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既にご案内が流れていますが、第27回環境システム研究論文発表会が下記の要領で開催

されます。その準備状況と、論文集の体裁の変更についてお知らせします。

1.主催 土木学会(担当:環境システム委員会)

2.開催期日 10月26日(木)・27日(金)

3.場所 名古屋大学

■ 準備状況

論文投稿は5月9日に締め切られました。投稿総数は全文審査部門が85件(うち提案

型論文が10件、企画セッション向け論文が1件)、アブストラクト審査部門が59件(

うち企画セッション向け論文が14件)となっています。全文審査部門の査読は現在進め

られており、7月上旬には審査結果が著者に伝えられる予定になっています。

並行してプログラム編成作業も進められていますが、基本的な編成方針は昨年と同様で

す。十分な討論時間を確保するため、論文審査小委員会では並行セッションが増えること

はやむを得ないと判断しています。

■論文集の体裁変更のお知らせ

論文数の増加に伴い、厚みが限界に達してきたことへの対処と、全文審査部門とアブス

トラクト審査部門の区別を明確にすることを目的として、本年度から論文集を分冊化する

ことになりました。名称は次のようになります。

1)環境システム研究(Selected Papers of Environmental Systems Research)

→ 全文審査部門の論文(提案型論文を含む)を掲載

2)環境システム研究論文発表会講演集(Proceedings of xxth Annual Meeting of

Environmental Systems Research)

→ アブストラクト審査部門の論文を掲載

 

□□ 委員会だより □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

環境システム委員会の平成11年度活動報告と平成12年度活動予定

環境システム委員会幹事長 原沢英夫

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 平成11年4月より、森杉委員長を中心とした新たな体制で環境システム委員会をスタ

ートしました。前期(平成9−10年度)の盛岡前委員長、花木前幹事長がしっかり引い

た線路を着実に進め、第27回環境システム研究論文発表会、環境システムシンポジウム、

地域シンポジウムを開催し、委員会として一定の成果をあげることが出来ました。平成1

1年度の活動を簡単に振り返るとともに、今年度(平成12年度)の活動計画について紹

介します。

1.平成11年度活動報告

 従来の活動と変わった点としては、年度の後半に実施していた環境システムシンポジウ

ム、地域シンポジウムを、前者は平成11年5月、後者は6月と年度前半に開催したこと

です。従来年度後半に集中していた活動が前半に移り、このため比較的準備や広報が余裕

をもってでき、参加者も増える傾向にありました。

 平成11年10月に第27回環境システム研究論文発表会を、森杉委員長のお膝元であ

る東北大学で開催しました。発表会開催のノウハウを引き継いだつもりでしたが、連動し

ている論文集の論文審査とプログラム作成、さらに論文集の印刷、販売、送付と時間との

闘いという面があり、また研究論文発表会前の数ヶ月は参加者数、論文集販売数が気にな

る毎日でした。論文発表会の実行委員会を切り盛りされた後藤委員、林山委員を始めスタ

ッフの方々の活躍のおかげで、参加者数も平年をうわまわる発表会になりました。発表件

数も102件と大台を越え、発表時間、討論の時間をなるべくとりたい、との方針で発表

会場を従前の2会場から、3会場としました。また「提案型」論文を募集し、発表会にお

いては大講堂に参加者が一堂に会し、発表・議論する場を設けました。この形式には賛否

両論ありましたが、提案型論文を世に問うたことが新しい試みでした。また、例年懇親会

は関係者が参加し、それなりに有意義でしたが、今回は会費を安くして多くの参加者にき

てもらいたい、との実行委員会の思惑があたり、80名を越える参加者があり、研究発表

とはまた別の次元での交流を深めることができました。

 さらに、ニュースレターの電子化にチャレンジした年でもありました。ニュースレター

は年3回発行がここ数年続いており、一方でメールの利用者が増えていることから、ニュ

ースレター読者にメールによる送付についてアンケートを2回行いました。その結果も踏

まえ、紙によるニュースレターも捨てがたい面がありますが、ここは思い切ってメールで

いくことに決定し、平成12年度からメールによりニュースレターを送付することとしま

した。

2.平成12年度の活動計画

 平成12年度の活動として、いくつか新たな試みを行う予定です。第28回環境システ

ム研究論文発表会は10月26、27日に名古屋大学で開催します(実行委員長、名古屋

大学の林良嗣教授)。丁度、環境共生学会が28日(土)に同じく名古屋大学で年会を開

催することから、この機会に、第28回研究論文発表会と環境共生学会を連続して開催し、

28日の午後から夕にかけて、共通シンポジウム、懇親会を計画しています。異分野とい

うわけでもありませんが、2つの学会の発表会を連続して実施することで、研究者の交流

が進むとともに、双方の発表会の参加者が増えるのではないかと期待しています。また昨

年にも増して投稿論文数が増加しており、委員会はうれしい悲鳴をあげています。従来全

文審査部門、アブストラクト審査部門に分けて論文を審査し、合本として印刷、製本して

いましたが、100件越えたために物理的に製本が困難になったこともあり、今年は思い

切って、論文集と講演集に分冊化することを決定しました。

 地域シンポジウムについては、京都市他と共催する形をとり、6月10日(土)に開催

する予定です。京都市が進めるアジェンダ21の実践的活動について分科会による討議、

環境システム委員会の森杉委員長、一ノ瀬委員の基調講演をもとに、両者の接点をさぐる

シンポジウムになるはずです。環境システムシンポジウムは、6月30日、土木学会図書

館にて「自然を利用した都市づくり」というテーマで第1回目を(本号にお知らせを掲載)、

そして12月頃を目処に「環境の経済的評価の現状と将来(仮題)」というテーマで第2

回目のシンポジウムを開催する予定です。

 ニュースレターの発行もメールのメリットを活かして、以前よりも頻繁に送付すべく、

体制を整えています。従来どうり委員会活動のお知らせと報告に加えて、環境システム研

究に関わる話題提供など、メールを最大限活用したニュースレターづくりを行う予定です。

また、本年度は現体制の2年めにあたるため、次期委員長と委員を公募し、次期体制づく

りの準備を始めることになっています。本ニュースレターや土木学会誌等(会告は12月

号)で次期環境システム委員長の公募を行う予定です。

 今日、環境システムの守備範囲は確実に拡大しており、分野横断的な議論が出来る場や

情報の発信源として環境システム委員会の活動の重要性が増しつつあります。今後とも委

員会活動に読者諸氏のご理解とご協力をお願いする次第です。

 

□□ 小委員会だより □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

自己評価小委員会の活動状況

産業医科大学 二渡 了

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 自己評価小委員会は、環境システム委員会の委員会活動の自己評価及び論文集「環境シ

ステム研究」の従来の成果のレビューを通して、今後の委員会活動や環境システム研究の

あり方・展望について検討することを目的として、平成11年より活動を行っています(ニ

ュースレターVol.12、No.2参照)。その第1弾として、環境システム委員会の委員経験者

を対象としたアンケート調査を平成12年2月に行いましたので、その結果について報告し

ます。送付数73、回収数39、回収率53.4%でした。

1)委員会組織について

委員会規模:多すぎる(7.7%)、やや多い(41.0%)、適切(46.2%)、

やや少ない(2.6%)、少なすぎる(0.0%)

幹事会規模:多すぎる(2.6%)、やや多い(41.0%)、適切(48.7%)、

やや少ない(5.1%)、少なすぎる(0.0%)

委員の任期:長すぎる(2.6%)、やや長い(0.0%)、適切(82.1%)、

やや短い(12.8%)、短かすぎる(0.0%)

委員会の開催頻度:多すぎる(0.0%)、やや多い(17.9%)、適切(69.2%)、

やや少ない(10.3%)、少なすぎる(0.0%)

2)委員会活動について

研究論文発表会:活発(38.5%)、やや活発(30.8%)、普通(20.5%)、

やや停滞(7.7%)、停滞(0.0%)

環境システムシンポジウム:活発(10.3%)、やや活発(38.5%)、普通(38.5%)、

やや停滞(5.1%)、停滞(0.0%)

地域シンポジウム:活発(7.7%)、やや活発(30.8%)、普通(43.6%)、

やや停滞(7.7%)、停滞(0.0%)

ニュースレター:活発(20.5%)、やや活発(25.6%)、普通(43.6%)、

やや停滞(7.7%)、停滞(0.0%)

テキスト・参考書の発行等:活発(12.8%)、やや活発(25.6%)、普通(30.8%)、

やや停滞(25.6%)、停滞(0.0%)

小委員会活動:活発(7.7%)、やや活発(28.2%)、普通(41.0%)、

やや停滞(15.4%)、停滞(2.6%)

3)今後の委員会活動の分野[各分野に1〜3位の順位をつけてもらい、1位3ポイント、2位

2ポイント、3位1ポイントとして合計ポイントを算出]

1位:研究論文発表会の充実(76ポイント)

2位:小委員会活動の充実(33ポイント)

3位:環境システムシンポジウムの充実(23ポイント)

4位:刊行物の企画・編集(21ポイント)

5位:地域シンポジウムの充実(17ポイント)、以下略

4)今後の環境システム研究の分野[各分野に1〜5位の順位をつけてもらい、1位5ポイント、

2位4ポイント、3位3ポイント、4位2ポイント、5位1ポイントとして合計ポイントを算出]

1位:環境政策(84ポイント)

2位:環境経済(67ポイント)

3位:リスク管理(65ポイント)

4位:都市環境(60ポイント)

5位:環境論理・理念(47ポイント)、以下略

 以上のように、現在の委員会活動について、研究論文発表会及びニュースレターの発行

には肯定的な評価が示されていましたが、テキスト・参考書の発行等や小委員会活動では

「やや停滞」との回答が他より多くなっています。

 また、今後の委員会活動の分野では、研究論文発表会を基本としながらも環境システム

に関する情報提供を求める声が多かったようです。今後の環境システム研究の分野では、

土木学会内における環境システム研究として総合的・統合的な研究課題である「環境政策

」や「環境経済」「リスク管理」といった分野へ多くの回答が寄せられていました。

<今後の予定>

1)ニュースレターの受信者を対象としたアンケート調査

 小委員会では、第2弾として、本ニュースレターの受信者を対象としたアンケート調査

を実施する予定です。その際にはご協力いただきますようお願い申し上げます。

2)第28回環境システム研究論文発表会での企画セッション開催

 今年の研究論文発表会の企画セッションにおいて、小委員会メンバー他による「環境シ

ステム研究」掲載論文の分野別のレビューを行います。これをもとに21世紀における環境

システム研究の展望等について議論したいと考えています。多数の方々のご参加をお待ち

しております。

<自己評価小委員会の連絡先>

産業医科大学産業保健学部第1環境管理学講座 二渡 了

Tel: 093-691-7147 Fax: 093-691-2694

E-mail: futa@med.uoeh-u.ac.jp

 

□□ 連載 □□ 研究室・研究所だより【第1回】□□□□□□□□□□□□□□□□

テレメトリーシステムの開発

 土木研究所環境部 皆川 朋子

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 土木研究所環境部では、生態系保全、生物多様性保全、環境負荷の軽減、省資源・省エ

ネルギー、潤いある生活環境等の観点から、環境の保全・回復・創造に係わる計画論や設

計技術、環境の把握・予測・評価・対策手法等に関する研究を行っています。その中から、

今回、現在開発を進めているテレメトリーシステムについて紹介します。これは、生物の

行動圏、移動経路、種間関係等、生物の生態の解明や、工事による生物への影響の定量的

把握が可能になるなど、今後の環境アセスメントに役立つものと期待されます。

テレメトリー(生物遠隔調査手法)とは、生物に発信器を装着させ移動軌跡を追跡する手

法です。既往のテレメトリー調査は、調査者がアンテナを持ち、発信器からの電波の方向

を把握し追跡するもので、多大な労力がかかること、発信器の電池の寿命が比較的短いこ

と、調査者は1個体しか追跡することができないなど、改善すべき課題があります。土木

研究所では、多個体同時に、連続的に、長期間の移動経路を追跡可能なシステムを開発し

ています。

システムは、インテリジェント発信機、フィールドに設置された複数の受信アンテナ、

それらを制御するための観察局コンピュータから構成されます。例えば、2分間隔で生物

を追跡する場合、観察局から受信アンテナに指示し、さらに受信アンテナから生物に装着

された発信機に指示することで発信機が作動し、電波をアンテナに送り位置が検出されま

す。生物や調査目的によって追跡時間は自由に設定でき、発信器は必要な時にのみ作動す

るため、電池は省力化され、長時間の追跡が可能になります。現在、本システムを宮崎県

北川の高水敷に設置し開発実験を行っています。現在の検出精度は5m×5m、発信器重量70

gですが、今後、発信器の軽量化(2g)を目指し開発を進めています。

 

■ 編集担当から

この連載は、環境システムに関わる研究を行っている研究室または研究所を対象に、最

近の話題や、論文には出てこないような裏話など、他の方々の参考になる話題、あるいは

息抜きになる話題を紹介することを目的としています。内容や編集方針について皆さんの

ご意見をお待ちしております。

 

** 編集後記 ********************************

 「編集」にあたってようやく分かりました。無理を承知で原稿を依頼し、その仕上がり

を待つ間のドキドキ、ピリピリする気分、そしてとても素早い時間の経過。記事が集まっ

て万歳。ホカホカと湯気のたつニュースレターをお届けします。(小)

短い準備時間の中での作業でしたから、どの程度のものができるか不安でしたが、何と

かすべり込みセーフ! 今夜は少しゆっくり寝られそうです。(片)

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