関東の土木遺産 関東の土木遺産
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新潟県妙高市西野谷
ばんないがわさぼうえんていぐん・ひかげざわとこがためこうぐん
万内川砂防堰堤群・日影沢床固工群
H29年度認定(2017)
1.候補の名称:
ばんないがわさぼうえんていぐん・ひかげざわとこがためこうぐん
万内川砂防堰堤群・日影沢床固工群
2.完成年:
  • 万内川砂防堰堤群
    1. (1)万内川 一号堰堤:1921(大正10)年、1933(昭和8)年頃改造
    2. (2)万内川 三号堰堤:1922(大正11)年
    3. (3)万内川 四号堰堤:1922(大正11)年
    4. (4)万内川 六号堰堤:1923(大正12)年、1934(昭和9)年頃改造
    5. (5)万内川 七号堰堤:1926(大正15)年
    6. (6)万内川 八号堰堤:1926(大正15)年、1933(昭和8)年頃改造
    7. (7)万内川 十号堰堤:1926(大正15)年、1933(昭和8)年頃改造
    8. (8)万内川 十一号堰堤:1926(大正15)年、1933(昭和8)年頃改造
    9. (9)万内川 十二号堰堤:1925(大正14)年、1933(昭和8)年頃改造
    10. (10)万内川 十三号堰堤:1934(昭和9)年
    11. (11)万内川 十四号堰堤:1934(昭和9)年
  • 日影沢床固工
    1. (12)日影沢 一号床固工:大正後期
    2. (13)日影沢 中流域床固工:大正後期、昭和12年頃増築
    3. (14)日影沢 上流域床固工:大正後期、昭和12年頃増築
    4. (15)クズレ沢 斜路工:大正後期
3.諸元・形式等:
  • 万内川砂防堰堤群の構造形式
    1. (1)重力式粗石コンクリート造堰堤(堤長43m、堤高5.0m)
    2. (2)重力式石造堰堤(堤長35m、堤高2.0m)
    3. (3)重力式石造堰堤(堤長26m、堤高4.0m)
    4. (4)重力式石造堰堤(堤長37m、堤高2.0m)
    5. (5)重力式石造堰堤(堤長47m、堤高3.0m)
    6. (6)重力式石造堰堤(堤長50m、堤高3.2m)
    7. (7)重力式石造堰堤(堤長42m、堤高3.5m)
    8. (8)重力式石造堰堤(堤長33m、堤高4.0m)
    9. (9)重力式石造堰堤(堤長38m、堤高4.2m)
    10. (10)重力式コンクリート造堰堤(堤長35m、堤高5.9m)
    11. (11)重力式コンクリート造堰堤(堤長34m、堤高4.9m)
  • 日影沢床固工群の構造形式
    1. (12)石造床固工(堤長30m、堤高5.0m)
    2. (13)石造床固工32基よりなる延長302mの床固工群
    3. (14)石造床固工6基よりなる延長31mの床固工群
    4. (15)石張斜路工延長12m及び石造床固工1基よりなる斜路工
4.推薦理由:
  1. 1.新潟県における砂防発祥の地
     明治35年(1902年)5月に発生した粟立山の大崩壊による土砂災害から妙高市西野谷地区とその下流域を守るため、大正10年(1921年)に県下初の砂防事業が着手されたことから、万内川は『新潟県砂防発祥の地』とされている。
  2. 2.自然と調和した構造
     構造は、現地産の石を使った石積堰堤で、当時は建設機械もないためすべて人力で作られたが、その組み方(表面を覆う割石と、中心部の玉石、その隙間を埋める砂利)は極めて精巧であり、周囲の自然環境と調和した美しさに、先人の知恵と苦労、技術の高さがうかがえる。
  3. 3.砂防施設としての効果
     初期の築造から90年以上を経過した今でも、砂防施設としての防災機能を有している。
  4. 4.その他の特徴
    1. 1)万内川砂防堰堤群の特徴
       一号堰堤は砂防における技術革新と言われるコンクリートを用いた粗石コンクリート造り(重力式コンクリート造堰堤)となっている。
       三号から十二号は、現地産の石を使い自然と調和した空積みの重力式石造堰堤(昭和初期に練石積による補強あり)である。
       十三、十四号は練石積の重力式コンクリート造である。
       大正10年からこれまでに築造された全30基のうち11基が平成15年3月18日に登録有形文化財に登録された。
    2. 2)日影沢床固工群の特徴
       わずか1.2qの急峻な渓流に47基もの石造床固工群(小さなダム群)が設置されている。また、支流のクズレ沢には、非常に珍しい斜路工(石張斜路工延長12m及び石造床固工1基)が残っている。
       このうち、日影沢一号床固工、日影沢中流域床固工、日影沢上流域床固工、クズレ沢斜路工は平成15年7月1日に登録有形文化財に登録された。
  5. 5.推薦箇所
     今回、選奨土木遺産に推薦するのは、この万内川・日影沢流域に現存し、建設当時の外観・構造を有したまま現在もその機能を果たしている堰堤の内、第二次大戦終結以前に竣工した全15施設である。(これら15施設全てが登録有形文化財に登録済)。
5.設計者・施工者:
不明
6.建設当初との改変状況(補修履歴等):
完成年の欄に記載のとおり
7.「日本の近代土木遺産2800選」ランク:
  • 万内川砂防堰堤群:Cランク
  • 日影沢床固工群:Cランク
8.所在地:
妙高市西野谷
9.管理者:
新潟県
10.管理者連絡先:
所属名:新潟県上越地域振興局妙高砂防事務所工務課
住所:〒944-0016 妙高市美守1丁目4番5号
電話番号:0255-72-4141
11.選定された場合に実施を予定しているアピール方法:
 表彰式は、毎年行っている土木学会関東支部新潟会主催の「土木の日講演会」の冒頭に行う。また、新聞各社などマスコミへの周知も行う。
 万内川砂防堰堤群の最下流部に整備された万内川砂防公園で毎年夏に開催される「万内川サマーフェスティバル」で、参加者に対し選奨土木遺産認定をアピールする。
12.選奨土木遺産公募に関する連絡ご担当者:
担当者名:新潟県土木部監理課 企画調整室 室長 加納 行弘
住所:〒950-8570 新潟市中央区新光町4-1
電話番号:025-280-5838
FAX番号:025-285-3572
Eメール:kanou.yukihiro@pref.niigata.lg.jp
登録有形文化財 万内川、日影沢石積堰堤・床固工群 探検マップの画像
万内川一号堰堤の写真
万内川三号堰堤の写真

(1)万内川一号堰堤
建設時期:大正10年頃 改造時期:昭和8年頃
下流法勾配3分とし、同時期に建設された万内川他砂防施設と比べ緩勾配かつ厚めの天端幅をとり、全体として堅固な造りとする。副堰堤、護岸が良好に残存。粗石コンクリート造の堰堤として我が国初期の事例。

(2)万内川三号堰堤
建設時期:大正11年頃
当初空積みの堰体を昭和初期に練積みで補強しており、右岸側堤長を長くとるのが特徴。

万内川四号堰堤の写真
万内川六号堰堤の写真

(3)万内川四号堰堤
建設時期:大正11年頃
上流側法勾配1分、下流側法勾配2分とした小勾配の重力式堰堤で、前面に副堰堤を設け、その間を石張水叩きと右岸側を曲線状とする石積護岸でつなげる。

(4)万内川六号堰堤
建設時期:大正12年頃 改造時期:昭和9年頃
堤高と同じ高さだけ水通し部を切り込んだ低い造り、両肩を法1割、長さ15mとした水通し形状によって上流側への見通しが確保され、地形に収まる石積の低堰堤が山並みを背景に連続する景観が展開する。

万内川七号堰堤及び八号堰堤の写真
万内川十号堰堤の写真

(5)万内川七号堰堤及び(6)八号堰堤
建設時期:大正15年頃 改造時期:(6)昭和8年頃
2基の堰堤を隣接させ同時期に建設した。8号堰堤下流側に水叩きと石積護岸を連続させ、7号堰堤下流側には副堰堤を配する。7号堰堤上流右岸側から灌漑用水を取り込み、取水堰堤としての機能を有する。

(7)万内川十号堰堤
建設時期:大正15年頃 改造時期:昭和8年頃
堤高3.5mの低堰堤。地すべり区間内で低堰堤を連続して設けるという模範的計画を端的に示し、建設以前頻発していた山の崩壊や土砂の流下を絶つ。

万内川十一号堰堤の写真
万内川十二号堰堤の写真

(8)万内川十一号堰堤
建設時期:大正15年頃 改造時期:昭和8年頃
下流側法勾配2分、上流側法勾配5厘で、水叩き部を石張で強固に築き、水通し幅を広くとるなど、洗掘防止の工夫が見られる。

(9)万内川十二号堰堤
建設時期:大正14年頃 改造時期:昭和8年頃
下流側法勾配2分で、水通し外側の堤頂高を、堤体中央に向けて4%程度傾斜させる。堤体全体を精緻な谷積で築き、堤体右岸側に石造銘板を付ける。

万内川十三号堰堤の写真
万内川十四号堰堤の写真

(10)万内川十三号堰堤
建設時期:昭和9年頃
下流側法勾配2分、上流側法勾配3分の重力式練積堰堤。堤体下流側の両岸に谷積の護岸を良好な状態で残す。

(11)万内川十四号堰堤
建設時期:昭和9年頃
堤体裏表の法勾配をともに2分とする台形断面及び、ほぼ左右対称の立面形状をとる。堤体前面には欠円アーチ型の水抜きを計4箇所設ける。

日影沢一号床固工の写真
日影沢上流域床固工の写真

(12)日影沢一号床固工
建設時期:大正後期
日影沢が一級河川関川水系万内川に合流する地点に築かれた砂防設備。両側法勾配3分、水通し幅3.4mで、地形に合わせて左岸側の袖を長くとるのが特徴的。日影沢床固工群の中で、最下流に位置する最大規模の構造物で、基幹的役割を果たしている。

(14)日影沢上流域床固工
建設時期:大正後期/昭和12年頃増築
万内川右支川日影沢の上流域に位置する砂防設備。堤長6mから21m、堤高1.5から3mの石造谷積の構造物を、約40%勾配の斜面に5基配し、支川が右岸側から合流する。切石により精緻に築かれた構造物で、急勾配斜面の地盤安定に効果を発揮している。

日影沢中流域床固工の写真
クズレ沢斜路工の写真

(13)日影沢中流域床固工
建設:大正後期/昭和12年頃増築
日影沢中流域に位置する砂防設備。堤長7mから24m、堤高1.5mから4.5mの小規模構造物を、約30%勾配の急斜面に32基配置する。石造構造物が、地形におさまりつつ、湾曲しながら連続し、自然と一体化した景観を創り出している。

(15)クズレ沢斜路工
建設:大正後期
日影沢の中流域に右岸側から合流する砂防設備。山の斜面を石張した勾配25%、側面1割法とした直線状水路と、両側法勾配3分の床固工を一体的に築き、川道安定を図る。周囲の回復された緑と一体となり、渓谷の自然環境と良く馴染んでいる。

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