コンクリート委員会の沿革

 

 土木学会コンクリート委員会は,昭和3年9月に「コンクリート調査会」として発足した委員会で,土木学会にある委員会の中でも,大正3年に設置された「土木学会誌編集委員会」に次ぐ,非常に長い歴史を持った委員会です。今日でこそコンクリートは,土木材料の最も重要な位置の一つをしめていますが,「コンクリート調査会」としてこの委員会が設置された当時,現在のような示方書もなく,各所任意にコンクリート施工を行っていたに過ぎませんでした。そこで,この委員会は,まずその統一を目的として示方書の作成を手がけました。最初に公表された示方書は,昭和6年の鉄筋コンクリート標準示方書で,解説も同年公表されています。その後,同委員会は「コンクリート調査委員会」に改組され,この示方書の改定を行うとともに,新たに昭和18年には無筋コンクリート標準示方書の公表をおこなうに至りました。

 戦後,一時中断の形となっていた委員会は「コンクリート委員会」として昭和23年に再発足され,昭和24年度制定コンクリート標準示方書および同示方書解説が作成されました。その後,数回の示方書改定および制定が行われ,委員会名も昭和33年に「コンクリート常置委員会」と改名され,昭和37年に「コンクリート委員会」にもどりました。昭和37年からは,示方書の改定作業は示方書改定小委員会で行うこととし,「コンクリート委員会」は,コンクリートに関する調査研究などの総括的な処置をとる機関として常置することに改められたのです。

 その後,示方書は,昭和49年,昭和61年,平成8年に大改訂が行われています.この昭和61年の改訂では,我が国においていち早く限界状態設計法を取り入れました。平成8年の改訂時には,阪神淡路大震災に教訓が取り入れています。また,平成11年には,耐久性照査型の施工編が発刊されました。そして,平成19年には性能照査型を強く意識した示方書を発刊いたしました。現在,次回の大改訂に向け,新しい標準示方書の形態を議論しています。なおプレストレストコンクリート標準示方書は,昭和53年に大改訂がなされた後,昭和61年に標準示方書に取り込まれています。

 コンクリート委員会の示方書改定以外の活動として,コンクリート工学の発展に伴い多くの小委員会を設置し,専門的に調査研究を進めるとともに,講演会,講習会,シンポジウムなどの開催,指針作成,コンクリート関係の材料の規格化,用語・記号の統一化なども実施しています。さらに,昭和36年以来,コンクリートに関する専門的な研究論文,小委員会の調査研究結果などをとりまとめ,コンクリート・ライブラリーとして出版しており,現在その131号までが発刊されております。また,平成4年からは,コンクリート技術に関する最新の情報を速報の形で出すために,コンクリート技術シリーズの発行を行っており,現在までに85号が発刊されています(平成21年6月現在)。