21世紀における社会基盤整備ビジョン並びに

情報発信に関する検討特別委員会

1回委員会議事録(速記録)

 

日時:1999.7.24 13:00〜15:00

場所:土木学会本館2階AB会議室

 

午後1時 開会

○梅原幹事長 定刻になりましたので、ただいまより「21世紀における社会基盤整備ビジョン並びに情報発信に関する検討特別委員会」第1回委員会を開催いたします。

 まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 座席表が1枚、それから、クリップでとじてありますけれども、クリップを外していただきまして、議事次第が1枚と、資料1−1として、当委員会の設立趣旨書と委員構成、資料1−2として大都市と地方の問題に関する基礎資料、そして資料1−3、1−4、1−5は、欠席されておられます田中委員と、橋本委員と、丹保委員からの意見です。

 皆様、資料がございますでしょうか。

 それでは、次に出席者の紹介ですが、第1回目ですので、委員の方々に自己紹介をお願いいたしたいと存じます。なお、お手元の資料1−1の委員構成の順番にお願いいたします。

 本日ご欠席の委員の方々は、田中委員、丹保委員、橋本委員、三木委員です。

 それでは、自己紹介を委員長からお願いいたします。

○岡村委員長 33年間東京大学に勤めておりまして、この4月から高知工科大学に勤務することになりました岡村でございます。

 現在、土木学会の会長を、この6月から1年間の予定ですることになっておりまして、この委員会も、特に私が望んでつくっていただいた委員会でございますので、よろしくお願いいたします。

○伊藤委員 大成建設に勤務しております伊藤でございます。

 ここには常務取締役と書いてありますけれども、はやりの執行役員制度になりまして、ただの常務でございます。それから、土木学会理事と書いてございますが、ことしの6月まで務めさせていただいておりまして、今はただの土木学会会員でございます。(笑)いつも批判を受けております業界の代表ということになりますので、ひとつよろしくお願いいたします。

○窪田委員 埼玉大学におります窪田と申します。

 土木学会土木の日実行委員会幹事長という立場で委員を仰せつかりました。11月18日が「土木の日」ということになっておりまして、土と木という字をばらしますと十一と十八という字になるということです。その日から1週間が「暮らしと土木の週間」ということで、その企画を全国の地方の幹事の方々と一緒に考えている実行委員会でございます。何かお役に立つことがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

○清原委員 朝日新聞の政治部で、国土庁の記者クラブに詰めています清原と申します。 70年に入社をしまして、振り出しの九州に8年間おりまして、それから東京の政治部へ来まして、いろいろなところを回りましたが、最後にデスクをやった後、僕はもう一度現場で書きたいと希望しまして、それが認められた形で、今は、土地問題とか、首都機能移転、土地問題の関連で住宅、そういうところを主に手がけております。よろしくお願いいたします。

○黒田委員 NHKのアナウンサーでございます黒田と申します。

 きのうもちょうど、土木に関連するのかどうかわからないのですけれども、自然の川が非常に動植物の生態に合わなくなっているというので、ダムそのほかを批判をするような番組をやっておりまして。でも、私自身はその功罪がまだよくわかっておりませんで、本日も、委員の先生方を拝見して、場違いなところに来てしまったような感じで、大変いたたまれなく思っておりますけれども、いろいろ勉強させていただこうと思っております。よろしくお願いいたします。

○鈴木委員 道路環境研究所の鈴木でございます。

 こちらへ来る前は昨年まで道路公団で約8年間、建設省で30年間ずっと公共事業の担当をしておりました。現在社会資本整備が厳しい状況になっておりますが、本委員会でいろいろお話を聞かせていただきたいし、私も意見をいわせていただきたいと思っております。よろしくお願いします。

○竹内委員 竹内と申します。よろしくお願いします。

 昨年4月から東京大学の社会基盤工学というところで助教授をやっておりまして、いまだに「土木」という言葉が、私は余り抵抗がないのですが、私の周りの人は皆さん余りお好きじゃなくて、早く土木をやめてしまえみたいなことをいわれていますが、いまだにやっております。

 私は、小さな町がきれいな国というのはいいなと思っていまして、ヨーロッパのいろんな町に行っては、どうしてこうきれいなんだろう、そういう印象をたくさん受けておりまして、やっぱり目に見えるところがきれいな形をつくるにはどうしたらいいんだろうかと、ずっと疑問に思っていまして、そういうことで今いろいろ社会基盤について猛勉強を始めたところでございます。勉強としては大変おもしろくて、えらくはまっておりまして、毎日5〜6時間は勉強しております。そういうことで、今後ともよろしくお願いします。

○合田委員 横浜国立大学の合田でございます。

 大学といいましても、大学に移ったのが12年前でして、それまでは運輸省の港湾技術研究所で研究の仕事をしておりました。専門は海岸工学といいますか、海の波、あるいは防波堤、港の建設、などの研究が専門でございます。土木学会に関しては、伊藤さんと同じように、この5月末まで2年間、理事として会員支部部門担当ということでやってまいりました。ひとつよろしくお願いします。

○梅原幹事長 どうもありがとうございました。

 続きまして、幹事の自己紹介に移ります。委員構成の順番にさせていただきます。

 なお、本日ご欠席の幹事の方々は、太田幹事と渡辺幹事です。

 幹事長を仰せつかっております名古屋工業大学の梅原と申します。よろしくお願いいたします。

 私は岡村委員長とは、20何年前、先生の第1期の学部卒論生及び大学院生として、いろいろ教えていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。

 それでは、大熊さんの方からお願いいたします。

○大熊幹事 財団法人計量計画研究所の大熊と申します。

 主に都市交通計画ですとか地域開発の方の仕事を行っております。よろしくお願いいたします。

○小原幹事 幹事を務めさせていただいております運輸省港湾局の小原と申します。

 港湾あるいは空港関係という仕事に、これまでずっと携わってまいりました。よろしくお願いいたします。

○北河幹事 文化庁建造物課の北河と申します。

 4月から勤務しております。職場では重要文化財、登録文化財などの指定、登録にかかわる仕事をしています。よろしくお願いします。

○木村幹事 大成建設の木村と申します。どうぞよろしくお願いします。

 いわゆるゼネコンでございまして、振り出しは設計をやらせていただいて、それから現場もやらせていただいて、多少研究的な仕事もやらせていただき、現在は営業ということをやらせていただいておりまして、いろいろなことをやってまいりました。よろしくお願いします。

○重山幹事 高知工科大学の重山と申します。

 専門は景観デザインでございます。よろしくお願いします。

○芝原幹事 三菱総合研究所の芝原でございます。

 ここにあるとおり、社会インフラ一般すべてに携わっております。よろしくお願いいたします。

○中井幹事 東京大学で助手をしております中井と申します。

 景観の研究及び土木構造物あるいは土木空間にかかわるデザインを専門としております。よろしくお願いいたします。

○深澤幹事 建設省技術調査室の深澤と申します。

 私は、現在、主に公共事業の入札契約制度あるいは品質管理ということを担当しております。前任地がたまたま出向で静岡県の掛川市というところで3年ほど助役をやっていまして、そんな関係もございまして、特に地方の小都市の問題には非常に関心があります。いろいろと勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○細村幹事 鹿島建設の細村と申します。

 2年前まで現場におりまして、現在は営業の企画の方をやらせていただいておりますが、今回のこの委員会、非常に勉強になると思いますので、よろしく勉強させてください。

○和久井幹事 社会システム研究所の和久井です。

 都市計画とか道路計画の方の仕事をしております。よろしくお願いします。

○堀井幹事 東京大学の堀井でございます。

 委員長の補佐役ということで前の方に座らされておりますが、ひとつよろしくお願いいたします。

○梅原幹事長 どうもありがとうございます。

 それでは次に、岡村委員長より、ごあいさつとともに、本特別委員会の趣旨説明をお願いいたします。

○岡村委員長 この長い名前の委員会は、1年間限りの特別委員会です。予定としましては、来年の4月にシンポジウムを開いて終わりという予定でございます。私の任期中限りの委員会だということが、まず1点でございます。

 2点目は、委員の半分を土木学会の会員にお願いして、残りの半分は土木学会の会員以外の方にお願いしたいということでした。ほぼそれは満たされているように思っております。

 そこで、何をするかということですが、社会基盤整備は長期的視点を持って行うことが不可欠です。現在は世界全体の変化が非常に激しい時代で、日本の社会システムそのものも転換期に来ております。したがいまして、非常に先が読みにくい時代にあります。しかし、その中で社会基盤整備をするとすれば、そうはいっても、先を読んで社会基盤整備を行わなければいけないのではないかと思っております。

 今、確実にいえることは、人口がどのように変化していくか、日本については、かなり正確に予測がされております。当然20年後ぐらいまでの予測は、相当な精度で日本全体はできることになっておりますが、それが移動するという予測も、既にされております。どう移動するかも、いろいろな仮定のもとにされております。それはかなり確実なことであります。

 2つ目は、国際化といいますか、ボーダーレス化が、今後20年間で相当に進むはずだと思います。したがいまして、そのことが社会基盤整備に組み込まれていく必要があるのではないかと思います。

 3番目が、情報化社会といいますか、情報の面の革新的な進歩が、今起こりつつありますので、20年後にどのような生活を営み、どのような職場があるかといったようなことは、ある程度推測はできるのかもしれません。非常に難しいとはいいながら、そういう時代になるということは、ほぼ確実であるのではないかと思います。したがいまして、そういった考慮を持った社会基盤整備が必要ではないかと思います。

 今までのことは、恐らくすべての方が常識として持っていることだと思います。ここから私のかなり個人的な考えでありまして、世の中に余り一般化されていないかと思いますが、日本の地方が日本全体の足かせとなる可能性が非常に高いと、感じております。これはこのままの形でいけばという前提です。したがって、それに対して何らかの方策をとる必要があると思います。日本の足かせとなるという内容につきましては、今申し上げない方がいいのではないかと思いますが、非常に深刻な問題だと感じております。 最後に、これはもっと私の個人的なことですが、私は土佐高校という高校を42年前に卒業したのですが、それ以来の300人の卒業生の行き先を調査してもらいました。そうしますと、ある時期、40%台がありますけれども、それを除いては平均して約50%が、いまだに県外にいます。それが既に40年間続いております。卒業生の半分が外に出ていくということが、ずっと続いております。ただし、高知県全体の人口流出からいえば、そんなにはいってないという現状であります。こういうことがそのまま続くと、地方が日本の足かせになる原因になると感じています。

 まだほかにもありますけれども、今、我々が社会基盤整備を考えるときに、そういう視点を組み込んでおかないといけないのではないかという気持ちを持ちまして、この1年間、そういったことに対して答えを模索したいというのが、私の個人的な思いです。

 多くの委員の方あるいは幹事の方は、現在、社会資本整備、あるいは社会基盤整備がむだだとか、要らないとか、いろいろな正確でない風評が世の中に飛び交っておりますので、それに対して我々として正しい考えをまとめて、それをいい形で世の中に発信をしたいという思いも非常に強いところがあります。それをこの1年間でできればというのが、この特別委員会の趣旨だと私は理解しております。いろいろ表面的には書いておりますけれども、そういった気持ちでこの委員会をつくっていただきました。 ただ、それはきっかけでありまして、実際にこの委員会のメンバーの方がお考えになったことを取りまとめて、この特別委員会の結論というふうに最終的にはすることになると思います。何分よろしくお願いいたします。

○梅原幹事長 どうもありがとうございます。それでは、これからの進行を岡村委員長にお願いいたします。

 

○岡村委員長 それでは、早速ですが、お手元の資料の説明を、取りまとめていただいた堀井さんの方から、簡単にお願いします。

○堀井幹事 まず、お手元に資料1−2というのが、A4をとじたものであるかと思います。こちらは、本日、大都市と地方の問題に絡みまして、どういう論点が存在するのか、どんな考え方があるのかということを議論するために準備した資料でございます。世の中にいろいろな議論がありますが、そういうもののもととなっているものを、とりあえず一通りそろえてみたものでございます。皆様よくご存じの内容が多いと思いますが、復習も兼ねて、ざっと一通り見させていただきます。ただし、時間がございませんので、軽くご説明をさせていただきたいと思います。

 ページをめくっていただいて、まず1として、「高齢化・少子化」で、これはこういう議論の発端となったものでありますが、左側の1−1、65歳以上の人口が各国でどのように変化しているかをあらわしたものでありまして、高齢化が急速に日本で進行し、やがて25%に達するということをあらわした図であります。右側は、高齢者の比率と国民負担率の推移で、税金と社会保険料を国民所得で割った国民負担率は、一般的傾向として、65歳以上の人口比率が高まるにつれて高まっていくということで、このままいって25%に達するころ、果たして投資余力があるだろうかということが議論の発端になっているのかと思います。

 次のページをめくっていただきまして、1−3でございますが、少子化・高齢化が進んで、生産年齢人口、15歳から64歳の比率がだんだん減っていくということでありますが、日本全体でどういう分布をしているのかを2015年の予測値としてあらわしたものであります。やはり大都市近辺は生産年齢人口の比率が高く、子供と老人を支える人の数の比率が高いということをあらわしたものであります。

 続けてページをめくっていただきまして、これはたまたまあるところということで山口県を抽出いたしましたが、全国いろいろな県で同様の傾向が見えますが、人口規模別に各市町村で生産年齢人口の割合と総人口の増加率の関係を示したもので、人口規模の少ないところがやはり人口が減少し、生産年齢人口の割合が減っているということをあらわした図であります。

 その中でA町というものの将来推計人口を下の1−5であらわしておりますが、棒グラフの左が男性、右が女性で、1990年から2025年まで、人口がこのように推移していくことが予測されております。これはいろいろな場所で多く共通して見られる傾向であります。 その次の5ページでございますが、これは「人口移動」で、まず2−1として、1954年から現在に至るまで、どのように推移してきたかをあらわしております。戦後の高度成長時代に地方から3大都市圏に人口が流入するという傾向が、全総等の努力によって変化し、現在はこのような状況になっているということを概括的にあらわしたものであります。

 下側の2−2は、現在、人口がふえるところもあり、減るところもあるのですが、それを3大都市圏と地方圏と分けて、地方圏の中も市町村の人口規模で分けてみたものでありますが、人口規模の小さい5万から3万、あるいは3万を切ったところで人口の減少が激しいということを示しております。

 次のページは、その地方中小都市の空洞化を扱った資料でありまして、左側は世論調査の結果で、町の中心部に活気がないと感じられているのは小都市に特徴的であるということをあらわしておりまして、右側の3−2は大型店舗の出店先をあらわしたもので、昔は中心市街地、駅前の商店街とか中心の商店街に大型の店が出店していたのが、最近はそういうところでは大型の出店が少なく、郊外の幹線道路沿いの大型店が非常に目立っているということをあらわしておりまして、これは中小都市の空洞化の原因であるという指摘があるものであります。

 ページをめくっていただきまして、次は「郡部の高齢化」ということで、高齢化自身は日本全国で見られる傾向でありますけれども、その顕著な場所はやはり郡部にありまして、左側は3255ある市町村レベルで、その市部と郡部に分けて、65歳以上の高齢者の比率を10%から15%というように分けて市町村の数を書いたもので、市部のレベルでありますと、15%未満というところで大体50%ぐらいでありますが、郡部になりますと、20%以上というところで6割程度を占めてしまうということであります。

 さらにページをめくっていただきまして、こちらは「地方財政問題」に関する資料でございまして、よく指摘があるように、地方の借金が近年特にふえているということであります。

 その右側は、その財源の補てんがどのようになされているかということですが、地方交付税の増額あるいは地方債の増額ということで賄われていて、大きな部分は借金という形になっているということであります。

 次のページをめくっていただきまして、左側、5−3でございますけれども、普通建設事業費の内訳ということで、補助事業費に比べて単独事業費の増加が非常に目立つ。経済対策ということで地方債を発行することによって単独事業がかなり行われているという、地方財政問題のことをあらわした図であります。

 右側は、国別に比較した税金の地方と国との比率、そして、その公的資本の形成に使われている部分と最終消費に使われている部分の比率をあらわしたもので、ほかの国と比べますと、日本は地方で使われている比率が高いこと、それから、地方で使われている中でも公的資本形成が非常に大きいということがあらわれている図かと思います。

 さらにページをめくっていただきまして、地域格差の是正ということでこれまでいろいろ努力がされてきたわけですが、その結果としてどういうことになっているかということで、これもたまたま静岡県を選びましたが、各市町村レベルで1人当たりの歳出額を計算し、それを色分けして表示したものであります。色が濃いところが1人当たりの歳出額の高いところ、白いところが少ないところで、その右側には横軸に人口規模、縦軸に1人当たりの歳出額をとっておりますが、人口5万以上のところでは大体30万円から40万円程度の1人当たりの歳出額ですが、人口規模が少ないところは1人当たりの歳出額がふえていく。そして、その下は、自主財源比率が減っていくという特徴をあらわしたものであります。 次のページは、これを全国レベルで見たものでありまして、同様に人口規模の少ないところが1人当たりの歳出額が大きくなっているという傾向を示しております。

 さらにページをめくっていただきまして、12ページですが、不況・雇用対策ということで公共事業をされているわけですが、7−1は、先日の朝日新聞に載っていたものでありますけれども、公共事業、社会保障、医療・保健を比較して、その経済効果と雇用創出ということで、どういう比較になっているのかをあらわした図であります。

 下の7−2は、建設を初めとしていろいろな産業別に、自産業内及び他産業への波及効果がどういう比較になっているのかということをあらわしております。

 右側の7−3は、地域別の建設業就業者の比率をあらわしておりまして、地域別、ブロック別に分けたものであります。例えば北海道の場合は、10数%の比率となっておりますけれども、年を追うごとにその比率が高まるという傾向は全国的に見える。すなわち、公共事業に依存した体質が強まりつつあるということをあらわした図であります。

 さらにページをめくっていただきまして、「社会資本整備水準」ということで、左側は、下水道等を初めとして、その普及率が各国と比べてどうかをあらわした図で、例えば下水道の普及率とか、1人当たりの都市公園面積とか、あるいは自動車保有台数当たりの高速道路延長等は、ほかの先進国と比べて日本はまだ水準が低いということをあらわしている図であります。

 同様の傾向は、右側の8−2で、地方自治体、産業界にアンケート調査をした結果として、整備が不足と思われるものがどのくらいの比率で上がっているかということをあらわした図であります。

 さらにページをめくっていただきますと、「国際競争力」ということで、近年、アジアの諸国と比較して日本の社会基盤の水準がどうであるか、よく議論されますが、そのときのもととなっている貿易貨物取扱量、あるいは空港のデータ、あるいは空港、港湾と高速道路の接続状況をあらわしたものでありまして、日本が国際競争力を保つためには、もう少しインフラの投資が必要だというようなときに使われる資料であります。

 その次のページは、「社会資本の維持更新」についてでありますが、多くの社会基盤施設が更新時期を迎えて、メインテナンス等にかなり費用が必要になってくるということをあらわしている図であります。

 さらに、最後のページですが、11として、「重点投資分野」ということで、今後どういう分野に重点投資が必要であるかをまとめた資料を最後につけ加えさせていただきました。 以上が、大都市と地方の問題に関するさまざまな議論のもととなっている基礎的なデータということでございます。

○岡村委員長 どうもありがとうございました。これから委員の皆様方からご意見をいただくことにいたしたいと思いますが、まず、きょうご欠席の田中委員、橋本委員、丹保委員のご意見をいただいておりますので、その説明を簡単にお願いします。

○堀井幹事 資料の1−3ということで、田中委員からいただきました資料でございます。 田中委員は、大都市と地方の問題に関して論点として重要と思われるものをお伺いしましたが、「公共事業の投資効率」ということを論点として挙げておられます。その背景としては、少子化の時代、投資余力が次第に減少することから、大規模な公共投資を実施できる期間は今後10年程度しかないのではないかということで、公共投資を投資効率の高いプロジェクトに重点配分するべきである。その配分先の例としては、例えば大都市における都市基盤整備事業というものは、内需拡大の連鎖を通じて最終的な税収の増加が見込まれるということから、重点配分の有力候補になると主張しておられます。

 さらに、公共投資を国民の納得を得たもの、投資効率の高いものとするために、その計画の策定、執行に当たって国民に対して説明可能なものであること、社会的便益が社会的費用を上回るものであること、投資すべき投資プロジェクトを重点的に行うこと、この3つの原則を守るべきであるとご主張しておられます。

 続きまして、橋本委員でございますけれども、橋本委員は、ビデオ参加することに快く応じていただきまして、先日取材に行ってまいりました。その取材の内容をメモにまとめたものが資料の1−4でございます。

 

 (ビデオ参加)

○堀井幹事 本日は、お忙しいところを時間をとっていただきまして、まことにありがとうございます。少子化・高齢化の時代を迎え、投資余力の減少が予測されている昨今、公共投資のあり方が問われております。公共投資を投資効率の高いプロジェクトに重点配分するべきだという主張がなされておりますが、問題は国のあり方に大きくかかわっておりまして、さまざまな視点からの議論が必要だと思っております。

 大都市と地方の問題には、さまざまな視点から多くの論点が存在するように思われます。知事は、どのような論点が重要であるとお考えでいらっしゃるでしょうか。

○橋本委員 大都市への投資と地方への投資の割合をどう考えるかという意味のご質問だと思うのですけれども、それぞれいろんな分析のポイントはあると思います。ナショナル・ミニマム、国土の均衡ある発展という観点から見るとか、地域の雇用の観点から見るとか、また、国際競争力という観点から見るとか、さまざまな分析のポイントはあると思うのですが、あんまり細かい分析のポイントにこだわってしまうと、今、学問研究が専門化し過ぎて、細分化し過ぎて、いろいろな問題が起きてきていることと同じ隘路に落ち込む危険性があるのではないかと思います。

 というのは、それぞれの分析のポイントによって、大都市に投資をすべきだ、地方にも投資をすべきだという判断が異なってくるだろうと思いますし、また、地方には地方の思いで、また、大都市には大都市の思いで主張したいという方がおられて、それぞれの方が各分野別の分析を手前勝手に使ってしまわれる傾向があるのではないか。ナショナル・ミニマムというポイントでいえば、地方からいえば、国土の均衡ある発展といっていながら、そうなっていないではないかとか、また、この景気状況の中で、国がどんどん公共事業投資の予算を組んでも、地方でそれが組まれなければ実際に生きてこないのではないかというような、自分にご都合のいい言い方をするし、また、大都市の場合は、今のようなばらまき的な投資を続けていては都市の国際競争力が落ちていく、そのことがひいては地方も含めた国全体の経済力をおとしめるんだという、ご自分に都合のいいといってはいけませんけれども、そういう視点からの議論になって、結局は大都市対地方の対立のような議論に、最近なってきているのではないかと思うのです。

 税金でも、2対1で、大都市の方が2を支払い、地方が1を支払う。使っているのは地方が2で大都市が1だ。この問題はどうかというような大都市と地方の対立とか、また、これから地方に道路をつくる必要があるだろうかというような、大都市と地方の対立という形で議論されています。

 少し前置きが長くなりましたが、非常に抽象的なんですけれども、私はもう少し全体をバランスよく見ていくという視点が必要ではないかと思います。各分野別の分析は参考資料としては必要だと思いますが、全体的には、過去の歴史、そして、これからの長期的な視点を踏まえてバランスを持って判断していくことも必要ではないかと思うのです。

 例えば、税金の払い方と使い方についても、確かに今の時点の局面だけを切り取っていえば、都市が2を支払い、しかし使っているのは1だという理屈は、そのとおりだろうと思います。しかし、都市で支払っている人たちが地方から出ていっているとすれば、その方々のためにかけた教育費、これは行政がかけた教育費もありますし、地方にいる親御さんがかけた教育費もあると思いますけれども、そういうものがそのまま回収されずに都市に出ていって、都市の税金として納められている面もあろうかと思います。

 また、道路の問題でも、高規格の幹線道路の整備という歴史を見てみれば、オリンピックや万博などがあって、まずそういうようなイベントをきっかけにして、需要の多い地域を中心に進めましょう、地方は少し後回しにしましょうということで20年、30年たってきて、今になって地方には需要がないから、高規格道路の基本計画も、もうなしにしましょうというのは、いささか今の局面だけを切り取った議論ではないか。やはり過去のこれまでの歴史というものを踏まえて、国としての骨格をどうしていくかという議論は当然必要ではないかと思って、要は、もう少しバランスを持った議論があっていいのではないかと思います。

 重点的な投資をして効率を高めるというのも、これはおっしゃるとおりだと思いますが、だからといって、都市だけに投資を集中していいだろうかということも議論しなければいけませんし、都市への投資というものも、見てみますと、必ずしも重点投資になっていなくて、空港も、成田があり、羽田があり、中部の国際空港をつくるという話があり、そして瀬戸内海の狭い中に、また神戸にも空港をつくろうという議論がある。それぞれ否定しているわけではありませんが、大都市を中心にして、そういう公共事業投資に重点化、効率化という議論がなされているのだろうか。そういう議論がなされているかどうかが大都市側から返ってこないまま、一方的に大都市と地方という切り口で地方の投資を抑えるべきだというのは、少し不公平があるのではないかというような気もいたします。

 また、もう1つ思いますのは、つくったものをどう効率よく使っていくかという視点も、これからもっともっと考えていかなきゃいけないことだと思いますね。よく地方の港が釣り堀になって、むだな投資だという例に挙げられます。これも現状そういうことがあるかもしれませんが、だとすれば、これだけ歴史的な過程の中で投資をしてストックとしてたまってきたものが使われていないということですから、これをもっと使っていく。

 土木の分野の仕事とは少し離れた話になりますが、規制の緩和をするとか、縦割り行政をもう少し横の連携をすることによって、使えるものにしていくという視点がないと、ただ単につくって、制度はそのままにして、むだかどうかという議論も、少し公平を欠くのではないかという意味合いで、もうちょっとバランスのいい議論をして、大都市と地方の対立の議論にしないことが、私は国全体を考える上で必要ではないかと思います。

○堀井幹事 先生のおっしゃるとおり、対立的な議論ではなくて、大局観を持ってバランスを失わない議論で進めていくことが非常に大切だというご指摘だと思うのですが、具体的にそうしたバランスのいい議論をするためには、どんな仕組みといいますか、枠組みになったらよろしいとお考えでしょうか。

○橋本委員 それがなかなか答えがなくて、自分自身も、大都市と地方のぶつかり合いになってはいけないので、もうちょっとバランスのいい議論が欲しいといい続けていますが、それをどういう場で、また、どんな視点から、そのバランスのい議論をしていくかという問いに対する答えがなかなか見つかりません。そういうような視点も多くの識者の方々にお考えいただいて、こんな仕組みでやったらどうかということを、ぜひ提案をしていただけたらと思うのです。

 地方にいて思いますことは、一番わかりやすい例ですから、道(みち)のことでいいますと、大都市部では主に産業政策としての道、効率性ということが基本にあるんだろうと思います。大都市の生活者という視点ももちろんあるのですけれども、産業政策的な視点があるだろうと思いますが、地方では、これから高齢化が進んでくる一方で少子化が進んでくる中では、福祉のコストをいかに下げるかという視点も出てくるわけです。

 もちろん人口の流動は自由な時代ですから、何も山の奥に住んでいなくてもという議論は一方ではあると思いますけれども、現実には故郷を大切に、そこに住まっておられる方がおられて、そういう方々が高齢化をしてくる時代に、そういう皆さん方の福祉コストをどう考えるか。例えば、ヘルパーさんが1日1回か2回しか行けないような状況を、3回、4回にすれば、それだけでもコストとしては2倍から3倍に下がってくることになりますから、そういうことを例えば公共事業の整備でどう進めるか、一方でプラスを稼ぐだけではなくてマイナスを減らすという視点も必要だろうと思います。

 これまでの地方か大都市かという議論は、どちらかというと経済的な効率性、それもプラスになっていくかどうかという視点からの議論だったろうと思いますが、マイナスのコストをいかに減らしていくか。マイナスといってはいけませんけれども、コストをいかに減らしていくかということも、今後地方への投資を考える上で必要な視点ではなかろうかと思います。

○堀井幹事 福祉、あるいはリサイクルも含まれると思いますが、そういうものにどういうふうに対応していくかという上で、地域コミュニティーをつくっていく、そのコストをできるだけ低減していくということが大切であるというご指摘かと思います。大変大切なご指摘ですので、ぜひ委員会において議論させていただきたいと思います。

 1つは、大局的な議論、バランスのとれた議論ということの大切性、もう1つは、福祉とかいう側面からの考え方もあるというご指摘をいただきましたが、社会基盤の整備に携わる我々土木技術者に対して、こういうことを検討してほしい、こういうことをやってほしいというご要望なりあったら、お聞かせいただきたいと思います。

○橋本委員 土木技術者の方々への要望というのは、いろんな視点からあるだろうと思います。私よくいっていることは、これまでは経済性とか安全性、つまり一定合理的なコストで強固で安全なものをつくれば、それで足りたというといけませんけれども、かなりの必要条件を満たしたと思いますが、これからはそれだけじゃなくて環境への配慮とか、地域の景観の中でどう文化的な位置づけを持つかということも必要な時代になってくるだろうと思いますので、そういう文化とか環境という視点も、ぜひ土木技術という範囲の中でお考えいただきたいと思います。

 そのことと少し矛盾するかもしれませんけれども、従来のいろいろな施工技術というのが、日本の場合に少し安全の係数を見積もり過ぎ、というといい過ぎかもしれませんけれども、非常に安全ということに心がけてきた。こういう厳しい国土ですから、コストがかかるのは当然だと思いますけれども、余りにもそれを全国一律の基準として押し通してきたために、コストがかかってきているという面が、いろいろなところで見受けられるのではないか。身近でいえば、道路の2車線で歩道をつくっていくということが、山の中でも必要かどうかという議論になって、1.5車線という整備の仕方も道路改良として認めていこうという流れになってくるわけですが、そのようなものが下水道の整備にしろ何にしろ、すべての分野であるのではないか、そこをぜひ考えていっていただけたらと思います。 あわせて、いろいろな分野で各省庁が同じようなお仕事をされている。道づくりもそうですし、下水処理、生活排水処理もそうですし、海岸の事業とか、地すべり、砂防、治山の事業とかもそうでございます。例えば大学でいえば、農業土木、林業土木、そして建設・建築土木と分かれているのではないか。役所の縦割りというだけではなくて、大学の教育の段階から  縦割りになっているかどうかわからないので、失礼かもしれませんけれども、もっと同じ意識で仕事をしていく、そういう技術者を育てていただくことが、今のいろんな地域で出てきている問題の解決に、長期的にはつながっていくのではないかということも思います。

○堀井幹事 大変貴重なメッセージを幾つかいただきました。最初にいただきましたバランスのとれた議論をするべきである。まさに我々がこの特別委員会で目指しておりますのは、そうしたバランスのとれたディスカッションをしようということでございます。本日いただいたご意見を付議させていただき、有意義な特別委員会にしていきたいと思います。 第2回は12月を予定しておりますが、そのときにはぜひご出席いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日はまことにありがとうございました。

○橋本委員 こちらこそありがとうございました。よろしくお願いいたします。

○岡村委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、丹保委員のご意見の説明をお願いいたします。

○小原幹事 丹保委員がきょうご欠席でございますので、先週私が丹保委員のところに参りましていろいろお伺いしたことを、資料の1−5という形でまとめさせていただいておりますので、ご説明をさせていただきたいと思います。

 さまざまなことをおっしゃられたものですから、丹保委員の趣旨が十分まとめられているかどうか、余り自信はないのでございますが、私なりに感じたことを含めて整理させていただいております。

 まず1つは、社会基盤というものをどう考えるかという中で、特に丹保委員が北海道にいらっしゃるということから、地域の社会をどう考えるか、その中で社会基盤をどういうふうに考えていくかというアプローチが要るのではないかというふうにおっしゃったことであろうかと思います。特に、背景としまして、この言葉は丹保委員がおっしゃったものですから、そのまま書かせていただきましたが、「東京の常識は地方の非常識」、逆に地方の常識が東京の非常識である、こういうおっしゃり方をされました。特に、今の橋本知事にもありましたが、大都市対地方というよりも、丹保委員は、「東京対その他」というところが大きく違う。したがって、その地域社会が目指すところも大きく違うのではないか。

 そういう中で、特に地方の目指すべき点ということで、「新中世」、昔の封建時代のある種の地方分権、地方が独自な文化を持っていた。今後は形を変えて、文化、ノウハウ、情報というものが地方で独自のものが必要になるのではないか。少なくとも東京経由でない、それが地方のアイデンティティーといいますか、そういうものを醸成するのではないか、こういう背景。

 それから、ややミクロな話ではございますが、特に農村社会でなかなか高学歴の女性が、端的にいうとお嫁に来てくれない。特に北海道のような場合には、農家が非常に点在をしている。したがって、結果的にコミュニティーがなかなか形成されない。こういう中で、もう少しコミュニティーあるいは地域社会をどういうふうに形成していくか。それに対して社会基盤がどういうふうに応援していくかという視点で議論したらどうか。そういう意味で、地域の特徴ということと、もう少しまとまりのあるコアを中心とした新しいネットワーク社会というのが、今後の1つの目指すべき方向ではないかというふうにおっしゃいました。

 具体的なものとして、「意見」のところに書いてございますが、特に農村の場合には、最低30戸とか50戸ぐらいのコアを中心として、さらに都市型雰囲気というのが、特に高学歴の女性に入ってきていただける1つの要素かなというふうにおっしゃっておりましたけれども、そういうコミュニティーの形成と、新しいインフラとしての情報を結びつけたネットワーク型社会というものが必要であろう。

 順番はちょっと違うのですが、ご自身の経験として、一番最後に書いてありますが、65歳というのはもうちょっと上げてもいいだろう。実際にはもう準現役で、70まで十分働ける。そういうものからしますと、社会構造が少しずつ変わってくるということを前提とした社会のありようを考えてみる必要があるのではないか。

 こういった中でインフラについては、例えば北欧は、非常に人口が少ない、あるいは人口密度が少ないわけですが、インフラのレベルが非常に高い。そういう意味で、人口が減るからインフラはもう要らないということではないのではないか。むしろ、ある種の国土軸というようなものを構成する要となるインフラは、今後とも重要である。

 それから、分野的に申しますと、これも前にもご意見がありましたが、特に北海道の場合には、若者の輸出産業がメインの産業である、こういうふうにおっしゃいました。そういう意味で、地方に対する1つは教育の問題と、それから、若い方々を定着させるためのある種の基盤整備が重要であろう。

 もう1つは、海というものをもう少し真剣に考えたらどうか。日本は海洋民族というふうにいわれてはいますが、実は海洋民族ではなくて、海岸民族でもなく、沿岸にべたっと張りついた沿岸民族ではないか。そういう意味から、本当の海洋民族、海を活用していくという意味では、いろいろな面で海の多面的な利用が今後の1つの大きな課題になるのではないかというご指摘をいただきました。

 このほかにもいろんなご指摘はございましたが、特にポイントになるところだけをまとめて抽出をさせていただきました。以上でございます。

○岡村委員長 ありがとうございます。以上、ご欠席の3人の委員の方々には、大変時間をかけた発表をしていただいたということになりますので、きょうご出席の委員の方々も、それと同じように論点を出していただければ、大変幸いでございます。全員に、今のような発信をしていただいて、それから、反論も含めて、あと1時間ぐらい議論をしていきたいと思います。

 まず最初に、ごく簡単に、今までの意見にプラスアルファをつけ加えてご自分のご意見を、先ほどの紹介の順番で伊藤委員の方からお願いできますか。

○伊藤委員 私もこういう問題については全く素人で、何をいっていいかよくわからないのですが、生活実感からいいますと、やはり我々のような企業人の立場からいえば、投資効率が一番重要じゃないかと思います。どこに投資するかは別にして、やはり都市を中心にした効率のいい投資を行って国際競争力を高めるということは、まず大前提としてあると思います。

 ただ、さっき橋本さんがいわれたように、都市と地方のバランスということも非常に大切な観点じゃないかと思いまして、たまたま昨日、瀬戸内海のある島の町長さんとお話ししたとき、町長さんの立場で都市と地方の対立というような観念がありますかというと、その方は、自分としてはそうないけれども、地方は地方として非常に大きな問題を抱えている。1つは、やはり人材の流出というところじゃないか。その方は、もうやめられているのですが、今まで町長をやっていて、あんなのが議員になるかというのが、市会でも町会でもいっぱいいる。そのくらい地方は人材が払底しているんだというお話があって、(笑)そういう考え方もあるかな。どうやって人材を地方に置いておくかということが、1つは地方の非常に大きな課題だろうと思います。それは産業であるかもしれませんし、あるいはほかのプランであるかもしれません。

 それと、高齢化、高齢化といろいろな議論がありますけれども、私、父のいなかに帰って、もう50年以上前に疎開していたいなかの風景を見て、ふっと感じたのですが、老人がふえるということは事実としてあるわけですから、やはり老人というものも1つの資源じゃないか。その資源を呼び戻せるような地方であるということも、1つの意味では大切じゃないか。

 私の母なんか80過ぎてから、あんないなかには帰りたくない、親父の墓も東京へ持ってこいといわれまして、さっき女性の問題がありましたけれども、昔のいなかというのは、そういう風土が多分あったんでしょう。母も数年しかそこにいなかったのに、いまだにそういうことをいっているというのは、やはり地方自身の文化というか、そこにもうちょっとオープンな風土を持っていかないと、老人を資源化できないんじゃないかという感じがしました。

 アメリカでもいろんな土地、例えばフロリダにどんどん老人が入ってきて、それで問題かというと、結構ビジネスになっているんだろうと思います。ですから、例えば岡村先生の出身地の高知なんか、非常に暖かいといいますから、ひとつ老人を呼び寄せるようなことを考えるということも、大きな課題かなと感じました。

○窪田委員 今ビデオで出されました橋本知事のコメントにかなり共感するところがございまして、付加的にといいますか、触発されて思いついたことを4点ばかり申し上げます。1つは、地方で育てた人の教育費が、都市で働いているので、そこで所得から税として引かれて、結局都市で使われている形になっているということですが、たまたま私、今年度、就職担当をやっておりまして、就職が非常に厳しい状況を経験しております中で、地方から来ている学生は、地方へ戻るという形態が、そんなに強くはありませんが、かなり強まっている感じがします。私の大学だけかもしれませんが、親元に戻るということがかなり明確に出ております。大手企業がなかなか採用が厳しいものですから、地方公務員志望、あるいは地方の優良企業に行こうという傾向は強くなっています。

 ただ、全国的に就職状況は厳しいですから、いわゆる大都市の有名一流大学の人も、大都市でだめなら地方でという形で、地方がむしろ激戦区になっている。私の大学でも、結構優秀な学生が、本来なら受かっているはずのところが地方でも受からないというぐらい、非常に厳しい状況になっています。

 学生の意識の中には、自分たちが地方へ戻らなきゃいけないんじゃないかと考える意欲ある者は何人かいるんじゃないかと思います。ただ、彼らがちゃんと働ける職場を確保しなきゃいけないという問題は当然あるわけで、それについては経済とか財政とかの問題になりますから、地方の中核都市に大都市で教育を受けた学生が集まるかは、それらの水準の教育を受けたものが生かせる職場があるかどうかということに、非常に深くかかわっていると思います。

 そういう意味では、地方を何とかするということであれば、地方にそういう人材が戻るきっかけとなるような事業を起こすことをやっていかなきゃいけないという状況が現実にあると思うんですね。地方に税金が多く使われるということは、マスコミでもいろいろいわれているのですが、人口の地方分散と人材の地方分散を考えると、ある程度のそういうシフトはやむを得ない面はあるだろうと思います。

ただ、逆にいうと、大都市の方での人材の欠如とまではいかないでしょうけれども、ストックされている膨大な量のインフラの維持更新に当たっていく人材をどうするかという、若い人たちの配分の問題が大きいような気がします。当然、今、職業の自由ということがありますから、意識の問題がかかわるので、職場があれば必ずしも行くとは限らないということはあると思うんですね。

そこで、実は最後に知事がおっしゃった土木技術者への要望の中にもあったことですが、私自身、先ほど自己紹介では申し上げませんでしたが、土木施設の景観設計、あるいはそれに絡んで、歴史的な土木施設の保存、再生活用、有効利用ということに携わっているのです。

実は2週間ほど前に、日本学術会議で生活環境設計研究連絡会議のシンポジウムがありました。これはことし2回目なんですが、普通の人が生活する環境をよくしようということを、もうちょっと学問として考えるべきだということが学術会議の非常に重要な方針になってきているのです。そのときはまだ立ち上げて2回目でしたので、建築学会系の方と、土木系から私が参加して議論しました。生活環境というのは、普通の市民の視点からすると、だれがつくっているかというのはどうでもいい、というとちょっと語弊がありますが、余り意識されていない問題で、例えば造園とか、都市計画とか、あるいは機械とか、技術者が全部かかわっている世界であるわけです。とりあえず土木、建築が量が一番多い、あるいは目立つ部分であるということで、議論しようということから始まったんです。

土木・建築あるいは造園・都市計画というように、社会基盤整備を組み立てていく人たちが集まってお互いに情報交換をして、何か遺伝子組みかえをやらなきゃいけないんじゃないかということを大分前からやっていまして、一つ私がかかわっている組織は、都市の環境デザインをどうするか、景観をよくするにはどうしたらいいかというところに携わる人々の集まりです。生活環境の中で一番目立つものとしては建築、それから土木があり、造園があり、例えば看板、サインといったような工業デザイン、そういう分野の方々が集まったのですが、実は土木系の方々が一番関心が薄い。かかわってくる力が弱い。それはほかにもいろいろな仕事があるせいもあるんですけれども、どうも出おくれているという感じがしないでもないんですね。私どもの責任も非常に感じているんです。先ほどの学術会議との絡みでいいますと、生活環境をどうするかというところに土木技術者がどう貢献するかということを、やはり市民の方にもうちょっと正確に知っていただく機会をつくらなければいけないだろうと思います。

もう1つは、先ほどの橋本知事の発言にありましたように、大学の教育のシステムと行政のシステム、職場のシステムが全部縦につながっている現状を、実際にどういう場所をつくるのか、どういう生活の環境の場をつくるかという考え方で、組みかえるという議論をもうちょっとする必要があるんじゃないかということを感じております。

たまたま仰せつかって、今年度「土木の日実行委員会」の幹事長をやっていますので、ことしの11月18日頃に、土木技術者は一体これから何をする必要があるか、生活環境を支える上で何が求められているのかということをテーマにした議論をやったらどうかという提案を今しております。予算はとれたのですが、まだ内容が煮詰まっておりませんけれども、とにかく魅力のある場所ができなければ人は来ない。これは商業の世界では当然の論理で、郊外店舗に人が集まって中心市街地が空洞化したのは、1つは安いものが大量に、1回行けば全部そろうということになっているからですけれども、それ以外に、ショッピングしている環境そのものに非常に楽しみがあるということなんです。

1980年代後半からのバブルのころには、ウォーターフロントの整備ブームで、衰退した臨港地区、港湾地区に商業施設を集中的に配置して、活性化をするということを世界的にやったわけです。今それはかなり経営が厳しいところも出てきていますけれども、持続しているところは、既存のストックを活かす、ある意味で建設当初の支出目的以外の有効利用をするということを非常にうまくやっているんです。これが今なかなかできていない所が多い。先ほど、つくった港湾が釣り堀になっているという批判がありましたが、釣り堀として有効利用できるんだったら、釣り堀にしちゃえばいいじゃないか。(笑)私は釣りが趣味ですから、そういいたくなるのですが、実は全国で地方の港湾の中には、これは必ずしも好ましいことじゃないんですが、インターネットなんかでよく調べますと、立ち入り禁止になっている堤防や、使われていない桟橋ほど、人が釣りに行っているんです。非常に危険な状態になっている。早々とそれに気がついた自治体は、そこをつり桟橋に改造して、非常ににぎわっている。これはもともとの公共投資の目的からは全然違う目的の利用形態になっているわけですが、市民にとっては非常にいい場所になっているわけですね。

 こういう、ある場所の価値の転換ということが、社会資本整備の中でどう考えられていくかというのは非常に大きなポイントではないかなと、今思っております。それに土木だけで知恵が及ばないのだったら、ほかの分野の人の意見をどんどん聞こうじゃないかというのが、私の論点です。

○岡村委員長 私がコメントをいう筋合いではないんですが、実は、能力のある人が働きがいがあるということが必要だと思います。それには、女性や子供が住みやすいという附帯条件がないといけないのではないでしょうか。現在単身赴任全盛の時代でしょう。それを助長する方がいいのか。将来、基本的には単身赴任の社会に便利なように持っていくのがいいのか。いや、そうではなくて、家族が一緒に住むことが幸せな人が多いのか。それに合わせてインフラをつくるというので、インフラのつくり方が随分違うのではないかと考えております。

 それでは、続きまして、今度は清原さん。お待たせいたしました。

○清原委員 タイトルの社会基盤整備ビジョンは、言葉をかえれば、一種の国土計画あるいは土地利用計画につながる話だと思っているんです。僕の理解では、田中直毅さんは多分都市派だろう。橋本大二郎さんは、うまく言っているんだけれども、結局、地方派だろう。(笑)

このバランスの問題なんです。ご存じの全国総合開発計画、略称「全総」といわれているんですが、あれもその辺はうまく「国土の均衡ある発展」というキーワードで第1次から第5次計画までずっと押し通してきて、今度の第5次計画で矛盾を感じながらも、それを使っているわけですね。一体全総がどれくらい社会基盤整備に実効性があるかというのは非常に議論があるところなんですけれども、一応あれが国づくりの根幹の計画だということになっているものだから、避けては通れないだろう。もうやめちゃえという議論もかなり前からあるんですけれども。国土計画をこれからどういう視点で見ていこうかというのが、僕の話せる分野じゃないかなと思って、論点の1つに挙げておきたいと思います。

もう1つは、この欠席されている方3人の中で共通しているのは、例えば丹保先生の国土軸のお話などとも少し絡むんですけれども、首都機能の移転はビッグプロジェクトとして実際に想定されているわけですね。これは実は社会基盤整備の観点からそもそも出てきている話ではないんですけれども、実際に着手されますと、どうしても新しい都市づくり、21世紀型の環境とよく調和した理想的な都市づくりだということで、多分進んでいくんじゃないかと思うんですね。そうすると、社会基盤整備のビジョンを語るときに、やっぱりなくてはならない論点ではないかなと僕は思っているものですから、その分野で参加できるんじゃないかなと思っています。

お3人の方の意見の中には直接登場はしていないんですけれども、これからの公共事業を考える上で、例えば国道なんかをつくるときには、基本的には、必ず買収しなければならないということになっているんですね。ところが、僕の考えでは、道路は買わなきゃいけないだろうけれども、例えば公園なんかは、ロンドンなんかそうらしいんですが、 100年間とか 200年ぐらいの長期のリースで借り上げちゃう。したがって、買収に伴う費用もエネルギーもなくて済むんじゃないか。ただし、賃料といいますか、借り上げの料金がその間ずっとつきますから、一発で買っちゃった方が得じゃないかという議論もある。

学者の中には、道路は無理かもわからないけれども、公園だったら借り上げてもいいんじゃないか。あと、公立の学校の敷地なんかも別に買わなくても、地主さんと50年とか 100年とか賃借契約をして、もし 100年後が来たらもう一回契約を更新するということでやってもいいんじゃないかという方もいらっしゃいますので、それも論点になるんじゃないかなと思っているんです。

○岡村委員長 どうもありがとうございました。これも、私が変なコメントをするのはまずいんですが、首都機能移転につきましても、例えば堺屋太一さんは、それによって社会システムそのものに変化を与えようという意図が非常に強いようにみえます。土木は、社会システムそのものを変革することにすらあり得ると私は考えておりますので、少し広くとらえて、この委員会をやっていければよいと思います。

では、黒田さん、お願いします。

○黒田委員 地方と都市の問題を考えるときに、例えば時間あるいは空間移動、つまり、距離を縮めることの可能性として、今世紀一番よかったことは、高度情報化ではないか。例えばインターネットもそうですし、医療技術などを考えた場合にも、どうしても優秀な先生は都会に集まる。地方においても、そこの県庁所在地とか、そういうところにいい先生は行ってしまう。そうすると、辺地における医療はどういう形で充実させたらいいかというようなことなどが、高齢社会あるいは長寿社会の中で問題になっていくと思うんですけれども、それを可能にしたのは、医療技術に1つ絞って考えるならば、遠距離の画像診断などだと思うんです。

私たちの番組で、宮城県でも仙台にいい先生が集まっている。そうすると、宮城県内の他地域において大手術をしているときに、体内の組織をとって、おなかをあけている4時間の間に、これががんであるかどうかという判断は、都市部にいる先生にしかできないというようなことになったときに、その画像診断はインターネットを使えば可能なんです。直接手で持って見なくても、今これだけ鮮明な映像を得られる時代ですから、そういうことは可能になっている。そうすると、おなかをとじるまでの間に、これが良性のものか悪性のものか判断可能である。

同じようなことは、現在、民間企業でセコムがやっているんですけれども、脳を輪切りにして、それを画像診断医という先生のところに集中する。医療は直接触れなければいけないということを前提として考えると、それは確かに診療、治療ではないかもしれませんけれども、そういうことは可能だ。こういう医療1つとって考えてみても、高度に情報化した社会は、都市と地方との格差を是正する大きなメリットを与えたとは思います。

でも、そこで1つ、まだ残るものとしては、箱物、ハードの部分を新しくつくることと、先ほどいったように、いい先生は中央に集まるという、人的資源はどうなるのか。箱物の問題と人的資源の問題、これだけはどうしても動かせない、考えていかなければならないことだと思うのです。

そこで大変期待しているのが、来年4月1日から始まります介護保険です。いろいろ議論はありますけれども、もしかすると、40歳以上の人たちが60歳あるいは65歳に至るまで長期間払い続ける介護保険が、いざ自分が適用可能な年齢になったときに、介護のいい県に移動しようかなという人も出てくるんじゃないか。「介護難民」といったらいいんでしょうか。難民化するんじゃないか。

今でも、私たちNHKは47都道府県にそれぞれ支局を持っておりますけれども、それぞれの任地、転勤先で、ここがよかったというと、札幌あたり人気がありますし、老後はそっちへ行こう。今の時代は、老後は最終的に親兄弟がいるところ、実家へ帰ろうというような意識は余りないんですね。先ほど伊藤委員がおっしゃいましたけれども、ルーツとかふるさとへの帰属意識は余りなくて、お墓も移せますし、行った先で家族、あるいは夫婦が、快適な福祉サービスを受けつつ老後を過ごせればいいという考え方もある。そうすると、介護のいい県に移る。でも、そうなると、先ほど岡村先生がおっしゃいましたけれども、医療費のかかる人ばかりがどっと来ることになるんじゃないかという不安もなきにしもあらず。そこまでは他府県で、他市町村で介護保険を払い続けてきて、そこには1円も払ってこなかった人たちが、ここの施設がいいからといって移ってこられるのでは、都合がよ過ぎるのではないかという議論もありますけれども、現実にそういうことは起こるんじゃないかと思いますね。

介護保険が適用にならない部分としては、箱物の充実には介護保険は使えないのです。そうすると、既存の施設、箱物がよいところは来年4月1日からスムーズにスタートできるかもしれないんですけれども、どういう形でこれから施設を充実していくか。病院とか、リハビリ施設とか、老人保健施設、そういうものに対してどういう投資の仕方をしていくかというのが、保険料収入あるいは国の税収からの移動はありますけれども、その収入とは別に、どういう形で各地方市町村が箱物を充実させていくかということが、ポイントになってくると思います。

そこで、福祉サービスの面で雇用が当然生まれるわけですけれども、人手不足は否めない問題で、介護に従事したいという人がそんなに大勢いるともいえないんですが、雇用は確実に創出できると思うんですね。でも、もともと人口が少ないところで、介護の担い手になる人、あるいはそういうサービスにつける人を確保できるかどうかというと、なかなか難しい。高齢者、介護を受ける立場の人は多い。けれども、逆に、若年世代が少ないということになります。

もう1つ、考えられる可能性は、1市町村だけでものを考えるのではなくて、広域帯で連携していくということです。現実にうちでは箱物、保健施設をつくります、福祉施設をつくります、でも、人はおたくの市町村の方が多いから、ぜひおたくの方からお願いしますという形で、北海道などでは、3つ4つの市町村が一緒になって、この福祉サービスをしようというような試みもあります。

また、福祉の面だけでなくて、先日東北に行ってきたんですけれども、例えば大船渡という沿岸の町は、大きなごみ処理場を持っていないんですね。今ごみ処理の問題は、ダイオキシン対策とともに、地方の非常に重点的な課題になっているんですが、じゃ、どうするかと考えたら、お隣の釜石は、新日鉄釜石の高炉を持っている。高炉で直接ごみ処理をするわけじゃないでしょうけれども、その技術があるから、ごみの高度処理が可能である。ごみというのは、ご存じのとおり、 800度以上で大量に燃やすことによってダイオキシンが発生しないということがあるので、大船渡のごみも引き受けましょう。そういうふうに都市間の連携。ただし、ごみ処理の車がずっとごみの汁を垂らしたまま、大船渡からたどっていくと、釜石に到達するという状況になると、周辺住民も非常に迷惑なので、そこは市長さん同士の話し合いで、そういうことは絶対ない。まず私たちの都市できちっとパッケージをして、一切環境を汚すようなことなく釜石に持っていって、たくさん集めて高度処理をする。無理に1市町村にすべての施設、図書館から何からつくるということではなくて、そういう広域帯での連携の可能性はあるんじゃないかなと思うんですね。

 そうなってくると大事なのは、その両地域間を結ぶ交通システムの確保。でも、環境問題がいろいろいわれていて、自然を保護しようという時代に、縦貫するような道路をやたらとつくっていいかということも問題なんですけれども、人と物の移動がスムーズに確保できるような交通システムだけは、やはり保障していく必要があると思います。

もう1つは、私はずっと都市に住んでいるんですけれども、都市の税金が今地方で使われているということに対して、もちろん都市の税金が都市に落ちることはありがたいんですが、交付税の使われている先がどうなっているのかということは、都市住民にとってやはり関心の的なんです。

最近地方を見ると、公共の豪華日帰り温泉が次々とできているんです。これはご存じかどうかわからないんですけれども、地方住民にとって必要な保養所、1日 500円ぐらいでずっと過ごせるような温泉がある。じゃ、これは本当にリピーターを確保できるのだろうか。一家そろって、おじいさん、おばあさんも引き連れて、1回は温泉に行くかもしれませんけれども、それが毎週行くだろうか。本当にそういう箱物が必要なんだろうか。地方の市町村の住民をそこにとどめておく、住民がリラックスできるためのレクの施設として、それをつくったということなんですけれども、よく考えてみると、もしかすると都市の私たちの払っている税金の一部がそこに使われているんじゃないか。本当にそこに必要なものが、そして未来永劫使われるものが、そこにつくられているのだろうか。

こういうケースがバブルの時代にあったそうで。若者の流出を食いとめるために、ある地方の市町村で、何も六本木に行かなくてもディスコを体験させてやろうというわけで、何しろ土地は余っていますから、田んぼの真ん中にディスコをつくったそうです。でも、違う。そこの若者は六本木のディスコに行きたいんであって、おらが村の真ん中にディスコができても、行きたくないわけですね。(笑)その感覚、箱物をつくるときに、本当に住民のニーズに合ったものをつくっているのだろうかというのが、ちょっと疑問に思います。

昨年高知に伺ったときに、都会の感覚ではこの海岸沿いにリゾートができればすばらしいなと思ったら、高知市では海岸の一番いいところにずっとお墓が並んでいるんですね。これは無理だ。その地方の特性というもの、あるいは古くからある因習とか、お墓を壊してリゾートにするというのは多分無理だと思いますし、都会の人間の発想で、そこにこういうものをつくったらどうかということは決してアドバイスできないなと思いました。その地方の人が、自分たちにとって何が一番必要であるかということは、あらゆるデータの開示とともに、何を選びますかということを住民本位に考えて、箱物をつくることがやはり一番だとは思います。

ちょっとまとまらないかもしれませんけれども、そんなことを思っております。

○岡村委員長 どうもありがとうございました。

○合田委員 私は、余り総論的なこととか、夢のある話はできないのですが、きょういただいた資料の中で私が一番気になっているのは、9ページの、一般政府支出の中で公的資本形成にどれぐらいの割合を支出しているかというところです。日本が地方と組み合わせて8%ですね。ほかのアメリカ、イギリスが 1.7%など、日本が突出して高いのです。

たしか20年ぐらい前だったか、土木学会誌にやはりこういうのが出ていて、そのときに日本の公共投資が10%台を超えていたような記憶があります。

日本の近代産業というのは、明治になってから大急ぎで欧米から入れたわけで、そういう歴史を見ていくと、例えば鉄道についていうと、1825年のイギリスのストックトン−ダーリントンの鉄道から約50年おくれて、日本では1972年に新橋−横浜(今の桜木町)が開通しました。その後、鉄道の伸びはイギリスとほとんど同じペースで、同じスピードで伸びてきた。

例えばスチールの生産は、ベッセマー法をさらにスウェーデンのゲランソンが産業化して、ヨーロッパでは1860年代後半からスチールの生産が急速にふえたのに対し、日本の場合には、1910年ぐらいからふえている。自動車についていうと、アメリカが最初の自動車国になったわけで、それも大体1900年から1915年の間に倍々でふえていったわけです。それが日本はその大体50年おくれです。高速道路というか自動車専用道路は、アメリカの場合には、第1期はアメリカの大恐慌の後の対策としてルーズベルトが踏み切り、ドイツでも建設していた。

そういうようなことで、だれか幹事の方々に、 100年ぐらいの長いスパンで、欧米の公共投資の国民総生産に対する比率の流れがどうだったかというのを、ひとつ資料として用意していただきたい。 逆にいうと、日本の場合、戦後、戦災で疲弊した経済を立て直すという意味で、建設産業を非常に大事にしてきたわけですけれども、ちょっと大きくなり過ぎて、これをどうやって縮めていけばよいか、今非常に苦しんでいる。だから、そのあたりの厳しい議論も1つないと、これから社会基盤を整備するといっても、そこがちょっと見えてこない。建設業界、土木工業協会などでも、これからどういう社会基盤整備が必要か、それに合わせて、どういう産業構成にあるべきかという議論も始まっているようにちらちら伺いますけれども、そのあたりの量的な面もある程度見据えていかないと、本当に実のある議論にならない。

大学としても、万々が一、建設産業の総規模が減るとすると、我々の学生の就職もまた一段と苦しくなるというようなこともあって、非常にペシミスティックな見方を申し上げて申しわけないのですけれども、やはり一度はそういう議論も必要ではないかと思うので、ひとつ調査研究の方をお願いしたい。

とりあえず私が申し上げるのはそれぐらいです。

○岡村委員長 どうもありがとうございました。

○鈴木委員 大都市と地方の社会資本整備を経験をしてまいりましたので、お話し申し上げさせていただきたいと思います。

大都市では、効率性を重視するという点からもっと整備を進めるべきだという提案が最近大変強くなっているようで、そのとおりだと思います。確かに大都市では安全の問題、環境問題、混雑の問題等から、まだまだ投資しなければいけないわけです。しかし確かに効率はいいかもしれませんけれども、大変コストがかかる。しかも、それが必ずしも地域に受け入れられないという問題があって、本来完成してもよい、例えば東京の外郭環状道路などもまだできていない。やはりこういうものは必要なんですけれども、これから進めていくためには、これだけのコストがかかるけれども、これだけの効果があるというようなことを、パブリック・インボルブメントというんですか、建設する方はもっと説明をしていく、理解を求めていくという方向に進めていかないと、必要であり、効率があるからといっても進まない。しかし、こういった整備を進めていかなければ、国際競争勝てない。そういう点をもっと強調していく必要があると思います。

地方につきましては、逆に、効率性が悪いということは、確かです。ただ、効率性だけで、地方の社会資本整備の是非を判断するということは、やはりおかしいんじゃないか。ヨーロッパの社会資本整備の評価を見ましても、その地方の経済性とか何かの点数を加えて評価している例もあるわけですから、そういったことも考えていかなければいけないと思います。

ただ、いずれにしましても、先ほど全総のお話がありましたけれども、全総でもいわれているように、これからの農山漁村あるいは中小都市が、そこだけで投資しているのではなくて、地方の自立性のある地域社会、コミュニティーをつくるためからいっても、農山漁村が周辺の中小都市を中心に1つの核をなしていく。その中で効率性のある投資をしませんと、至るところに箱物ができたり、不効率なものができる。それは県単位でもある程度調整する必要があると思いますけれども、今までの市町村より、もう少し広い地域を考えた社会資本整備を進めていく。先ほどご提案がありました病院などもそうだと思います。ただし、そういったものをつなぐある程度の交通手段、これは道路とは限りませんけれども、そういったものは効率性が悪くても整備を進めていく必要がある。

しかし、例えば会長の住んでおられる四国の高速道路について、こんな採算の悪いところをなぜやるんだということを大都市の方によくいわれます。ただ、今のところは、そういうことをいわれても、ネットワーク上必要だということで、整備を進めておりますが、地方が自立していくためにも必要なんだというような説明を、我々はもっとしていかなければいけない。そういう目的で社会資本整備をしていくんだという提言がこれから出来れば、大変いいのではないかと思います。

ただ、今申し上げたことでいきますと、大都市も必要、地方も必要で、あれもこれもということになって、バラ色になるだけではいけないので、先ほど合田先生の方からご指摘がございましたけれども、バランスのある投資、そのバランスは、橋本知事さんもどうやっていいか難しいと言われてますが、私もわからないんですが、1つの目安として、例えば投資の限界みたいなものを考えながら進めていかないと、結局、お互いにこれも必要だ、あれも必要だということになる。そこのところをなかなかうまくいえませんが、そういう議論をこれから少しできればいいのではないかと考えております。

○岡村委員長 合田先生からもありましたけれども、歴史的な観点からいきますと、例えばアメリカだと、縦横のネットワーク、高速道路網を、交通量にかかわらずつくる。当時、そういう国力はあったのですね。日本は、明治、大正にかけて、あの国力で鉄道のネットワークをつくられました。ところが、今の国力で果たして道路のネットワークをどの程度つくるべきか。次の世紀には、情報ネットワークあるいはその他、何か別のものがあるかもしれません。次の世代は一体どんなものがミニマムかということを少し議論して頂けませんでしょうか。

○鈴木委員 委員長のご指摘もあり、ちょっと意を強うして、つけ加えさせていただきますと、現在、特に交通関係、新幹線、空港、高速道路でもそうなんですけれども、建設費の財源が、どちらかというと財政投融資等の借入金に大きく依存しているので、利用者の負担が高くなるという点が1つ問題で、先ほど来釣り堀の話が出ましたが、せっかくできても使用料が高い。空港、高速道路でも最近そういう批判が出てきている。

今までは、我々も反省しなければいけないんですが、これだけ費用かかったから、これだけで負担してくれということだったけれども、国際競争力も考えると、適切な料金で使えるように、ソフトを含めた建設システムを考えていかないといけない。これから将来の利用者に料金という形で借金を返していただくわけですが、利用者の立場も考えながら整備を進めていくということも、今後の検討の中につけ加える必要があるんじゃないかと思います。

○岡村委員長 竹内さん、お願いします。

○竹内委員 この資料と、3人の方のご意見を伺って、大きくいうと、効率について2つのかなり違うアプローチが使われているという感じがしております。

1つは、いわゆる投資効率という考え方で、アメリカの行政学から影響された1つのアプローチで、インプットに対してなるべく大きなアウトプットを出すという考え方です。これが日本の戦後の計画経済の中心にあった。計画そのものが投資効率で引っ張られてきたという傾向があった。これは最終的に分割していくと、1つ1つの事業の審査を費用・便益みたいな形でしっかり行うという考え方になる。これは突き詰めていけば、1つ1つの事業の問題に還元できるテーマだと思うんです。

ただ、落とし穴がありまして、先ほどいただいた資料の16ページに「今後の社会資本整備の重点投資分野」というのがあるのですが、重点ではなく、各省の要求を全部入れたなという感じのものになっている。これも戦後ずっと総合的という名のもとに、すべての要望を全部入れる計画にした結果です。これをやっている限りは、結局、投資効率には落とし穴がある。

効率でもう1つ問題なのは、日本の場合、行政組織の効率というものに1つの落ち度があるという感じがしております。空間経営的な手法が非常に足りない。先ほど北海道の先生が北欧というキータームを使っていらっしゃいますけれども、いわゆる空間的な中で、最適な組み合わせと配置を考える。したがって、その空間は大きくしたり小さくしたり、いろいろなセッティングができるわけですけれども、その仕組みをどういうふうに機動的につくれるかというところに、1つの能率を見出すという発想だと思うんですね。日本の場合は、この組織効率が極めて悪い点に非常に大きな問題点があると、私は見ているんです。

なぜいままで組織効率を考えないで済んできたかというと、自治省が日本の地方自治体は個々にとらえず、3300全部で1個の方程にまとめあげている。その中で、財源をあっちに分けるかということをやっているのであって、独占企業体が日本に1個あるような、完全な社会主義的な計画をずっと続けているというのが現状だと思うのです。つまり、個々の現場でどのような組み合わせをしたらいいかとか、税率を何%にしたら人口や投資がもっと来てくれるとか、そういう発想に対応できるような行政組織ではない。制度そのものに非常に限界があるのではないか。

こういう制度問題に対するアプローチが余りにも少な過ぎる。私の感じだと、これは費用・便益だけでは解けないと思うのです。だから、地方議会にかなりレベルの低い人が集まってしまうというようなことも、変えられないんですね。

私は、こういう問題について、もし長期的に考えるのであれば、機能的な統合論というアプローチを持ち込めないのか。簡単にいえば、いろんな施設によって一緒に利用するケース、あるいはもっと広げて、いろんな行政サービスを総合的に行うケース。ただ、私は市町村合併論だけでは非常に難しいと見ていまして、これは行政改革と同じような話になってしまう。むしろ今やっている例えば一部事務組合とか、多目的組合を活用してはどうか、恐らく自治体の数が数の上では3600から4000、5000になると思うんですが、極端にいえば、独立の財政を持った1つの独立の存在として認めるという決定をすれば、そこにいろいろな財源の集まり方はある。今は1つ1つの自治体の下部組織というか下請組合みたいになっていて、実際には何のマネジメントもできない組織のままにしていることが問題ではないか。こういう状況を続けている限りは、地方の行政サービスをうまく経営するとかいうために、人材が移動するとは思えないという感じがするのです。これが1つのテーマかなと思います。

もう1つは、日本は財源の共同責任体制というのがあって、国が6割、県が3割とか、財源分担をして、一緒にやりましょうという形をとっているんですけれども、これが非常に依存的体制を結果的にもたらしている。形だけお互いに持ち寄った形にするということで、チェックシステムとしてはほとんど働いていないという感じがする。中央と地方の責任の範囲というか、どっちに本当に責任があるかということについて、あらかじめはっきり決めた上で、共同にやる方がいい。最初から共同で負担にするのは非常に問題があると思っています。

次に地方交付税でいろんな地方単独事業をつくるというケースが資料にあったんですけれども、交付税が補助金化している、あるいは逆に交付税によって、地方が自立性を失っているという面がある。交付税と借入金、地方債をくっつけるというのはやめた方がいい。やめられるかどうかわかりませんけれども、ヨーロッパはこういう制度を60年代に一回全部やめているんです。そうしないと、交付税があるから借金しよう。長期にわたって返せばいいといって、40年、50年かけて返すという安易な計画をたてています。過疎の場合にはさらに恣意的な、借金の拡大が起こる。こういうリスクに対して制御装置を持っていないというのは、非常におかしいことだと思うんです。

ただ、どうしてかというと、税制調査会で地方の独自財源の確保のために、地方法人事業税の創設を検討しています。私は、本当にできるんでしょうかと思いました。地方自治体は独自に努力をして、税率をいろいろ動かすなんていう気持ちはない。自治省は、地方交付税を確保することだけ考えているということらしいんですね。ここまでいくと、地方分権が何を目指しているかもわからない。そういう気がする。地方交付税がこれから日本全体で配分される方法に対して、きちっとした提案ができないというのは、まさに今までの社会基盤整備に、非常に欠陥があったのではないかという感じがしております。

これからエンジニア、土木技術者が何をすべきかというか、何ができたらいいかというお話もあったんですけれども、やはり制度論にどんどん入っていくべきだ。もちろん金融も含めてです。現行制度あるいは法体系を前提としていたら、将来に活動の場はない。だから、制度設計そのものをやるべきだ。建物を組み立てるように、法制度を組み立てるという作業にどんどん入っていった方がいいんと思いました。

○岡村委員長 どうもありがとうございます。

社会基盤を整備するには、長期的な視点を持って境界条件を自分で決めないで、それに必要なことはすべて我々の責任であるということにしていく。いつも感じますのは、多くの方は、境界条件のもとで最適解を求めるということでやってきたような気がします。

私は、いつも自分では境界条件を決めないでやる癖がついているものですから、この委員会をおこがましくも、専門家でも何もないのにやらせていただいているのも、素人の方が境界条件を知らないだけ、いろいろ提言ができる可能性もあるのではないかと考えたからです。専門家の方には、何をやろうとしているのかという質問をしょっちゅう受けておりまして、おまえなんかがろくなこともできないのに、なぜそんなことをやるのかという感じなものですから、素人ほど境界条件を知らないよさで、あるいは困難さを知らないので、長期的にはいい提言ができるのではないかと期待して、スタートさせていただきました。

 

○岡村委員長 せっかくお集まりいただいてご意見をいただいたんですが、2時間の予定があと数分で切れてしまうという情けない司会の仕方をしてしまいましたので、まず次回の予定を先に決めまして、あとご意見があればというふうにしたいと思います。

○梅原幹事長 今後の予定につきましては、議事次第の一番下に書いてございますように、第2回の委員会を12月に、第3回の委員会を来年の3月、シンポジウムを、今のところ来年の4月18日と予定を決めさせていただいております。

なお、第2回の委員会といたしまして、橋本委員より12月21日、22日、24日の3日のうちのいずれか、また丹保委員より、その中でしたら、21日の午後か22日の午後にしてほしいという希望をお聞きしております。いずれがよろしいでしょうかということなんですけれども。

     〔次回日程調整〕

○梅原幹事長 それでは、12月21日の午後3時から5時ということで、場所はこの土木学会があいておりますので、またここでさせていただきたいと思います。

○岡村委員長 どうもありがとうございました。それでは、次回までにやることにつきまして、あるいは次回につきまして、堀井さんの方から整理をお願いします。

○堀井幹事 12月まで随分時間があるわけですけれども、委員の方々と意見交換をしながら、キャッチボールをしながら進めていきたい。最終的には、我々土木技術者が21世紀にどういうことを目指してやっていくべきかという指針をまとめることが、恐らく目指すべきことだろうと思います。

本日はいろいろな論点あるいは考え方をご指摘いただきました。また、宿題もいただきましたので、幹事側でそれを整理いたしまして、具体的にどういうことを目指していくべきかということを、幹事の中で少し作業をさせていただいて、案をまとめる。その案をしかるべき時期に、例えば9月とか10月とかに、各委員の方に、お時間をいただくのは恐縮ではありますけれども、お伺いして少し聞いていただいて、ご意見をいただく。そういうようなことを繰り返しながら、12月の委員会までに、その行動指針のたたき台というか方向のようなものをまとめていきたいと考えております。

○岡村委員長 そういうことでよろしいでしょうか。

きょうの議事録は、今速記をしていただいておりますので、それを幹事の方で一度見て、皆さん方にお送りして、直していただくという作業をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。この委員会は公開ということにしておりますので、それは土木学会の広報のウェブサイトに載せることになると思います。

○堀井幹事 土木学会会員が4万人弱いらっしゃるということですが、ここの委員会の中で議論された内容が、その4万人の会員に伝わっていき、実際に皆さんの意識として定着していくことが非常に大切である。また、この委員会の場では、会員の方々の意見が集約されてくるということが非常に大切だと考えておりますので、例えば挙げていただきました論点あるいは意見について、土木学会の会員に紹介させていただき、そういうことについて会員の方々はどんなふうに考えておられるのかということを、世論調査といいますか、アンケート調査といいますか、そういう意識調査を行って、可能であれば、それを集約したものを次回の委員会ではご紹介させていただきたいと考えております。

○岡村委員長 それでは、今のような方向について、一言何かご意見がいただければ、それで終わりにさせていただきたいと思います。特に学会員でない方、もしよろしければ、清原さん、黒田さん、竹内さんは学会員かもしれませんが、まだ新しいから、一言お願いしたいと思います。

○清原委員 これはどういうふうに収れんするのか、まだちょっとイメージが……。

論点として、投資効率とかの関連で、最近はやりのPFI、あれもきのう法律が成立しましたから、あんなのも当然入ってくるのではないか。

それと、広い意味での公共事業で問題になっている第三セクターのあり方、これは一種の制度論の方になるかもわからないんですけれども、社会基盤の整備をどういう形でやるかというときに、ホットなテーマとしては、北海道の苫小牧東部と青森県のむつ小川原開発が、結局、延命措置を講じることにはなるんですが、見通しが全然立たないまま、つまり、具体的な事業計画がはっきりしないまま、第三セクター方式でやっていく。これでいいのかなと実は思っているものですから、そんなのもひょっとしたら入るのかなという気がしているのです。

○合田委員 さっき竹内さんのおっしゃられたことでちょっと思い出したのですが、明治の後半ぐらいは各地方公共団体は非常に活力があったといいます。逆にいうと、国の金が来なかったんですね。

私の専門の港湾の世界でいうと、港湾は横浜と神戸は貿易振興の目的で、当初は関税局がつくったぐらいで、大阪なんかは難波(なにわ)の商港といわれながら、明治になってからずっと冷や飯を食わされていたわけです。それで、大阪市では、何とかしないと神戸にとられるというので、明治の後半、年代ははっきり覚えていませんけれども、明治30年代じゃないかと思いますが、自分で外債を発行したんです。その資金を手にして、もちろん国からも補助金が出ましたけれども、そのぐらいの努力をして港をつくった。ただ、つくった当座はやはり利用されなくて、ペンペン草が生えて、市議会から大分やり込められたというような記録があります。それは大阪市の築港の歴史の本の中に出ていますし、広井勇先生の『日本築港史』の中にも書かれています。広井勇先生は、どちらかというと若干そういうむだな投資をしたというような目で書いていますけれども、大阪市が明治の末年に踏み切ったということで、神戸に負けずに今の大阪の港があるといえます。

確かに制度論というか行政組織は、結局、大東亜戦争のときに国全体が総動員体制に入って税制主義がはびこり、あれ以来、国もそうですし、産業界もそうなんです。全国一本で動くというのがすっかりしみついちゃっているので、そこはなかなか難しい話ですね。

○岡村委員長 私は外国人に話すときに、日本は理想的な社会主義の国だというのです。理想的な社会主義の世の中ができていると思うんですが、そろそろ社会主義のよさによってできたところは完成に近づいたのではないかと考えています。したがって、もう1つ次に行かなければいけないのではないかという感覚を持っています。

きょうは大変お忙しいところを、また、土曜日の午後という非常に変な時間に設定しまして、お集まりいただいて、申しわけございませんでした。それにもかかわらず、大変熱心にご議論をいただきまして、きょうのをもとにして、次回はこれをもう少し収束する方向の議論に持っていきたいと思っております。それまでに、今堀井さんがいわれましたように、かなりな往復をさせていただいて、皆さん方のご意見を何らかの形で反映したものにさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

きょうはどうもありがとうございました。

午後3時4分 閉会