電気化化学的防食工法 設計・施工指針(案)に関する講習会 Q&A
質問番号 質問内容 回答 回答者
1 電着工法設計施工マニュアル 4.9電着効果の確認【解説】に‶分析用サンプルの形状は透水係数の測定試験の関係から直径10cmの円柱体が好ましく、″とありますが、最近の試験で用いられる、直径約3cm程度の小口径コア(別称 ソフトコアリング)では駄目なのでしょうか。駄目である場合、その理由をお聞かせ下さい。又、サンプル個数は、何を基準としてどの程度の個数が必要と御考えなのか、お聞かせ下さい。 分析用コアサンプリングの形状について特に規定はなく、透水試験機にかけられる形状、大きさのものであれば支障有りません。サンプル個数について規定は有りませんが、2〜3個の分析回数の値で評価するのが通例と考えます。 佐々木
2 1.海砂が使用されている構造物に対して電気化学的防食工法(電気防食工法、脱塩工法)は有効か? 電気防食工法:海砂が使用された構造物においても、電気防食は十分有効です。腐食は、塩化物イオン、酸素、水の存在により、進行します。酸素や水は、コンクリート中に含まれていますが、これらは構造物の表面から、供給されます。したがって、構造物表面から防食電流を供給することにより、酸素や水の存在量の多い(腐食進行速度の速い)領域を電気防食により防食することにより、海砂を使用した構造物の防食が可能となります。なお、構造物断面の奥(コンクリート表面から遠い部分)では、コンクリートに溶存した酸素と水しか存在しませんから、海砂による塩化物イオンが存在しても、腐食進行が極めて少ないと考えられます。                                                                                         脱塩工法:脱塩工法においても有効です。壁体や床版においてはコンクリート両面(両側面や上下面)から脱塩するとなお効果的です。柱では周囲から脱塩することができますが、柱中心部に存在する塩化物イオンを移動させることは難しい。したがって、この場合は塩化物イオンが柱中心部に残存することを考慮して、脱塩後における塩化物イオンの再拡散を検討することになります。なお、内在塩分は飛来塩分の場合より、脱塩率が低下することも考慮しなければなりません。                                                      川俣、芦田
3 2.エポキシ樹脂によるひび割れ注入が実施されている場合、電気防食工法を適用する時にこれを除去する必要があるか? 適用する防食システムにより、除去の必要性は異なります。エポキシ樹脂によるひび割れ注入は、かぶり層に樹脂のカーテンが存在していることになります。したがって、面状の陽極システムの場合、全面からの防食電流の供給が可能となりますから、除去する必要はありません。線状の陽極システムの場合、樹脂のカーテンと平行の線状陽極を設置した場合、樹脂層により防食電流が遮断されてしまい、鉄筋に十分な防食電流を供給することができなくなります。点状陽極についても、同様です。したがって、用いる陽極が線状または点状の陽極システムの場合、エポキシ樹脂による注入を除去しなければなりません。 川俣
4 3.PC構造物でPC鋼材の水素脆化が問題となる電流量はいくらか? 水素脆化が問題となるのは、PC鋼材に含まれる拡散性水素量です。今までの実験や報告では、拡散性水素の重量がPC鋼材に対して0.50〜0.72(wt ppm)で水素脆化が顕在化しています。したがって、拡散性水素量が0.50(wt ppm)未満であれば、水素脆化の問題はないと考えられます。脱塩処理時の電流密度(鋼材表面積あたり)が5A/m2(通常の数倍)で8週間通電した時にPC鋼材に蓄積される拡散性水素量は0.13(wt ppm)であり、0.50(wt ppm)の約1/4です。水素脆化の危険性はほとんどないと考えます。なお、PC鋼材に蓄積される拡散性水素量が積算電流密度に比例すると仮定すると、0.50(wt ppm)に到達するためには、@電流密度5A/m2(通常の数倍)の場合、通電処理として約30週間が必要、A通電処理を8週間とすると、電流密度として約18A/m2が必要となります。しかし、以上のことが言えるのは、腐食がない、あるいは、腐食がごく軽微なPC鋼材の場合です。腐食が激しく破断しそうなPC鋼材や部分的に破断があるPC鋼材では、もっと慎重になる必要性があると考えます。腐食が激しく破断しそうな場合は、現在の技術水準では脱塩や再アルカリ化は適用を避ける、あるいは、破断を前提としてアウトケーブルなどで補強して適用する、のいずれかと思われます。なお、過去の施工実績では、脱塩は4〜8週処理、再アルカリ化は1〜2週処理で行われています。【参考文献】1)土木学会論文集No.613/V-42、pp.189-199、1999年2月、2)土木学会論文集No.620/V-43、pp.119-127、1999年5月、3)土木学会論文集No.641/V-46、pp.231-240、2000年2月 芦田、原
5 4.電気防食+アルカリ骨材反応の被害事例がこれまであるのか?あるとすればどのような被害か? 現在のところ、アルカリ骨材反応を受けた構造物への電気防食の適用事例の報告はありません。 川俣
6 1.指針(案)34ページに、「電気防食工法では、桟橋の鋼管杭に流電陽極などによる電気防食を実施している場合は、干満帯部および海中部のコンクリート中鋼材にも電流が流れるので電気防食工法とこれらの電気防食とを併用することで効果的な防食が可能」とあります。
 これは具体的にはどういうことなのでしょうか。また「鋼管杭の流電陽極による電気防食」についての指針、参考図書等をご提示いただけないでしょうか。
桟橋の鋼管杭に電気防食を実施している場合は、干満帯部および海中部のコンクリート中の鋼材にも防食電流がある程度流れますので、コンクリート面からの電気防食工法を実施する際、これらの鋼管杭の電気防食からの影響を考慮し、たとえば境界部では通電する防食電流 を小さく出来たり、干満帯部においては断続的な通電で防食効果が期待されることなどが あげられます。 なお、実施例が少ないので実際の適用にあたっては、さらに詳細な確認が必要だと思われます。(影響範囲、電位変化、制御技術等)
 鋼管杭の流電陽極による電気防食の指針、参考図書等の例
 1)港湾の施設の技術上の基準・同解説(社)日本港湾協会 平成11年4月  (上巻)P322〜329
 2)港湾鋼構造物 防食・補修マニュアル(改訂版)(財)沿岸開発技術研究センター   平成9年4月 P41〜81
根本
7 2.本講習の趣旨とは合わないかもしれませんが、イギリスのSociety for the Cathodic Protection of Reinforced Concrtre発行のStatus Reportに、カソード防食の設置コストとして、典型的に60-125ポンド/uとあります。日本でもほぼ同様と考えて差し支えないのでしょうか。 1ポンド=190円とすると、11400円〜23750円となります。この設置コストは、陽極を設置するコストであるのか、配線配管や電源システムを含むコストであるのかは、ご指摘の文献を所有していませんのでわかりません。日本での電気防食の施工コストは、条件や施工規模により大きく異なります。これは、塩害を受け電気防食を適用しようとする構造物の立地環境が非常に厳しく、施工条件に大きな制約を受ける場合が多いためです。ご提示の設置コストがどのような条件でのものかわかりませんが、日本国内での電気防食に必要な全ての設置費用は6万円程度といわれています。 川俣
8 3.仮設陽極材として、安価と考えられる電導性塗料等が用いられない理由を教えてください。また、仮設であることから鉄でもかまわないように思えるのですが、なぜ、チタンを用いるのでしょうか。ちなみに再アルカリ工法では仮設陽極材として溶接金網が記載されています。 脱塩処理ではコンクリートに電解質溶液を供給しなければなりません。導電性塗料の場合、十分な量の電解質溶液の供給が確保できないという課題があります。また、脱塩に用いる電流密度は、コンクリート表面に対して標準的に1A/m2(電気防食の約100倍)であるために、導電性塗料ではこのだけの大きさの電流量を安定して供給できないという課題もあります。次に、仮設陽極の材質として”鉄”を使用することは、原理上可能です。ただし、脱塩では通電処理期間が4〜8週間必要ですから、この間の”鉄”の電食を考慮しなければなりません。具体的には、@電食による”鉄”の断面欠損や溶解にどう対処するのか、A”鉄”の電食によって発生する赤錆をどう除去するのか、を明らかにする必要があります。Aの赤錆はコンクリート表面全体に付着しますから、美観上脱塩処理後に赤錆の除去をしなければならない。この作業に要する費用を考えると、”鉄”を使用するメリットがなくなり、むしろ、デメリットの方が大きくなります。そのために、脱塩では通常”鉄”は使用されません。なお、再アルカリ化では通電期間が最長2週間ですから、”鉄”の電食の問題は極めて軽微です。 芦田
9 4.コンクリートの前処理の中で、クッラク処理が必要とあります。通常の部材曲げによるヘアクラックは処理不要と考えてよいのでしょうか。 脱塩では、通常許容されている範囲の0.2mm程度以下のヘアークラックは”ひび割れ処理”を必要とはしません。また、ヘアークラックを通して短絡することも考えられますが、ヘアークラックに露出している鋼材(鉄筋)の面積が微小であることから、短絡しても無視できるほど軽微です。 共通
10 1.指針P16,17の表3.2.1,表3.2.3の中で、脱塩、再アルカリ化工法が既設PCで△(要検討)となっているが、検討項目は何であるのか。 水素脆化が問題となるのは、PC鋼材に含まれる拡散性水素量です。今までの実験や報告では、拡散性水素の重量がPC鋼材に対して0.50〜0.72(wt ppm)で水素脆化が顕在化しています。したがって、拡散性水素量が0.50(wt ppm)未満であれば、水素脆化の問題はないと考えられます。脱塩処理時の電流密度(鋼材表面積あたり)が5A/m2(通常の数倍)で8週間通電した時にPC鋼材に蓄積される拡散性水素量は0.13(wt ppm)であり、0.50(wt ppm)の約1/4です。水素脆化の危険性はほとんどないと考えます。なお、PC鋼材に蓄積される拡散性水素量が積算電流密度に比例すると仮定すると、0.50(wt ppm)に到達するためには、電流密度5A/m2(通常の数倍)の場合、通電処理として30週間が必要となります。しかし、以上のことが言えるのは、腐食がない、あるいは、腐食がごく軽微なPC鋼材の場合です。腐食が激しく破断しそうなPC鋼材や部分的に破断があるPC鋼材では、もっと慎重になる必要性があると考えます。それゆえ、「△(要検討)」はPC鋼材の腐食の程度を検討することです。腐食が激しく破断しそうな場合は、現在の技術水準では脱塩や再アルカリ化は適用を避ける、あるいは、破断を前提としてアウトケーブルなどで補強して適用する、のいずれかと思われます。なお、2001年に「通電と停止を繰り返す方法(拡散性水素を停止期間中で逃がす方法)」で実構造物のPC橋の脱塩が実施されました。【参考文献】1)土木学会論文集No.613/V-42、pp.189-199、1999年2月、2)土木学会論文集No.620/V-43、pp.119-127、1999年5月、3)土木学会論文集No.641/V-46、pp.231-240、2000年2月 芦田、原
11 2.脱塩、再アルカリ化の設計施工マニュアルの中で、PCの水素による影響は小さいと明記されているが、本マニュアルで施工を行えば、問題は100%ないと考えて良いのか。それとも、更なる検討が必要となるのか。 同上 芦田、原
12 3.脱塩工法をPCに適用する場合、断続的な通電が良いとなっているが、そのときの通電間隔等はどのようになるのか。 脱塩処理によってPC鋼材に蓄積された拡散性水素は通電停止後7日で消滅する(コンクリートを通して大気中に放出される)。一方、通電時間2週間以内であれば、PC鋼材中に蓄積される拡散性水素量は比較的少ないことがわかっています。したがって、「通電期間を2週間、停止期間を1週間」を1サイクルとして、この繰り返しを行う方法が考えられます。例えば、4週通電ならば2サイクル、6週通電では3サイクル、8週通電では4サイクルとなります。なお、2001年に「通電と停止を繰り返す方法(拡散性水素を停止期間中で逃がす方法)」で実構造物のPC橋の脱塩が実施されました。【参考文献】は同上。 芦田
13 4.再アルカリ化の講習の中で、電解質溶液でLi2CO3が使用されるとあったが、P126表3.3.2の脱塩の電解質溶液でもLi2CO3が入っている。塩害+中性化の複合劣化の場合、脱塩した後、再アルカリ化をするとなっているが、Li2CO3を電解質に使用することにより、両方の効果を得ることはできないのか。 再アルカリ化でも電解質溶液としてLi2CO3が使用できますが、補助的に使用します。主たる電解質溶液はNa2CO3やK2CO3です。再アルカリ化の原理である”溶液の電気浸透”では、コンクリートの細孔溶液中に塩化物イオンのような陰イオンが多量に存在すると電気浸透が阻害されます。したがって、脱塩処理を先行して塩化物イオン濃度を低減してから、再アルカリ化処理となります。なお、電解質溶液としてNa2CO3やK2CO3を用いて脱塩処理を行うことも可能ですが、脱塩では通電期間が4〜8週間必要ですから、この間のpH値の安定性が問題となります。それゆえ、脱塩と再アルカリ化の溶液を変えています。 芦田、原
14 5.今回、使用したパワーポイントファイルを公開してダウンロードすることはできないか。 パワーポイントファイルをHP上に公開してダウンロードする件は,著作権やファイルの容量の問題もありますので,簡単ではなく、難しいのが現状です。  
15 1.電気防食を続けると、やがて電解質(具体的には何でしょうか?)が減少し、電流が流れにくくなりそうに思えますが、問題はないのでしょうか? 電気防食に必要な電流量は、10〜20mA/m2と非常に微小な電流です。電気防食は、コンクリート中にある細孔溶液を電解液として電流を流します。電流の流れには、電気泳動とイオン伝導があり、イオンの移動を伴なうのは電気泳動です。陽極と鉄筋間にかかる電圧は2V程度であることから、イオンの強制的な移動は小さいと思われます。また、これまでの実績からも電流が流れにくくなる(電圧が上昇する)ことはなく、逆に、鉄筋の再不動態化などの影響により、電圧が減少することのほうが多いようです。 川俣
16 2.電気防食を干満部あるいは海水中で適用した場合、陰極(鉄筋)においてCaCO3やMg(OH)2の析出はないのでしょうか?また、あるとすれば問題はあるのでしょうか? 電着工法と電気防食は、基本的なシステムは同じですから、析出する可能性は考えられます。ただし、電気防食に必要な電流量は電着と比べ、非常に微小であり、どの程度の期間にどのような析出の組織になるのかについては、検討が必要です。析出物はCaやMgであると思われますから、電気防食の電流分布の障害にはならないと考えられます。 川俣
17 3.再アルカリ化工法で、一度腐食し、破壊した鉄筋の不導体被膜を再不動態化させることは可能でしょうか? 破壊され腐食して生成した錆びはそのまま残りますが、錆びの下(錆びとまだ錆びていない鋼材表面との間)に新たな不動態が生成されます。
18 4.脱塩と再アルカリ化を同時に行うことは可能でしょうか?できれば電着も。 同時に行うことは理論的に無理があります。再アルカリ化の原理である”溶液の電気浸透”では、コンクリートの細孔溶液中に塩化物イオンのような陰イオンが多量に存在すると電気浸透が阻害されます。したがって、脱塩処理を先行して塩化物イオン濃度を低減してから、再アルカリ化処理となります。脱塩と電着、再アルカリ化と電着は基本的には可能です。しかし、電着に要する期間が約半年間必要ですから、その間脱塩や再アルカリ化をしつづけることになります。 芦田、原
19 5.なぜ、PC鋼材のみ水素脆化が問題になるのでしょうか?RCとの違い、メカニズムは? 脱塩や再アルカリ化では陰極表面で水が電気分解されています。そのために、水素ガスが発生し、ごく一部の水素が鋼材に蓄積されます。PC鋼材のような高張力鋼で緊張されている場合、この水素が問題(水素脆化)になる場合が考えられます。一方、普通鉄筋のような低張力鋼では元々水素脆化という問題がありません。なお、再アルカリ化は通電期間が最大2週間程度ですから、PC鋼材の水素脆化はほとんど問題になりません。脱塩に関する参考文献を次に示します。1)土木学会論文集No.613/V-42、pp.189-199、1999年2月、2)土木学会論文集No.620/V-43、pp.119-127、1999年5月、3)土木学会論文集No.641/V-46、pp.231-240、2000年2月 芦田、原
20 6.新設構造物に電気防食を適用する場合の通電開始時期はいつでしょうか?また、早期に通電することによる水和反応への影響はないのでしょうか? 新設構造物へ電気防食を適用した場合の通電開始時期は、@建設当初からとA腐食の開始時に分けられます。@の場合、コンクリートを打設してから数ヶ月後からの通電であり、水和反応への影響はないものと考えられます。水和反応は、水和反応初期、概ね打設から2週間程度までの期間に通電による硬化不良等の影響を受ける可能性があります。なお、通電初期からの通電は、鉄筋等の防食対象鋼材が健全な状態にあるため、数mA程度の非常に微小な電流で防食が可能となります。したがって、陽極システムの通電による負担も軽減され、長期に供用できます。次に、Aの場合、腐食のモニタリングが必要となり、モニタリング技術の信頼性が求められます。以上のことから、建設当初から通電を開始することが多いようです。 川俣
21 7.指針(案)の記述の中で、脱塩、再アルカリ化工法において、過度の電流密度を流すと重大なひび割れが発生するとありますが(P126,158)、どのようなメカニズムなのでしょうか?
また、両者のメカニズムが同じであるとすれば、なぜ、ひび割れ発生の電流が、脱塩:10A、再アルカリ化:20Aと違う値なのでしょうか?
メカニズムは同じです。脱塩や再アルカリ化では陰極表面で水が電気分解され、ガスが発生しています。このガスはコンクリート中を通過して大気中に拡散しますが、電流密度が大きくなるとガスの発生量が増加します。そのために、鉄筋周辺でのガスの発生圧力が増加し、ついにはコンクリートの引張強度を超える場合があります。そのために、鉄筋に沿った大きなひび割れ(重大なひび割れ)が出ます。なお、脱塩と再アルカリ化でひび割れ発生の電流密度が異なるのは、通電期間が異なるからです。脱塩は標準的に4〜8週間、再アルカリ化は1〜2週間。 芦田、原
22 8.防食方式の選択において(P70)、構造形式や環境条件などを考慮して、選択するとありますが、具体的な選択方式について、教えてください。 電気防食は、本指針(案)において11種類の方式が紹介されています。それらの各方式は、特徴を有し、適用範囲も異なります。本指針(案)をまとめるにあたり、ご指摘のような電気防食方式の選択について詳細に示すべきとの指摘を受けました。検討の結果、各方式は開発の経緯や実績が異なるため、現状のレベルでは方式選定は好ましくないとの方針を採用しました。したがって、電気防食マニュアルの電気防食方式の選択において選択する上で検討すべき項目を示し、設計者が構造物の環境や劣化程度の特性から、同マニュアル6章各電気防食方式の特徴を参照して選択して戴きたい。 川俣
23 9.防食回路は、電流密度30mA/m2(P69)を想定して設計するのがよいのですか?それとも50mA/m2(P85)以上で設計するのでしょうか?どちらでもかまわないのでしょうか? 防食電流密度は、腐食環境や腐食進行程度によって、大きく異なります。P69に示す防食電流密度は、これまでの国内適用実績の概ねの範囲です。したがって、これを上回る電流密度となることも十分考えられます。P85に示す防食電流密度は、通電試験(E-logI試験)による通電電流密度の範囲を示しています。つまり、この50mA/m2までの範囲で100mVの分極に必要な電流密度の選定が概ね可能であろうと考え、その範囲を示しました。しかし、マニュアルP85の試験手順のなかでも記述していますように、この範囲を越える場合も考えられます。最大電流密度の選定は、直流電源の定格容量や電材の電圧降下の照査に重要であり、過剰な場合には不経済な設計となります。いずれの値を採用するかについては、対象構造物の環境条件を考慮のうえ、決定していただきたいと考えております。 川俣
24 1.脱塩工法 図1.1.1について Na+ 、K+が鉄筋に向かうのは何故でしょうか。電解質溶液(Ca(OH)2, LiOH, LiCO3)には、Na, Kが含まれていないが。Ca, Liは何処へ行くのですか。Clは電解質溶液に溶けて除去されるということですか。 図1.1.1はコンクリートに電気を流したときのコンクリート中のイオンの移動を示しています。 Na+、K+、Cl‐などは元々コンクリート中に存在するイオンですが、Li+は元々コンクリート中には存在していません。Cl‐が陽極へ電気泳動させるのと同様に、Na+とK+が陰極へ電気泳動されます。また、Ca2+も陰極へ電気泳動されますが、Ca2+はコンクリート中には無尽蔵に存在していることから、電気泳動してもほとんど量的な変化が観察されません。また、Ca2+は2価のイオンですので、Na+やK+などの1価のイオンの方が電気泳動し易く、Na+やK+などが優先的に移動します。Cl-はコンクリート表面に仮設した電解質溶液中にイオンとして捕獲され、脱塩工事終了後、産業廃棄物として処理されます。 芦田
25 2.脱塩、再アルカリ化、電着(陸上)の各工法に用いる電解質溶液について、各工法で異なる電解質を用いていますが、選定の基準や種類の違いによる効果の違いについて教えて下さい。参考となる文献があれば、教えて下さい。 @脱塩工法:塩化物イオンを電気泳動させるという意味では、イオンを含む水溶液であれば基本的に脱塩は可能です。ただし、実構造物への適用に当たっては、脱塩工法設計施工マニュアルの「3.2 仮設陽極に要求される性能」を満足しなければなりません。なお、注意事項としては、仮設陽極に使用される電解質溶液は通電により、そのpH値が低下する(酸性側へ変化する)ことです。新しい電解質溶液などを使用される場合には、前もって実験等で要求性能を満足するかどうかを確認されることが重要です。A再アルカリ化工法:再アルカリ化工法設計施工マニュアルの「3.2 仮設陽極に要求される性能」に示されているような電気浸透し、かつ、耐久性のよいアルカリ性の水溶液(pH値≧10)であれば、再アルカリ化が可能です。ただし、水溶液の種類によって電気浸透の速度が異なります。現実的には、電気浸透速度の最も速いアルカリ性水溶液を選択することになり、マニュアルに示されている炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどになります。なお、脱塩と同様に、新しい電解質溶液などを使用される場合には、前もって実験等で要求性能を満足するかどうかを確認されることが重要です。B電着工法(陸上);電解質溶液の種類によってひび割れ箇所の閉塞効果(充填深さ)に多少の違いがあるとされていますが、コンクリートの性状、施工環境、ひび割れ幅など前もって実験等で要求性能を満足するかどうかを確認されることが重要です。 芦田、原、佐々木
26 1.防食工法に伴う効果の継続期間について   脱塩工法、再アルカリ化工法、電着工法により対策を実施した場合、効果の継続期間はどのくらいなのか。(維持管理編に明示されている劣化予測の算定式により、継続期間を算定するしか方法がないのか?→実積ではどうか。) @脱塩工法:鋼材周辺の塩化物イオンが腐食発錆限界塩化物イオン濃度以下であれば、コンクリート中の鋼材は腐食しない。したがって、脱塩工法の目標の一つは、「鋼材周辺の塩化物イオンを腐食発錆限界塩化物イオン濃度以下」にすることですから、目的が満足されていれば、脱塩の効果は充分耐久的であることになります。しかし、現実には、対象構造物全体から塩化物イオンを完全に脱塩することはできません。コンクリート中に塩化物イオン濃度が高い場所が部分的(柱・梁などの中心部、鉄筋間隔が大きい部分、など)に残ります。また、対象構造物によっては、脱塩後にも塩分が供給され続け、外来塩分が再浸透する場合もあります。このような脱塩後にも残った塩分や再浸透した塩分によって、将来、鋼材周辺の塩化物イオンが腐食発錆限界塩化物イオン濃度を超えることが考えられます。これらの予測としては、現在のところFickの拡散方程式や差分法などによる数値解析を行う方法しかありません。このあたりの将来予測が今後の研究課題です。 芦田、原、佐々木
A再アルカリ化工法:コンクリートの再アルカリ化は、1)コンクリート表面からのアルカリ性溶液の電気浸透、および、2)鋼材表面での水の電気分解による水酸イオン(OH‐)の発生、という2種類の作用からなっています。通常用いられるアルカリ性溶液はアルカリ金属の炭酸塩ですから、この水溶液は大気中の炭酸ガスと反応してpH値が低下しても、可逆反応のためにpH値=10.6〜10.8で安定化します(現在の大気中の炭酸ガス濃度=300ppmの場合)。したがって、1)のアルカリ性溶液による再アルカリ化は最悪の場合でもpH値=10.6程度で安定し、鋼材を防食します。再アルカリ化工法設計施工マニュアルの「1.1 原理」の【解説】を参照。一方、2)の水酸イオンの場合は、基本的に大気中の炭酸ガスとの反応は不可逆反応ですから、pH値は低下し続け、安定化しません。例えば、飽和水酸化カルシウム水溶液が炭酸化し続けるのと同じです。したがって、2)による再アルカリ化は、将来、再炭酸化することにより中性化の問題が再発する可能性があります。以上から、再アルカリ化工法には2種類の作用がありますが、少なくとも1)の作用により、鋼材はpH値=10.6程度以上で安定化し防食され続けます。したがって、再アルカリ化の効果は充分耐久的であることになります。しかし、雨水があたるようなコンクリートでは、電気浸透したアルカリ性溶液が洗い流され、コンクリート表面(表面から数mm程度)が再中性化する場合があります。また、常時水に接するような場合も、電気浸透したアルカリ性溶液が流出し、その効果が低減する場合もあります。いずれの場合も、再アルカリ化後のコンクリートの表面処理や維持管理が重要となります。日本では適用後の経過がまだ浅いので、追跡調査を行っている構造物の実績で6年間の効果持続が確認されています。                                                                                                                                                                                                                       B電着工法;海水電解で生成される電着物は海水中に溶解したり海水中の成分と反応して別な性状のものに変質するようなことはありません。電着物は鋼管杭の防食ライニングとして施工後約20年の実績がありますが、電着物の組成比率(Ca/Mg)、pH、比重、細孔構造(空隙量、50%細孔半径)にほとんど変化していないことが確認されています。
27 2.再アルカリ化工法は、塩害対策としては有効な手段ではないのか?(塩害対策としては、脱塩工法との併用が基本原則とあるが・・・)       (塩化物イオンの浸透により不動態被膜の破壊される量⇔再アルカリ化工法による不動態被膜の再生される量 の大小関係では?)  再アルカリ化工法で脱塩処理を行うことは原理的には可能ですが、現実的には難しい状況です。再アルカリ化工法での通電時間が最大でも2週間であるため、脱塩に要する時間が不足しています。脱塩のためには少なくとも4週間以上の通電期間が必要となり、再アルカリ化だけでは不十分です。また、腐食は「塩化物イオンの浸透により不動態被膜の破壊される量⇔再アルカリ化工法による不動態被膜の再生される量の大小関係」ではありません。「破壊」または「再生」のいずれか一方のみです。腐食は[Cl‐]/[OH‐]のモル比によって決まります。水溶液の実験ではモル比=0.3〜0.6程度、モルタルの実験ではモル比=1.7〜2.0程度が腐食開始のしきい値と報告されています。【参考文献】@Gouda,D.A.;"Corrosion and Corrosion Inhibition of Reinforcing Steel: 1-Immersion in Alkaline Solution",British Corrosion Journal, Vol.5, pp.198-203, Sept.1970, ASyed Ehtesham Hussain, Ahmad S.Al-Gahtani and Rasheeduzzafar;"Chloride Threshold for Corrosion of Reinforcement in Concrete", ACI Materials Journal, November-December 1996
28 1.首都高の場合、鋼橋が多く、腐食箇所も多々見られるのですが、この工法はコンクリート構造物に限らず、メタル構造物にも適用できるのでしょうか。(特に電気防食工法) いずれの電気防食工法も、防食対象とする鋼材と陽極材との間になにかしらの電解質が必要です。コンクリート構造物の場合は、コンクリートがその電解質の役目をします。これは、基本原理が防食対象鋼材を陰極として陽極材から直流電流を鋼材表面に供給することであるからです。陽極材と防食対象鋼材が接触した状態では、電気的に短絡しており、防食対象鋼材を陰極とすることはできません。 川俣
29 2.それぞれの工法について、コストはどれくらい掛かるのでしょうか。標準的なものでわかれば教えて下さい。 電気防食工法は、本マニュアルでは11の方式が提案されています。各方式は、それぞれ特徴や適用範囲があります。また、適用する構造物の条件や施工面積により、大きく異なります。例えば、大断面と複雑な断面では陽極設置のコストは異なります。小面積と大面積に適用する場合には、直流電源や配線配管に要する初期費用の施工単価比率が異なります。施工面積1000m2程度、PC箱げた程度の大断面で、概ね6〜7万円/m2程度が目安と思われます。詳細は、各方式保有会社へお問合せください。脱塩、再アルカリ工法は、基本的には、現地を確認してからの費用算出となります。概略、脱塩=6〜8万円程度、再アルカリ3〜4万円/m2(直接工事費)、電着工法4〜8万円/m2程度です。 川俣、芦田、原、佐々木
30 3.JH等、新規構造物に大々的に取り入れているところがありますでしょうか。情報があれば教えて下さい。 電気防食工法:新設構造物への電気防食の適用事例として、新名立大橋(国土交通省北陸地方整備局高田工事事務所)、南浜2号橋(沖縄開発庁南部国道事務所)があります。JH、JRなど他発注機関では、補修事例はありますが新設事例はいまのところ、ありません。                                                                                    脱塩工法,再アルカリ工法:脱塩工法はJR、JH、国土交通省、地方自治体の道路公社などが管理する橋梁・高架橋の床版・梁・橋脚などに採用されています。再アルカリ化工法はJRの高架橋床版・梁、および、地方自治体や民間が管理する建築物(歴史的構造物、博物館、発電所)などに採用されています。なお、いずれの工法も、新設構造物への適用例はありません。                                                              川俣、芦田、原
31 1.再アルカリ化の際の中性化深さの測定に関してお尋ねします。講習会で使用したスライドにおいて、現地で採取したコアの切断面にフェノールフタレイン溶液を噴霧して、中性化を測定しているものを示しておられましたが、中性化を測定する際には、コアを割裂して、その割裂面にフェノールフタレイン溶液を噴霧するのが良いと、確かコンクリート診断士のテキストで読んだ記憶があるのですが、P170の留意点の通りでよいのでしょうか。 基本的には、コアを割裂して割裂面に噴霧する。しかし、現場での確認では、コアを割裂するのは難しい状況です。現場では圧縮試験機などがないため、ハンマー等でコアを叩き割ることになり、うまく割れないケースが多々あります。したがって、発注者の了解の下に、現場ではコアで確認しています。
32 2.コンクリート構造物の耐久性シリーズ「中性化」のP6に”含水率の高いコンクリートの読み取りは、3日後に行う”とありますが、P170の留意点では、水分を与えて測定することとなっており、そのような状態で測定することは、適切なのでしょうか。 コンクリートのアルカリ性を維持する機能の違いによります。一般に、健全なコンクリートのアルカリ性は、セメントに含まれる水酸化カルシウム(固体)によって維持されています。”含水率の高いコンクリートの読み取りは、3日後に行う”は固体としての水酸化カルシウムによるアルカリ性の維持を前提とした場合の測定注意点です。一方、再アルカリ化は、既に固体としての水酸化カルシウムによるアルカリ性の維持が期待できない場合に、アルカリ性水溶液の電気浸透によるアルカリ性維持を目的としています。したがって、液体としてのアルカリ性を測定することになりますので、測定方法に関する詳細は当然変わります。コアを乾燥させると液体としてのアルカリ性を測定することはできません。(再アルカリ化工法は液相の再アルカリ化を目的としていることに御留意下さい。)
33 1.脱塩工法と再アルカリ化工法の仮設陽極方式について、お尋ねします。脱塩工法には、ポンディング方式があり、再アルカリ化工法にはシート方式があります。基本的に脱塩工法と再アルカリ化工法の通電システムは同じものと認識しているのですが、再アルカリ化工法にポンディング方式、脱塩工法にシート方式という方式は適用できないのでしょうか。 ポンディング方式もシート方式も基本的には脱塩工法、再アルカリ化工法ともに使用できます。通電時間(脱塩4〜8週、再アルカリ化1〜2週)と施工現場の状況を考慮して、仮設陽極の方式を選択します。なお、マニュアルでは過去に実績のある方法を御紹介させていただきました。 芦田、原
34 2.特に、記述されていないと思うのですが、電気防食工法と電着工法にもアルカリ骨材反応に対しては、検討を要するのでしょうか。 電気防食工法は、脱塩や再アルカリ工法に比べて、通電電流密度が数十分の一程度と非常に微小です。したがって、通電によるイオンの移動も小さいと考えられます。しかし、この点については、現在、十分な検証が得られている段階には、ありません。したがって、アルカリ骨材反応が懸念される構造物に対しては、その残存膨張量を測定し、今後も反応膨張が進行する場合には、アルカリ骨材反応対策を優先することとしています。電着工法について、数ヶ月間の通電処理期間中に、陰極となる鋼材近傍にアルカリイオンが集積して鋼材の付着力低下を引き起こすことはないことが確認されていますが、アルカリ骨材反応が懸念される構造物に適用できるかどうかは不詳です。 川俣、佐々木
35 講習会の最初の発表(東工大 大即先生)で、日本全国で実施された電気防食の施工件数の報告がありましたが、その中に岐阜県の施工例もあったようでしたが、具体的な情報を教えていただけないでしょうか。 某鉄道会社 某高架橋に再アルカリ化工法を適用しました(120m2)。 対外的な発表はしておりませんので、名前は控えさせて戴きます。
38 1.電着工法と他の工法の境界部の処理方法について教えて下さい。 電着工法は陽極の配置(極間距離、陽極間距離)によって境界線を越えた部分まである程度処理効果が及ぶことになります。そのため、従来工法の補修隣接箇所を電着工法で処理する場合、従来工法の補修後に電着処理するのが隣接箇所の補修効果を高める上で望ましいと考えられます。逆の場合には、境界箇所付近の電着処理効果(表面被覆、表層部ち密化、脱塩効果など)に影響を及ぼさないように留意する必要があります。隣接箇所が電気防食工法などで処理する場合には、電着工法を先に行うのが効果的と考えられます。 佐々木
39 2.橋梁のPC梁の調査・補強について教えて下さい。   (1)PC部材(管内の鋼棒、鋼材)の腐食状況の調査法。例えば、PC部材の他に鉄筋が配置されているが、この様なケースで自然電位法等が適用可能か。)  (2)PC鋼材への電気化学的防食工法の適用について。 (1)PC梁の鋼材の腐食状況の調査として自然電位法等も適用可能と考えられます。一般にPC梁の防食は鉄筋やPC外殻(シース)を対象としますので、その腐食状況の把握は必要です。なお、鋼製シース内のPC鋼棒等の腐食状況を自然電位法で直接的に調査することは困難です。どうしても調査したい場合は、X線レントゲン法、部分破壊調査などが考えられます。 また、コンクリート表面からシース管に小さな穴をあけ、そこにファイバースコープを挿入して目視する方法も考えられます。                                                                                                                 (2)電気防食工法:PC構造物中にあるPC鋼材も、電気防食工法を適用することは十分可能です。しかし、この場合、いくつかの留意点があります。先ず、緊張方式について、ポストテンション方式は、シース管が防食対象なります。これは、PC鋼線自身がシース管の中でグラウトにより充填されているためです。シース管が腐食したり、破けてしまった部分では、グラウトを介してPC鋼線に防食電流が供給されます。ただし、グラウト不良により空隙が生じてしまった箇所は、十分な防食を得ることはできません。プレテンション方式は、PC鋼線がコンクリート中に独立して存在しているため、各PC鋼線を電気的に接続させる必要があります。次に、通電後の維持管理について、PC鋼線のような高張力筋は、水素脆化感受性があることが指摘されています。これは、金属表面に発生した水素が金属組織内部に取り込まれ、脆化を引き起こすものです。したがって、通電管理する場合には、PC鋼材表面で水素の発生が生じない範囲での通電量とする必要があります。この水素が発生するに必要な電流密度は、電気防食に通常用いる電流密度の数十倍から数百倍です。したがって、電気防食を適用したPC構造物が水素脆化による損傷を受けた事例は、国内外をみても報告されていません。しかし、より安全な運転のため、上記通電管理に留意する必要があります。                                                                                (1)根本、(2)川俣、芦田、原
脱塩工法、再アルカリ化工法:水素脆化が問題となるのは、PC鋼材に含まれる拡散性水素量です。今までの実験や報告では、拡散性水素の重量がPC鋼材に対して0.50〜0.72(wt ppm)で水素脆化が顕在化しています。したがって、拡散性水素量が0.50(wt ppm)未満であれば、水素脆化の問題はないと考えられます。脱塩処理時の電流密度(鋼材表面積あたり)が5A/m2で8週間通電した時にPC鋼材に蓄積される拡散性水素量は0.13(wt ppm)であり、0.50(wt ppm)の約1/4です。水素脆化の危険性は小さいと考えます。なお、PC鋼材に蓄積される拡散性水素量が積算電流密度に比例すると仮定すると、0.50(wt ppm)に到達するためには、電流密度5A/m2の場合、通電処理として約30週間が必要となります。しかし、以上のことが言えるのは、腐食していない、あるいは、腐食がごく軽微なPC鋼材の場合です。腐食が激しく破断しそうなPC鋼材や部分的に破断があるPC鋼材では、もっと慎重になる必要性があると考えます。腐食が激しく破断しそうな場合は、現在の技術水準では脱塩や再アルカリ化は適用を避ける、あるいは、破断を前提としてアウトケーブルなどで補強して適用する、のいずれかと思われます。【参考文献】1)土木学会論文集No.613/V-42、pp.189-199、1999年2月、2)土木学会論文集No.620/V-43、pp.119-127、1999年5月、3)土木学会論文集No.641/V-46、pp.231-240、2000年2月