2.4 ツールの整備

2.4.1 情報受発信ツールの検討

 会長提言特別委員会に先立ち準備委員会委員の方々を対象に「学会の情報発信のあり方」と「HPに対する要望の予備調査」を実施した。寄せられた意見を「ツールの整備」という観点から整理すると以下のとおりである。

@報受発信手段としては、「Webの活用」、「マスコミとの情報交換」、「テレビの活用(独自のチャンネルや番組)」、「月刊誌」、「メールマガジン」、「子どもや教育者向け出前講座」など様々なアイデアが挙げられた。

A「社会が抱える課題からのアプローチ」、「タイムリーな情報発信」、「個人の顔が見える情報」、「賛否両論併記」などができる仕組みが必要。

これを、「会長提言特別委員会の活動期間内での実現性」、「開発費用」、「次年度以降の拡張性」、「組織的維持の可能性」など内部的評価項目と「社会が抱える課題に対し柔軟な対応の可否」、「即応性」、「顔が見える仕組みの可能性」など外部的評価項目で評価した結果、「Webを活用した仕組み」を構築すること、具体的には、「社会と会員や会員同士がWeb上で議論する仕組み(電子会議室や掲示板に類似した仕組み)」を作り、現在の学会HPと有機的に結び付けていくことが有効であると判断した。
 

2.4.2 国内外の学会他HPの事例調査

 国内の建築、薬品、電気、機械、化学および医学関係の学会および職能組織の運営するHPならびに英国土木学会(ICE)のHPについて調査を実施し、情報受発信ツールとして持つべき機能について検討した。資料−2に調査結果の一覧を示す。

特記事項は下記のとおりである。

@国内では、職能組織(日本建築士連合会、日本薬剤師会、日本医師会)の方が、社会に向けた取組みが充実している。この背景には、情報の発信が業務(商売)に密接につながっていること、有資格者が全て加入することから会員数が多く、かつ都道府県単位に活動が組織化されていることが挙げられる。

A学術組織のHPコンテンツは、取り扱う分野の紹介や理解を促進するための情報に主体が置かれている。

B国内では、ロビー活動を積極的に行う学術組織は少ない。また、社会との双方向性を意識したHPコンテンツは少ない。

C海外の英国土木学会(ICE)は、the Public(社会構成員)およびICE会員を対象に、政治的に中立で営利を目的としない活動を行っている。ICEの活動・意見を国会議員に知ってもらうために独自のパンフレットを作成・配布するなどロビー活動も積極的に行っている。

DICEのHPは、「一般」、「会員」、「子ども・教育者」など対象者ごとに入り口や内容を変え、利用者のニーズにあった内容となるよう工夫している。また、

EPIN(Professional Interest Network)と呼ばれる分野ごとの公開討論の場をWebサイト上に設け対社会を意識した双方向性のあるサイトを目指した機能を設けている。

 この中で、Webサイトやコンテンツの構築で参考にすべき点は、「サイト利用者の視点の重要性」つまり、「利用対象者を考慮したコンテンツへの誘導方法や工夫(入り口を分ける、分野ごとの整理など)」が挙げられる。
 

2.4.3 既存の学会HPの改善すべき点

既存の学会HPの改善をサイト利用者の視点から検討した。

 一般の方々が、「談合問題」や「道路四公団の民営化の問題」など社会的関心を引く話題を調べる、あるいは「橋の歴史」、「歴史的人物」等の項目を調べる場合、まず思いつくインターネットを利用した調べ方は、「学会」が調査の最初の切り口、キーワードではなく、「Yahoo」や「Google」などの検索サイト、「教えてgoo」などの情報サイトの利用と思われる。したがって、学会HPにある情報は、その時々の社会的関心を引くが事項、キーワードが含まれ、かつ階層の浅い位置で社会の情報検索サイトに内容が見つけられる情報の作りとなっている必要がある。

 一方、先に示した「HPに対する要望の予備調査」に挙げられた学会HPに対する要望は、「データ更新が不足」、「情報が探しずらい」、「トップページがわかりずらい(一般向けか会員向けかわからない)」、「情報交換する場がない」などが挙げられ、社会からのニーズに充分対応できる仕組みとはなっていない。
 

2.4.4 Slashシステムの導入

 新たなHPに求められる機能は、@情報の受信・回答機能(コミュニケーション機能),A政府(総合科学技術会議などを含む)や社会への情報発信機能(リリース機能)、B情報の蓄積(ナレッジマネジメント機能)である。しかしながら、これらの機能を加味したシステムを会長提言特別委員会の活動期間内に全て構築することは、人的資源や費用的にも無理がある。したがって、会長提言特別委員会の活動としては、将来的にこれら要望に対応できる可能性、拡張性を備え、かつコストパフォーマンスの高いシステムを選定し、機能としては、「社会と会員や会員同士がWeb上で議論する仕組み」を実現していくこととした。

 現在のHTML、JAVAの技術やデータベース技術を利用して上記の機能を構築していく事は費用的に困難であることから、セマンティックWeb注)の考え方に基づき、オープンな環境で利用できるSlashを利用することとした(Slashについてより詳細に知りたい方は、http://Slashdot.jp/Slash/ にアクセスしてください)。
 

(注)セマンティックWeb技術

インターネットの世界は「情報の洪水」の状態であるとよく言われている。このような混沌とした状態の中で、利用者が欲しい情報を探し出すには、現在のWebの仕組みだけでは不十分であり、セマンティックWeb技術(コンピュータが理解できるようにコンテンツに意味情報を付加する技術)を利用したコンテンツ作成をする必要がある。この技術を活用することにより、分散化され、深い階層に眠っている情報に容易にたどりつくことが可能となる。


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