平成,14,年度の土木学会全国大会が,9,月,25,日から,27,日までの,3,日間,北海道大学を会場として開催されることになりました.
大会が開催される,9,月末は札幌も紅葉が始まり空気も澄んで最も美しい季節となります.北海道支部は会員数2,200,余名で,日頃から講習会や研修会で研鑽に励むとともに道民に広く土木の啓蒙活動にも努めていますが,現在は全国大会に向けて準備に精力を傾けております.全国から多くの会員にお集まりいただき,学術・技術の研鑽とともに,交流会等で会員相互の交流や親睦を深めていただきたいと考えております.

北海道では一昨年有珠山が噴火し,虻田町を中心に大きな被害をもたらしました.1,万人近くの住民が避難を余儀なくされましたが,研究者,行政および関係機関の連携による事前からの備えにより,すべての住民の避難が噴火の前に完了し,1,人の被害者もありませんでした.現在は火山灰等も除去されきれいな街並みや湖が戻り,橋やトンネルの修復も終了し,噴火口が出現した国道に代わる新ルートの工事も始まり,着実に復興が進められています.噴火跡も自然を知る貴重な教材として広く知られ,観光客も増加し活気が戻ってきています.

北海道の開拓は明治以来,今日まで石狩川や天塩川等の大河川のショートカットを代表とする治水事業,住民生活の向上と産業活動の発展に向けて計画的に進められた道路建設,物流を支える小樽港,函館港等の港湾建設等が進められてきました.これらの先達による土木事業により,130,年間で人口,568,万人,全国の,1/4,の農地等,国随一の食料生産基地として発展してきました.しかし一方では広大な面積のため平均都市間距離は全国の,2,倍あり,さらに冬季は積雪,吹雪による交通障害も多く,安全で確実な交通システムの構築が特に必要とされています.未来の国土づくりのため,北海道縦貫自動車道をはじめとする高規格幹線道路や拠点となる苫小牧港,釧路港等の整備が急がれております.

今年度の大会テーマは「21,世紀のクオリティ・オブ・ライフをめざして」です.20,世紀は私たちの生活に圧倒的な豊かさをもたらしましたが,一方では地球規模の環境問題が現実となってきました.地球温暖化,オゾン層の破壊,酸性雨,熱帯雨林の減少,砂漠化,野生生物・種の多様性の減少,有害廃棄物の越境移動,開発途上国の公害問題等が発生し,現在ではこれらの解決を目指した「持続可能な発展」が求められています.市民の間には,生活のゆとり,うるおい,自然とのふれあいへの希求が強まっており,モノの豊かさから心の豊かさへの転換が始まろうとしています.21,世紀にふさわしい生き方とは何か,それに対して土木工学はどのように貢献できるのか,ともに考えていきたいと思っております.

さらに自然環境と共生していくための基盤整備のあり方についても討論を予定しております.釧路湿原やサロベツ湿原の保全,海域水生生物との協調を図る港づくり,小動物にも配慮したエコロードづくりなど具体的な事例を紹介しながら,わが国の自然環境との共生のあり方に向けて北海道から発信を行います.

今,わが国は厳しい経済状況にあり,企業倒産や失業者の増加,公共事業費の削減による整備の遅れ等の課題を抱えておりますが,この状況から脱却しそれぞれの地域が自立していくために,これまで社会発展の基盤を築いてきた土木界の役割はますます重要になってきています.この中心となる土木学会としましても約,4,万人の会員がその役割を認識し,研鑽を重ね,この課題に応えていくことが必要になってきていると考えております.

本大会におきまして,会員の皆様の土木工学に関する真剣な論議や活発な技術交流が行われ,わが国の新しい方向を目指した一歩となることを願い,多くの会員のご参加をお願い申し上げ,挨拶といたします.