委員会報告(土木学会誌1999年10月号掲載)

 

21世紀における社会基盤整備ビジョン並びに

情報発信に関する検討特別委員会設置される

 

はじめに

 5月28日の総会で岡村新会長は、土木工学を通じて日本や世界の発展に貢献する学会を目指すことを強調された。そして、土木事業は計画から完成まで20年近くかかるため、20年先の日本の社会を想定して、今なすべきことを明確にする必要があるとの考えから、岡村会長自らの提言により、「21世紀における社会基盤整備ビジョン並びに情報発信に関する検討特別委員会」が設置された。

 

背景と目的

構造改革期にある現在の日本の社会システムは、あらゆる分野において、将来のビジョンが不透明になっている。少子化・高齢化社会の到来を前にして、今後社会資本に対して十分な投資が期待できないとの認識が広がりつつあるなか、「社会基盤整備は既に十分に行われている」とか、「無駄な社会資本投資が横行している」というイメージが定着することは、あるべき社会を実現する上で大きな障害となり、国民にとって望ましいことではない。一方、公共投資により地域格差を是正する手法は行き詰まりをみせており、大都市と地方の問題に対する解決の方向が求められている。地方分権論が高まるなか、人材が地方から大都市へ流出しており、将来、地方が国全体の活力を奪う構図になる可能性がある。

本特別委員会では、21世紀に望まれる人々の暮らし方、住まい方と、これを支える社会基盤整備の方向を探り、将来ビジョンをとりまとめるとともに、大都市と地方の問題に関する議論を行い、論点を抽出し、解決の方向を模索する。バーチャルリアリティ、インターネットホームページを利用した広報など、新たな形態を模索し、21世紀における社会基盤整備ビジョンを一般社会に情報発信する方法を提示する。

 

委員会

 委員会は岡村会長を委員長に、表−1(委員会構成参照)に示すような構成とし、土木学会会員以外の経済学者、マスコミ関係者、評論家などの方々に委員に加わっていただき、あらゆる視点から検討できるように配慮されている。この委員会は、7月、12月、来年3月の計3回会議を開いて報告をまとめ、活動成果を公表するため、4月にシンポジウムを開催する予定である。

(写真:第1回委員会1999.7.24)

委員会で取り上げる問題に対して土木学会会員だけでなく、一般社会の人々にも関心を持っていただき、議論に参加していただくために、会議を傍聴できるようにするとともに、土木学会ホームページにその内容を全て掲載している。

さらに、大都市と地方の問題に関連して失われた地方の個性を取り戻すことをテーマに、4月のシンポジウムの開催時に、バーチャルリアリティ体験フェアーを併せて開催する。シャッターを下ろしたままの商店が目立ち、人通りがまばらな中心商店街、中止に追い込まれつつある祭りなど、地方都市の空洞化の実情を映像で紹介するとともに、文化遺産を活かした街造り、トランジットモールの試みなど、地方都市活性化の試みを紹介する。一例として、戦後復興に沸く昭和30年ごろの炭坑の街、宇部市の町並みをバーチャルリアリティで再現し、失われた地方都市の個性を発掘し、活性化に役立てる方法を提示する。

 

おわりに

 21世紀に望まれる暮らし方や住まい方と、これを支える社会基盤整備のあり方を探り、大都市と地方の魅力をそれぞれ引き出せるような将来ビジョンをまとめて、地域格差の是正策を、土木学会員だけでなく、一般社会の人々とともに考えていくことが重要である。そのためには、土木学会からの情報発信を行うとともに、土木学会ホームページ(http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jsce2/)などから得られる外からの意見を集約し、会議に反映して行くことにしている。なお、第1回委員会議事内容および今後の議論を進めるためのシナリオについて、すでにホームページに掲載している。会員諸兄のご協力をお願いする次第である。

(文責:梅原秀哲 特別委員会幹事長)


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