概要  -ポスター発表−


●ポスター発表ID:2-1
交通・環境教育が児童とその保護者に与える影響に関する研究
今井 唯

谷口 綾子

石田 東生
筑波大学大学院システム情報工学研究科

筑波大学大学院システム情報工学研究科

筑波大学大学院システム情報工学研究科
学校教育モビリティ・マネジメントをはじめとする交通・環境教育は,第一に児童生徒への教育的効果,第二に保護者や地域社会への効果波及(自動車抑制・公共交通利用促進)を目的として実施されている。これまでの研究成果より,交通・環境教育は,児童生徒の態度変容に一定の効果があることが報告されているが,授業を直接受けていない保護者に対する波及効果については,定量的には確認されていないのが現状である。
そこで本研究では,小学5年生を対象として「かしこいクルマの使い方」の講義と行動プランを行う交通・環境教育プログラムを実施し,さらに,この交通・環境教育を受けた児童から,授業に直接参加していない保護者への「口コミ」の有無,ならびにその口コミが保護者の交通に対する態度・行動に及ぼす影響を把握することで,交通・環境教育プログラムの世帯への波及効果を検証することを試みた。その結果,児童の自動車利用抑制への行動意図が活性化され,6 割以上の児童が保護者に授業プログラムに関する口コミを行ったことが示された。また,授業後の行動意図が高い児童ほど保護者に対して口コミを行っているほか,保護者においては,口コミを受けていない保護者よりも受けた保護者のほうが自動車利用抑制への行動意図が活性化されたことが示された。さらに,保護者の子どもを同伴した交通行動において,自動車の利用が減少し,電車の利用が増加したことが確認された。
以上の結果から,交通・環境教育は,プログラムを適切に構成することで,子どもに対して十分な態度行動変容を促すことが可能であり,保護者への口コミを誘発することが示唆された。加えて,保護者の直接的なプログラムへの参加がなくても,子どもからの「口コミ」によって,自動車利用抑制への行動意図を活性化させ,さらに子どもとの同伴行動において特に,自動車利用抑制や公共交通利用の促進などの変化を促すことができることが示唆された。

キーワード:学校教育MM、保護者
●ポスター発表ID:2-2
地方都市の公共交通の大切さをテーマとした総合学習の実践

高橋 勝美

谷口 綾子

藤井 聡

計量計画研究所交通まちづくり研究室

筑波大学大学院システム情報工学研究科

京都大学大学院都市社会工学専攻
モビリティ・マネジメントとは、ひとり一人に対してコミュニケーションを通じて働きかけることで、個人的にも社会的にもより望ましい方向への自発的な意識と行動の変化を促す施策である。そうしたモビリティ・マネジメントの中でも、それを学校教育の現場において、「授業」を通じて小中学生の児童・生徒に働きかけるケースが、「学校教育におけるモビリティ・マネジメント」と言われるものである。一般に、そうした授業では、交通についての種々の問題を児童が考えることを通じて、児童における、「社会」についての理解の醸成と、「社会的に望ましい振る舞い方」の習得を目指したものである。そして、そうした学習を通じて、将来的・結果的に、社会的により望ましい交通行動を実施する成人となることが期待されるものである。
本発表は、これまで十分に学校教育のモビリティ・マネジメントの中で取り上げられることの無かったテーマの一つである「地域の公共交通(バス)の大切さ」を題材とした小中学校の授業の実践例を報告する。具体的には、富士市の小・中学校の総合的な学習の時間の枠組みの中で実施したバス交通に関わる授業について、この授業のために開発し、実際に実施した「授業」の概要を説明すると共に、その授業の効果を評価した結果と、その結果を踏まえた上で、実施上の留意点と課題を報告する。


キーワード:総合学習、モビリティ・マネジメント、地方都市


 

●ポスター発表IDP_2-3

小学校交通環境学習の成果と継続のポイント(京都府久御山町の事例から)

貞松 純子

堀 雅清

豊田 清志

東 徹

松村 暢彦

株式会社地域未来研究所

京都府建設交通部交通政策課

久御山町事業建設部都市計画課

社団法人システム科学研究所

大阪大学大学院工学研究科

 本稿では、京都府久世郡久御山町の小学校において平成17 年度から継続して実施している交通環境学習の成果と継続のポイントについて報告する。継続の過程において、小学校教諭、府や町の行政担当者、学識経験者等のそれぞれの目的や役割分担が確立され、学年や取組内容が広がってきたとともに、現場の小学校教諭が主体的に取り組む比重が高くなっている。

久御山町は、町内に鉄道駅がなく公共交通機関はバスのみに依存し、近隣市の最寄り駅までは路線バスによりアクセスが確保されている。平成16 年度からコミュニティバス「のってこバス」が運行を開始し、まちづくりの目標の1つとして「バスの便利なまち」を掲げており、バス利用促進が課題となっていた。平成17 年度に、佐山小学校で「総合的な学習の時間」(5 年生)を活用し、行政と小学校サイドが試行錯誤の中で、「のってこバス」の乗車体験や学識経験者・町職員による出前講座を通じて、のってこバスのPRに関する提案等の授業を実施した。これらの児童の提案を受け、久御山町ではバス停への花壇の設置や、広報紙に取組結果を掲載するなど、いくつかが実現した。これをきっかけとして、翌年には全小学校(3校)に取組が拡がり、うち東角小学校では生活科で低学年(2年生)を対象としたバス乗車体験等の授業を実施した。平成19 年度以降は、小学校教諭自らが対象児童や授業数に応じて柔軟に企画・展開し、行政や専門家がその要望にサポートする形で、交通と環境をテーマとした授業を毎年行っている。

 

 キーワード:バス乗車体験、交通環境学習、行政と学校の連携

 


●ポスター発表ID2-4

自治体、交通事業者等の連携による公共交通に関する学習機会提供の仕組み

宮地 岳志

榊原 弘之

秦 日出海

山崎 直和

西村 智明

株式会社バイタルリード

山口大学大学院理工学研究科

国土交通省中国運輸局企画観光部

山口県地域振興部交通運輸対策室


株式会社バイタルリード

 本発表では、山口県における自治体、交通事業者、NPOなど地域の組織が連携して、公共交通及び公共交通に関する社会問題についての学習機会(公共交通教室)を学校、高齢者団体などに提供する仕組みについて紹介する。本発表で紹介する仕組みは、1)教室の開催者と参加者のマッチングシステム、2)学習メニュー選択による参加者ニーズにあった学習プログラムの作成システム、3)教室運営、教材準備の負担軽減を図ったクイズ形式による授業進行の3つの特徴を有する。

1)教室の開催者と参加者のマッチングシステムマイカーの普及、人口減少等により公共交通利用が減少を続けている中、公共交通の重要性をPR し、利用促進を図るため、交通事業者や行政により公共交通に関する学習機会の提供が各地でなされている。一方、教育現場では環境問題や過疎化問題等、社会との関わりを題材とした学習機会が求められており、こうした場で公共交通に関する理解を深めることは重要である。山口県では、学習機会の設定は個人の人的ネットワークを頼りに個別交渉により調整が行われ、実施に至っており多大な労力を要する状況にあった。そこで、「みんなが利用したくなる生活交通推進会議(事務局:山口県バス協会、山口県)」が窓口となり

教室の開催者と参加者をマッチングする仕組みを構築した。

2)学習メニュー選択による参加者ニーズにあった学習プログラムの作成システム開催者と参加者が学習プログラムを円滑に作成できるように、公共交通の利用方法、バリアフリー、環境、交通安全、地域の移動手段の確保などの項目を含む学習メニューから参加者の学習ニーズ、学習時間をもとに選択できる方式を導入した。

3)教室運営、教材準備の負担軽減を図ったクイズ形式による授業進行開催者となる自治体、交通事業者は教室運営に必ずしも習熟しているとは限らない。高習熟者でなくとも児童の関心を引き付け円滑に教室運営ができるようにクイズ形式による授業進行を採用した。また、クイズ形式とすることにより教室開催前の準備の負担も軽減される。

以上の仕組みにより、公共交通に関する学習機会提供のための開催者と参加者の負担軽減を図り、学習機会提供の普及促進を図った。

 

キーワード:地域学習の普及、地域組織の連携、公共交通

 


●ポスター発表ID2-5

浜松市における学校教育MM の実践

須永 大介

高橋 直人

計量計画研究所交通まちづくり研究室

浜松市都市計画部交通政策課

 浜松市では、今後の超高齢社会の到来や地球温暖化等の問題を踏まえ、公共交通の活性化が大きな課題となっている。しかしながら近年浜松市においては、自動車利用の増加とバス利用の減少に伴い、バス路線の減便・廃止が進んでいる状況にある。

浜松市は、公共交通利用の意識醸成を図ることを目的として、1)転入者を対象とした転入者MM と、2)児童及びその家族を対象とした学校教育MM を展開している。

このうち学校教育MM では、将来のバス利用者である児童を対象に、交通事業者がかねてより実施していたバス体験教室の機会を活用してコミュニケーションを行った。コミュニケーションにおいては、「バスの乗り方ガイド」を用いてバスの乗り方やバスのメリットとクルマのデメリットなどについて説明するとともに、バス車両への乗車を体験する時間を設けた。

また、バス体験教室開催後、児童に「バス博士認定証」を手渡すとともに、保護者向けの「MM グッズ」を配布し、自宅に持ち帰ることによって保護者に対しても公共交通利用の動機付けを行った。

加えて、効果計測アンケートとして、一部の児童に対してバス体験教室開催前後にアンケートを行うとともに、一部の保護者に対しても「MM グッズ」配布時にアンケートを行っている。

児童を対象としたアンケート調査結果からは、バスの乗り方に関する知識保有状況や環境に関する意識がバス体験教室開催前に比べて向上しており、バス体験教室が効果的であったことが明らかとなった。

また、児童の保護者を対象としたアンケート調査結果からは、家庭にて児童とバス体験授業の内容について話したとする保護者が90%を超え、「MM グッズ」の提供を通じたバス体験授業内容の家族への浸透を実現した。さらに、かしこいクルマの使い方を考えるきっかけとなったと回答した人が50%を超えるとともに、公共交通を実際に利用しようと思う人は70%を超えるなど、プログラムに対して高い評価を得られたことが明らかとなった。

浜松市としては、今後も交通事業者と協力し、バス体験教室を拡大展開していきたいと考えている。

キーワード:バス、児童、保護者


●ポスター発表ID2-6

関東鉄道常総線における交通すごろくの取り組み

岡部 翔太

小林 一夫

渡邊 敬史

中本 洋和

谷口 綾子

筑波大学大学院システム情報工学研究科

常総線活性化支援協議会(常総市企画総務部企画課)

関東鉄道株式会社業務課

茨城県企画部企画課交通対策室

筑波大学大学院システム情報工学研究科

 本プロジェクトでは、茨城県の取手と下館を結ぶ関東鉄道常総線沿線の石下小学校にて、交通すごろくを実施した事例を報告することとする。茨城県は、自動車依存傾向が高い地域であり、近年、鹿島鉄道線や日立電鉄線といった鉄道が相次いで廃線となっている。これを受けて、地域の公共交通を守るため、地方自治体や商工会、交通事業者から成る茨城県公共交通活性化会議が組織されるなど、公共交通維持への動きが活発である。関東鉄道常総線においても、常総線活性化支援協議会が組織され、鉄道の利用促進をすすめており、本プロジェクトは、その一環として実施したものである。

交通すごろくは、自動車を利用すれば早く目的地に着くことができるが、皆が過度に自動車を利用してしまうと、渋滞が発生して社会的コストが大きくなるようにルールが設定されている。これは、個人的利益と社会的利益が対立する社会的ジレンマ構造を表したものである。また、公共交通が不便な地域や高齢化社会を擬似的に想定したルールでのゲームも行っている。

具体的には、上記の交通すごろくのマス目に常総線の駅名を模した「常総線交通すごろく」を作成した。渋滞が増えることにより、CO2 排出量も増えることを実感してもらうために、各児童が選択した交通行動により生じたCO2 排出量をフィードバックすることも試みた。交通すごろく終了後には、「かしこいクルマの使い方」を解説する授業も実施し、これを一セットのプログラムとした。

 

キーワード:交通すごろく、小学校MM


●ポスター発表ID2-7

環境学習支援による土木分野への興味・意識向上のあり方について(仮)

田島 洋輔

宇井 正之

瀬尾 弘美

小松 豊

上野山 直樹

(株)建設技術研究所 東京本社 環境部 北海道環境室

(株)建設技術研究所 東京本社 水システム部

(株)建設技術研究所 東京本社 環境部

(株)建設技術研究所 東京本社 社会システム部 環境システム室

(株)建設技術研究所 東京本社 水システム部

 学生の土木離れが指摘される中、初等教育の段階から“土木”を意識してもらうには、児童達にまず自然災害の恐ろしさや自然環境保全の大切さを理解させ、その上で、それら自然災害や環境保全に対して“土木”が果たし得る役割をアピールしていくことが効果的と考える。また、“土木”に興味を持つ児童を育成するためには、児童のみならず、児童の“土木”に関連する疑問に応答できる先生の育成も重要である。今回の発表は、当社が携わった環境学習支援活動を紹介し、学校支援のあり方について考察する。

【考察】学習支援活動を行う際には、教材や資材などの事前準備、支援者の確保、それらに係る経費などが必要であり、これらの準備や手配を全て学校側が行うことは実質的に困難な状況にある。また、支援活動の内容は、学校側の学習方針や年間指導計画などと整合が図られていないと受け入れ難い傾向がある。一方で、これらの課題に対し、学校長の考え方や担当教諭の対応によって解決できているケースも見受けられる。このような学校は、地域の活動団体や活動家との連携が確立されていることや、年間指導計画で柔軟に対応できるようカリキュラムが組まれているという点が挙げられる(総合学習と教科単元を上手に組み合わせて活用している)。

学習支援にあたっては、有効な教材開発や支援システムの構築が必要と考えられ、児童・先生双方を対象とした出前講座を通して“土木”に対する意識向上を図っていくことが効果的と考える。また、学習支援活動の実施にあたっては、各地域の有識者(活動団体、活動家等)が中心となって行うことにより、地域交流と併せ、支援活動の効率性、継続性を高めることができる。このため、今後は地域連携(ネットワーク)に対する支援のあり方についても考えていく。

キーワード:環境学習、ネットワーク、バンキングシステム

 


●ポスター発表ID2-8

児童生徒のキャリア形成のためのモビリティ・マネジメント教育と教育支援システムの検討

大塚 裕子

高橋 勝美

須永 大介

平見 憲司

溝口 秀勝

計量計画研究所言語・行動研究室

計量計画研究所交通まちづくり研究室

計量計画研究所交通まちづくり研究室

計量計画研究所交通まちづくり研究室

計量計画研究所都市・地域計画研究室

 文部科学省の「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」の答申では、これから児童生徒に必要なキャリア教育を「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育」と定義している。本研究では、従来の職業教育が、単なる職場の見学や職業人へのインタビューだけで児童生徒の勤労観・職業観が養えるものではないことや、勤労観、職業観を育てる際に、単一の価値観の押し付けになってはいけないことを踏まえ、真のキャリア形成のために、小中学校へのモビリティ・マネジメント教育の導入を提案する。

モビリティ・マネジメントは、個々人が「移動」という日常的な行動の主体となる際の、選択と行動をマネジメントするという考え方であり、キャリア形成にもふさわしいと思われるプロジェクト推進型の授業となじむ。本研究では、モビリティ・マネジメント教育とそれを実践するプロジェクト型授業設計を提案し、児童生徒に、理解力、決断力、実行力などを要素とする「モビリティ・マネジメント力」を身につけることをねらいとする。また、このような授業展開に必要な教育システム全体について検討する。本発表では、大学生を対象としたプロジェクト型授業のコンテンツに基づき、小中学校での展開可能性について議論したい。

 

キーワード:モビリティ・マネジメント、キャリア教育、プロジェクト型授業


●ポスター発表ID2-9

福山都市圏における学校TFP展開の有効性とその継続効果の検討

小川 雅博

荒木 勲

光正 義規

荒平 信行

金子 俊之

国土交通省中国地方整備局福山河川国道事務所調査設計第二課

国土交通省中国地方整備局福山河川国道事務所調査設計第二課

広島県東部地域事務所建設局工務第一課

福山市建設局都市交通課

株式会社福山コンサルタント西日本事業部

 福山都市圏では、渋滞緩和による地球温暖化防止を目的に、ノーマイカーデーの通年実施である「ベスト運動」を推進しており、その重要な支援施策の1 つとして、総合的な学習に導入できる学校TFP(トラベル・フィードバック・プログラム)を位置づけ、小学校教育との連携を進めている。学校TFPに期待される主な効果は、@児童の交通・環境に対する意識を高め、長期間その意識を持続させること、A家庭での児童と家族の継続的なコミュニケーションにより、習慣化している家庭でのクルマ利用を自発的に見直してもらう”きっかけ”とする2 点である。本発表では、福山都市圏の3 年間に亘る学校TFPの取組みの内容とその成果について、下記の3点を中心に紹介する。@小学校の「総合的な学習」で導入している、パッケージ化した交通・環境教育の学習プログラム,教材等の紹介。A学校TFPの効果の紹介学校TFPにより、保護者の24 割が自動車利用を抑制するなどの行動変容を行い、その後のフォローアップによりこの割合が56 割に拡大し、1 年後もほぼ継続しているなどの効果が確認されており、その具体的な内容の紹介。B学校TFPを踏まえた総合学習での環境学習の支援内容の紹介学校TFPにより高まった児童の環境意識をより充実させるため、学校TFP終了後に、児童の自発的な学習意欲の向上、学外での発表の経験を目指した総合学習での環境学習の支援を実施している。この活動により、児童に、「公共意識、社会意識の醸成」などの効果が期待できることを確認している。この学習支援の内容と、児童の学習成果を紹介する。福山都市圏では、以上の結果を踏まえ、学校の教育カリキュラムの一貫として学校TFPの展開を図るため、市の教育委員会を通じて各学校への導入について提案した。導入実績は現在4 校まで拡大している。

 

キーワード:学校TFP のパッケージプログラム、環境学習、公共意識・社会意識の醸成

 


●ポスター発表ID2-10

小学校4年から中学1年に渡る体系的な環境交通学習プログラムの開発と実践

〜「歩いて楽しいまち・あらかわづくり」のためのEST学習会 〜


渡邉 敦

依田 京子

森泉 勝也

特定非営利活動法人かながわ環境教育研究会

荒川区環境課

荒川区環境課

 東京都荒川区地域において、平成19 年度から平成21 年度に渡り、ESTモデル事業を実施している。この中での重要なプログラムの一つが、環境省のEST普及啓発事業において取組まれている、南千住汐入地区における小中学校での「環境交通学習集会」である。

この地域には、荒川区立汐入小学校と同区立第三中学校が、小学校、中学校それぞれ一校で、両校は「環境交通学習」のプログラム作りに於いて、協議会や地域の住民やNPOと連携し、プログラムの開発・実践を進めている。この学習のポイントと実践結果の概要について報告する。

この学習の成果は、地域で開催されるイベントやEST協議会で報告されている。平成19 年度には、中学生の活動の成果発表が、地域の大人たちのコミバスの路線検討を促進する原動力となった。単なる学習ではなく、実際の地域の改善効果につながる学習をねらいとしている点が重要な点である。

プログラムは、小学校4年生から、中学1 年生に渡る 一貫した学習で、まちを様々な角度から体験し、好きになり、よりよくしていきたいという姿勢を育むものである。そして、中学1年の学習の最終学年では、『環境交通のまち・あらかわ』をつくりあげるための提案を取りまとめることを到達点とする。

各学年の山場となる学習は、小学校4年では、「ふるさと文化館体験」で、地域の歴史と交通を体験するまち歩き学習を中心とする。小学校5年では、「交通プランを考える」が中心となり、かしこいクルマの使い方を考える。小学校6年では、「グリーンマップづくり」に取組み、地域の課題を発見する。最終年度の中学校1年では、「自分たちの住む、将来のまちの姿を設計しよう!」と題し、6 年生までの体験や知識、まちへの愛着を持って、テーマを設定し、まちの調査を行い「環境交通のまちづくりへの提案」を取りまとめるという学習である。

キーワード:環境交通、総合的な学習の時間、小中一貫教育

 


●ポスター発表ID2-11

地域素材による学習活動について

新森 紀子

藤井 美智子

新保 元康

原 文宏

社団法人北海道開発技術センター

社団法人北海道開発技術センター

札幌市立山の手南小学校

社団法人北海道開発技術センター

 北海道では通常,1 年間のうち4 ヶ月以上を雪に覆われる地域がある.しかし札幌市などの都市ではモビリティ障害に対して冬期路面管理機構が整備されるなど,現在では概ね定常的な都市機能が確保されている.一方で,エネルギー及び環境問題に現される除排雪レベルと住民意識レベルの齟齬による社会的ジレンマなど,防雪機構の拡充のみでは課題の軽減が困難な状況が顕在化し始めており,市民意識や行動の変化を伴う施策が議論されている.これらの背景には,雪寒地帯における生活の在り方への議論として,義務教育課程における雪氷や除雪,冬季生活に関する学習活動の不足も指摘されており,教育現場においても新たな学習活動が検討されつつある.また,雪や寒さを負の面からだけではなく,性質自体への興味や地域文化として取り上げる活動も不可欠である.

本報告では,札幌市において公共問題をテーマとした授業プログラム開発として“除雪”を位置づけた事例から,教育現場における現況調査並びに児童の意識変化について計測したうえで,学習指導要領との整合性や実践面での課題について考察する.また北海道でも特に低温な地域である西神楽において実施したワークショップ事例から,雪や寒さへの認識を広げる活動の可能性について紹介する.

キーワード:雪氷教育