概要  -実践・研究報告−



 

 


報告1

連光寺小学校の特色ある教育活動
         4年生 川は自然の宝箱 〜私たちと多摩川〜 を中心に

 

 

 

羽澄 ゆり子

多摩市立連光寺小学校

本報告では連光寺小学校の特色ある教育について、特に生活科・総合的な学習の取り組みについて述べたいと思う。
 東京都多摩市立連光寺小学校は東京都の南西部、多摩ニュータウンの外れにある既存地域といわれるところに位置する。周囲には都立桜ヶ丘公園や森林総合研究所連光寺実験林などの雑木林が比較的まとまった面積で残存しており、また徒歩圏内に多摩川が流れており一昔前の里山の風景が残存している。
 このように東京都内の学校としては良好な自然環境に囲まれた本校では、1・2年生の生活科で季節折々に近隣の公園で自然と親しむ活動を行い、4年生で多摩川を学習素材にして年間を通じての活動を行い、5年生では近くの谷戸田での米つくり、森林総合研究所の実験林でいろいろな分野の研究者の方に教わりながら雑木林での調査活動、森林センターの方の指導で行う炭焼きなど、地域の里山を体験する活動を行っている。
 驚くほど体験の少ない今の子どもたちの現状から、学習活動は体験学習を基本としており、五感を使って丸ごと自然を感じるところからはじめ、その後各自で課題を設定して解決していく調べ学習を行い、その成果を他の人に発信していくという流れをとっている。
 また、1・2年生では地域の養護老人施設や幼稚園、保育園などとの交流を行い、3年生では学区内の公園や公共施設などを調べ、その後地域で自分たちができることを探して仕事体験を行う活動、6年生では地域の歴史探検や福祉の観点から街を見直す活動などを行っている。地域を支える人との関わりを多く持ち、コミュニケーション能力を高めていくことも、生活科・総合的な学習の時間のもうひとつの大きな学習要素となっている。
 このように、一人の子どもが入学してから卒業するまでの間に、教科学習と平行してあるいは互いに関連づけながら、生活科や総合の時間を通して地域に根ざした学習活動を展開している。この6年間の学習活動をとおして地域の自然に愛着を持ち、また人との出会いを大切にして、生まれ育ったこの地をふるさととして感じ、さらには自ら地域に貢献できる人材を育てていくことを目指している。
 今回の発表では、主に自然と関わる活動の中から4年生の多摩川での教育実践を中心に、いくつかのエピソードを取り上げながら子どもの実態を紹介し、小学校教育と土木とのつながりを探っていく予定である。

 

 

 


報告2

よりよいバス交通の在り方を考え、提案するまちづくり学習

 

大宮 英揮

静岡大学教育学部附属浜松小学校

報告者は、地域社会の一員である子どもが、地域社会をよりよくするために自分たちにもできることがあるということを実感するような学びをしてほしいと願っている。そこで、小学校第3学年の「総合」における一年間の学習を通して、「子ども市長」としてまちのよさや課題を子どもの立場から見つけて、それらをよりよくするためのアイディアを模索し、実行したり提案したりするまちづくり学習を行ってきた。子どもは、学校周辺の地域の様子や公園、地産地消など、様々なまちづくりに関する学習テーマのもとに学習に取り組んできた。
 本報告は、学習テーマの一つとして「身近な公共交通」を取り上げて、実践を行ったものである。単元目標は、「公共交通を利用者にとってよりよくする方法を考え提案するというねらいをもち、地域の公共交通の様子を観察したり、公共交通に携わる人々にインタビューしたりする活動を通して、自分の提案をよりよいものへと修正・改善しようとすることができる。」である。
 子どもは、自分なりの提案を考えて、専門家(大学教授・浜松市職員)に提案するために、実際に公共交通の様子を調べたり、家族にインタビューしたりと、様々な体験的な学習活動を行った。校外学習では、公共交通の様子や利用者の特徴などを調べたり、バス事業者にインタビューしたりしたことを通して、自分の提案をより実際のニーズに合ったものへと修正・改善することができた。
 単元の終末場面では、「子どもにも利用しやすいように、子ども向けの乗車カードやポスターを作るとよい」「子どもは携帯電話や腕時計をもっていないから、バス内やバス停に時計を付けた方がよい」「漫画に載っていたトロリーバスを復活すれば、環境にも優しいし、観光客も来る」など、子どもは、調査したことをもとにしたアイディアを、専門家に提案した。専門家から、「子どもでなければ気づけないよいアイディアばかりだね」「浜松市でも採用したいアイディアがたくさんあったよ」という感想をもらい、子どもたちは、自分たちの提案が受け入れられたことに達成感を味わっていた。
 単元を終えて、ある子どもは、「これからも、もっとバスをよくする方法を考えたい。そして、自分たちでできることや気を付けることができることはやっていきたい」という感想を書いた。このような子どもの表れからも、「身近な公共交通」を学習テーマとして扱うことは、報告者の願いにも、本校の子どもの実態にも適していたといえるだろう。